美容院で御用聞きから買い物

　約二ヶ月ぶりで美容院へ。
　ここへ越してきてから見つけた
「高齢者も気兼ねなく行ける美容院」。
　車椅子でも大丈夫です、と書いてある。
　私はまだ車椅子じゃないけど
一度行ってすっかり気に入ったところ。
　
　今日も来てるのはおばあさんばかり。
　なんか安心するし、和む。

　私と同じ年齢の「先生」は気さくな男性だし。

　「え？　独り？　そうか……。
だけどねえ、女性は何歳になっても女なんだよ。
　こないだフランスの高齢女性が、おしゃれして
恋もして、というテレビ番組やってたけど、見なかった？
　男にとっては、何歳になろうと女性は女性なんだよ。
　……ああ、そうだよね、日本の男はすぐ、ばばあとか
言っちゃって、若くなきゃ駄目みたいなことを言うよねえ。
　あれねえ、本音じゃないよ。照れなの。
　僕なんかねえ、女房が服を買いに行くときには
必ず一緒に行くもの。そして一緒に選ぶの。
　きれいでいてもらいたいし、気分良く暮らしたいからね」

　とはいえ、この先生は客の高齢女性をわざとらしく褒めたりはしない。
　わたしみたいにものぐさなものには、凝った髪型も勧めない。
　なにより仕事が手早い。だから疲れない。

　途中でお豆腐屋さんの御用聞きが来た。
　この近くで豆腐や油揚げ、がんもなどの製造を
しているところがあるようだ。
　製造所だから、いつも小売りで買えるとは限らない。
　でもご近所さんには、昔から御用聞きしてくれるとか。

　美容院の先生も従業員も客もこぞって買う。
「おいしいからねえ！」
　私も思わず、寄せ豆腐とヒジキの煮物を買った。

　

　帰宅して食べてみた。
　うん、おいしいよ、たしかに！

　前の住まいも下町だったが、ここも同じ。
　いいところに越したかも。

　近くの小道にドクダミの花が咲き始めた。