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超一流企業ゼロックスが何故ダメになってしまったか?

2019年05月15日 | 研究開発と経営戦略

数年前、富士ゼロックス社(富士フィルムとゼロックス社双方50%持ち分の日本子会社)が100%富士フィルムの子会社になったことは、皆さんも良くご存じと思いますが、その後富士は、ゼロックス本社諸共吸収合併する事に挑戦しましたが失敗に終わりました。(複写機の世界戦略の考え方が合わなかった為)

しかしゼロックス本社は、既に世界の超一流企業ではなくなっています。

この原因は、35年~40年前に発しています。事業の寿命は30年と私は考えています。

日本の駄目になった企業も、ほぼ30年で問題を起こしています。私のブログを全部お読みになっている方は、想像がついていると思います。例えば、液晶事業、太陽光発電パネル事業のシャープ、テレビ・パソコン事業の日本家電メーカー(東芝、日立、ソニー、パナソニック、三菱、シャープ、三洋、NEC、富士通)、原子力発電事業の東芝、日立、三菱重工、等、例を挙げれば限が有りません。特にエレクトロニクス産業は完敗です。

 

ここで、日本のテレビ事業が駄目になった経緯を簡単にまとめておきます。

白黒テレビ時代:1950年~1975年

カラーテレビ時代:1964年~2010年

(パソコン時代:1980年~現在)

ディジタル・ハイビジョン時代:2005年~現在

 

1980年代に日本は、カラーテレビとVTR(日本仕様:VHS&βマックス)で世界を制覇していました。(ほぼ100%日本製)一方、次世代カラーテレビ方式を研究していたNHKは、1980年代アナログ・ハイビジョンテレビ方式を開発し、学会や工業会で国内家電メーカーに同意を求めていました。すなわち1980年代は、カラーテレビの円熟期、パソコンの誕生・成長期が並行していた時期でもあります。

こんな時代に次期カラーテレビ方式の国際会議が始まったのですが、欧米諸国は日本(NHK)のアナログ方式に反対しました。当然の理由です。

① アナログ方式では、日本に大幅に遅れをとっており事業的に勝ち目がない。

② これからの映像・音声・通信技術は、パソコンと融合すべきである。

③ ディジタル技術では、コピーしても映像・音声の品質が落ちない。

④ ディジタル技術では、映像・音声等の加工・編集がパソコンで容易にできる。

⑤ディジタル技術では、画像・映像・音声の圧縮が品質を落とさず容易にできる。等・・・

多勢に無勢と言うより技術の将来性を考えれば、ディジタル・ハイビジョン方式に決まるのが当然の成り行きでだったと私は考える。

蛇足ですが、私のディジタル・オート・チュニングシステムの特許(今も総てのテレビで使用されています)は、40年前(1978年)出願したものです。アナログカラーテレビ全盛の時代にシャープよりミスターXの名称で発売しております。カラーテレビのディジタル化は既に始まっていたのです。

30年先を読んだ研究開発、事業経営をしないと失敗する良い事例ではないでしょうか?

 

(ゼロックスの失敗)

さて、ゼロックスの本題に戻りますが、ゼロックスも30~40年前、同じ失敗をしていたのです。

ゼロックス、キヤノン、富士フィルム3社共、同じ様な事業体ですが、キヤノン、富士フィルムは同じ轍を踏みませんでした。(後に理由を書きます)

(約40年前の話)

ゼロックスのパロアルト研究所(米国:シリコンバレーに有る研究所)の話です。

① 複写機の不良サービスを円滑に行う為の研究報告

複写機本体から自動で不良状況を電話回線を使いサービスセンターに伝送し、ハイスピードで修理対応する仕組みの開発報告を行う。

 

② コンピューターの開発報告

今後IBMの大型コンピューター時代から小型コンピューター(パーソナルコンピューター)時代が来ると考え、PC先端技術の開発結果報告を行う。(現在最も使われているGUI技術、イーサネット技術等を開発し、コンピューター技術者でなくてもコンピューターが使える技術開発を行った事の報告。特許出願)

