色彩を持たない
多崎つくると、
彼の巡礼の年
いつからだろう、僕は物を買う事に臆病になった。
50才を過ぎたからか、身内が大きな病気をしたからか(回復した)、3.11で自然の脅威を思い知ったからか、いずれにしても物欲を押さえる意識が働くようになった。若い頃は物欲にまみれていたのに不思議なものである。
欲しい物が出来た時に「購入したとして、あと何年使えるのだろうか?」と考えてしまうのである。幸運にも75才まで生きるとして残り20年、特に変な物を買いたくなる訳ではないが「こんな物を残されても困るよな」と考えてしまうと買えなくなる(笑)。年をとるとは、人生の残りが少なくなるとは、こういう事かな?
若い時の情熱と欲望、ある時期の狂気などを上手くなだめる事に成功した者は、傷の大小に差はあるが、心に傷を持ちつつ生き続けなければならない、というお話。