だれが異教徒やねん！

　医師というのは「患者」という弱者ばかり
相手にしているから、自分でも気づかないうちに
傲慢になっているのではないだろうか。
　まあそれも個性だと思えばいいのだろうが……。

　夏からこっち、腕の痛み、発疹、だるさに悩み
病院嫌いの私が、いつになくあちこちの病院を回った。
　それはまあ、このブログでも愚痴ってきた。

　ちっともよくならないから、帯状疱疹、心臓、
肺がんまでうたがい、血液検査、レントゲン、
はてはCTスキャンまでやった。
　血圧が高いことも判明し、降圧剤を服むことになった。

　で、血圧はともかくとして、夜も痛くて
眠りが浅くなる左腕。
　最初の外科では、肩の神経が傷ついているようだから
ゴム紐を引っ張るリハビリをしなさい、と言われた。
　薬も湿布も出なかった。

　だけどゴム紐引っ張るだけで治るものだろうか、
よけいに悪くならないだろうか、と不安になり、
友人が紹介してくれた整体院へ行った。
　もちろん症状は伝えた。
　骨格の歪みなどから来ているのだろうということで
揉んだり引っ張ったり、それでもよくならないので
鍼治療と同様の効果があるという電気療法も受けた。

　治らない。ストレスは増すばかり。
　ともかく原因を突き止めねばと、あれこれの
検査をしたのだ。
　CT写真を持って、もう一度整形外科へ行きなさい、
とホームドクターに言われた。
　そして、前に私が行ったのとは別の整形外科に
紹介状を書いてくれた。
　「口は悪いかもしれないけど、はっきり診立てて
くれるし、治るまでつきあってくれるという評判だから」
　ということで。

　その足であらたな整形外科へ行った。
　医師はCTスキャンの写真を放り捨てるかのように見て、
あとは、前の整形外科医や整体師同様、
腕のどこをどうすれば痛むかを検証。

　あっさりと、
「五十肩だね。間違いない！」

　え、よくきく名前じゃない。
　そんなもんだったの？
　これまでの病院行脚はなに？

　と、気持ちを整理しかねていると、
医師が声高に滔々と喋り始めた。

「整体に行ったって？　マッサージも？　なんでそんなことを！
異教徒だよ、異教徒のすることだよ。
　私とは全然、宗派が違う！　それが間違ってるということを
どうやったら、あんたみたいな異教徒に教えたらいいのか
ああ、もう、お手上げだね！」

　天を仰いだり、頭を抱えたり、パフォーマンスが凄い。

「手で言えば腱鞘炎だよ！　揉んだり叩いたりしちゃ
いけないんだよ。安静にしてないと！
　ラジオ体操？　駄目、それも駄目！
　痛いから冷感湿布した？　ああ、もう異教徒のすることは！！」

　さんざんののしられた。
　しかし、怒りたいのはこっちでしょうが。
　前の整形外科医や整体師が間違った治療を
したとしたら、私は被害者だ。
　この医師が「異教徒」と腹をたてるべきは、
そうした同業者であるはずだ。

　相手はプロだと思うから、こっちは身を任せる。
　なんとかこの苦しみをとってもらいたくて。

　自分で判断して自分で正しい治療ができるなら
病院も医者もいらないでしょうが！

　……と心のなかでは怒鳴り返したのだが
こっちは弱い立場。今度こそ直してもらえるかもと
希望をかけ、言い返すことも睨み返すこともできなかった。

　ちきしょ～！　この腕が治ったら覚えてなさい。
　ののしり返して……じゃなくて感謝してやる。
　おまけにコーランと賛美歌歌って般若心経唱えて
　叫んでやる。
　わたしがどこの異教徒だって？　
　違うだろう～！！！　

　ああ、疲れた。
　
　写真は、帰路で撮った近所の商店街の靴屋さん。
　なぜかいつも店の前に、埃だらけの
使い古しみたいな靴がならべてある。
　売り物？