 

(経営判断):①②共却下。(事業化されなかった)

(理 由):経営トップが、光学(物理)技術者と精密機械技術者だけだった為、エレクトロニクス技術の将来を判断出来なかった為。

 

(その後の結果)

① 電子技術を多用したカラー複写機で世界トップの座をキヤノンに奪われる。

② コンピューター開発を行ってきた技術者は、スピンアウトしアップル社を立ち上げ、現在世界トップの企業になっている。一方、キヤノン販売は、アップル製品の日本販売を一手に引き受けている。

 

(キヤノンや富士フィルムが同じ轍を踏まなかった理由)

 

◆富士フィルムの社長は、カメラの電子化時代到来を危惧し、いち早く電子映像開発部門を創設している。(統括部長:元東芝中央研究所長、部長:元東芝ビデオ事業部長)

1980年当時、私はシャープで(VHS)ポータブルビデオの開発を行っていた。

富士フィルムの社長は、8mmカメラがビデオカメラに取って変わると危惧されたのだと思います。経営会議でフィルム事業が無くなった場合の対応策を随分されたと聞いています。(尤も私は10年先ですよと言っていましたが!)現実には、業務用ディジタルカメラが1994年に発売されています。

 

◆   キヤノンは当時ワープロ開発を行っており早晩パーソナルコンピューターの到来を感じていた。又、ゼロックスの失敗を他山の石としなかったことである。1990年当時、(キヤノン中央研究所勤務時)御手洗専務(後社長)よりゼロックス副社長の“ゼロックスの失敗”と 題する論文を読んで部長会で紹介して欲しいと言われ、上記の10倍詳しい報告をした。 等

 ・・・以上・・・

当時の関係者、部長職以外のコメントは受け付けない!

 

ディジタル・オート・チュニングシステムの特許https://patentimages.storage.googleapis.com/7b/1c/e5/7253f23226bba8/US4236182.pdf

 

(追記)ハイビジョンTVについて    2019年5月15日 

上記ではNHKのアナログハイビジョンTVを悪く表現していますが、技術の歴史(変遷)と30年先を読むと言うテーマで書いているからです。あしからず。

1990年当時(30年前)、NHKがハイビジョンの実用化検討していた頃の事を追記しておきます。

通常TV局はTV放送する場合、各局から東京タワーへNTTの専用回線を使って映像信号や音声信号を送っています。(全局同じ)

映像信号は、広帯域信号ですから伝送路の状況が悪いと画質や色相(色合い)が変わってしまいます。(特に肌色が変わると気持ち悪い顔になります)伝送路の特性は、ケーブルの長さ、太さ、曲げ等の影響を受けます。

そんな訳で、NHKは伝送路の影響や衛星放送を考えた各種実験を行っていました。

キヤノンはその中で、ハイビジョンTVのディジタル伝送機器(コーデック)の開発を担当していました。

(NTT厚木研究所、NHK放送技術研究所⇒伝送実験)

(キヤノン中央研究所⇒ディジタル伝送機器開発)

従ってNHKは,ディジタル通信技術を無視していたと言うことでは有りません。

当時キヤノンがコーデックに採用した画像圧縮技術MP4は、インターネット全盛の今、画像圧縮の標準技術として使用されています。

(キヤノンとの機密保持契約が有りますが、30年も前の事ですから問題無しと考え書いています)

 



(8KTVに関するご質問の回答)

(1)8Kについて:8Kは、医療関係、教育関係、建築・芸術の世界で多用されるようになると考えます。但し、業務用(PC)の世界です。

(2)令和時代のTV放送やブルーレイディスクは、ハイビジョンと4K併用になると考えます。

(3)30年後の映像の世界は、現在の技術の延長線上のもの(4K,8K)では有りません。

 

 



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