「げんじつ」と打ち込んだらこの字が出た。
そうね、この方が「現実」よりいいよね、
ちょっとボケが入ってて……と、このままに。
若い頃から虚弱であったことに、私は甘えすぎていた。
14歳からのひどい肩こり、疲れやすい、歩けない、
だから無理をしない。疲れたらすぐ休む。
おかげで、虚弱であるにも関わらず、この歳まで
大きな病気もせずに生きてきた。
私なりの、これが健康の秘訣なのだと、内心、自負していた。
もう何年も人間ドックへ行ってない。
行かなくても大丈夫、無理してないし、ご飯だって
ちゃんと自分で作って食べてるし、夜遊びしないし
……と、自分で自分に思い込ませてきた。
ところがこの夏から秋にかけての不調で、
ついに、知りたくないことがわかってしまった。
なにせ、数件の病院、整体、マッサージと
この短い間に行脚したから。
現実的にもっとも辛いのは、左腕の痛み。
動かせないわけではないし、叫ぶほどではないのだが、
じわじわと四六時中、痛い。凄いストレス!
もっとも怖いのは血圧。
某医院で、「高いですよ」と言われ、血圧計を買って
二週間以上測った。
高い! ことにここ二、三日はおそろしく高い。
朝一番で、ポーラのクリニックに駆け込んだ。
ドクターYにまず文句を言う。
「このごろ先生がちっとも真面目に診てくださらないから
他所へ行って検査してもらいました。そしたらこのざまで……」
「う~ん、たしかに高いねえ。洋子さんもとうとう
高血圧の年齢になったか」
って、そんな、他人事だと思ってのんきなことを。
「メタボとまで言われたんですよ、私は」
「いや、メタボだとは思わないけどねえ」
と言いながら、今日はこれまでになく
真面目に聴診器をあて、レントゲンも撮ってくれた。
説明もわりと丁寧。
「動脈硬化のきざしが出てるねえ。
まあこれは歳だからしょうがないか。
運動するといいんだけど、足がねえ……。
スイミングスクールへ行かない?」
「行きません!」
そんな疲れそうなこと、とんでもない。
いまさら水着なんか着たくないし。
ゆる~く効くという降圧剤を出してくれた。
帰りは、バスの停留所三つ分、歩いた。
うちのすぐ近くまで来て、いつも満員の
小さなイタリアンが空いているのを見た。
ちょうど昼時だ。今日は朝食もとっていない。
吸い寄せられるように入り、ランチセットの
カルボナーラとグラスのスパークリングワインをオーダー。
初めての降圧剤をスパークリングワインで服むという
いけないことをやってしまった。
おまけにカルボナーラは、こってりチーズソースの中に
パスタが埋もれているというものだった。
食べてしまったけど。
夕方は整体を予約してある。
「鍼にしたら? その腕には鍼のほうが効くよ」
と言うドクターYに、「鍼は嫌いなんです」
と、きっぱり言った。
まあ、自業自得だわねぇ。
医者のアドバイスもきかないんだから。
「虚弱だから丈夫」という持論も
幻にすぎなかったし……。
もうひとつだけ、やっておきたい仕事があるんだけど、
大丈夫かねえ、こんなことで。
我にまだ炎(ほむら)一筋曼珠沙華 冬桃

そうね、この方が「現実」よりいいよね、
ちょっとボケが入ってて……と、このままに。
若い頃から虚弱であったことに、私は甘えすぎていた。
14歳からのひどい肩こり、疲れやすい、歩けない、
だから無理をしない。疲れたらすぐ休む。
おかげで、虚弱であるにも関わらず、この歳まで
大きな病気もせずに生きてきた。
私なりの、これが健康の秘訣なのだと、内心、自負していた。
もう何年も人間ドックへ行ってない。
行かなくても大丈夫、無理してないし、ご飯だって
ちゃんと自分で作って食べてるし、夜遊びしないし
……と、自分で自分に思い込ませてきた。
ところがこの夏から秋にかけての不調で、
ついに、知りたくないことがわかってしまった。
なにせ、数件の病院、整体、マッサージと
この短い間に行脚したから。
現実的にもっとも辛いのは、左腕の痛み。
動かせないわけではないし、叫ぶほどではないのだが、
じわじわと四六時中、痛い。凄いストレス!
もっとも怖いのは血圧。
某医院で、「高いですよ」と言われ、血圧計を買って
二週間以上測った。
高い! ことにここ二、三日はおそろしく高い。
朝一番で、ポーラのクリニックに駆け込んだ。
ドクターYにまず文句を言う。
「このごろ先生がちっとも真面目に診てくださらないから
他所へ行って検査してもらいました。そしたらこのざまで……」
「う~ん、たしかに高いねえ。洋子さんもとうとう
高血圧の年齢になったか」
って、そんな、他人事だと思ってのんきなことを。
「メタボとまで言われたんですよ、私は」
「いや、メタボだとは思わないけどねえ」
と言いながら、今日はこれまでになく
真面目に聴診器をあて、レントゲンも撮ってくれた。
説明もわりと丁寧。
「動脈硬化のきざしが出てるねえ。
まあこれは歳だからしょうがないか。
運動するといいんだけど、足がねえ……。
スイミングスクールへ行かない?」
「行きません!」
そんな疲れそうなこと、とんでもない。
いまさら水着なんか着たくないし。
ゆる~く効くという降圧剤を出してくれた。
帰りは、バスの停留所三つ分、歩いた。
うちのすぐ近くまで来て、いつも満員の
小さなイタリアンが空いているのを見た。
ちょうど昼時だ。今日は朝食もとっていない。
吸い寄せられるように入り、ランチセットの
カルボナーラとグラスのスパークリングワインをオーダー。
初めての降圧剤をスパークリングワインで服むという
いけないことをやってしまった。
おまけにカルボナーラは、こってりチーズソースの中に
パスタが埋もれているというものだった。
食べてしまったけど。
夕方は整体を予約してある。
「鍼にしたら? その腕には鍼のほうが効くよ」
と言うドクターYに、「鍼は嫌いなんです」
と、きっぱり言った。
まあ、自業自得だわねぇ。
医者のアドバイスもきかないんだから。
「虚弱だから丈夫」という持論も
幻にすぎなかったし……。
もうひとつだけ、やっておきたい仕事があるんだけど、
大丈夫かねえ、こんなことで。
我にまだ炎(ほむら)一筋曼珠沙華 冬桃
