漏電でもなければケーキでもありません
絵本のストーリーが1本、ようやっと書けたので晒してみます。
絵本は「色」をテーマに赤・青・黄・紫・黒の5編のオムニバスな内容になっており、私が担当するのは赤・黄・紫のストーリー。と、表紙絵…の予定w(表紙絵はまだ話し合っておりませんが^^;(ヲイ))
今回書けたのは「紫」です。
童話‥ではない気がする。
--------------------------------
男は一匹のシカでした。
これがまたムンムンなのか、ものすごくもてたのでした。
シカはハーレムの中で、とても幸せな気分で、毎日を無為に楽しんでいました。
あるとき。浜辺をひとり散歩していたシカは、一匹の娘ジカに出会いました。
沈丁花の香りをまとい、月が渡る夜空のような紫の毛が綺麗な、ほんとうに美しい牝ジカでした。
その艶やかな佇まいに、シカはあっというまに恋におちてしまいました。
早速声をかけます。
「やあ、今晩和」
「今晩和。綺麗な三日月ですわね」
「君ほどの方に誉められる月がうらやましいよ」
「お上手ですね」
「今夜はどちらに」
「特には」
「では僕のところにいらっしゃい。貴女のように美しい娘のひとり身は危ないよ」
「随分、率直なお誘いをなさるんですね。しかし私は戻らねばなりません」
彼女は浜辺の向こうの離れ島に住んでいるシカでした。
それからというもの、彼は夜の君の虜でありました。
海を泳ぐこともいとわず毎日彼女の処へ通い、口説きとおし、添い慕うことこの上もない有様です。
夜の君も最初のうちは惑っていましたが、危険を顧みずやってくる彼の心意気に打たれておりました。
そんな日が繰り返され、三日月もいつの間にやら幾望になった頃のこと。
シカの最近の仕打ちに、ハーレムの牝ジカ達は内心煮えくりかえっておりました。
ほとんどの時を夜の君に費やし、たまに戻ってきても切なげな様子で溜息をつくばかりで、彼女達がどんなに献身しても、むしろ鬱陶しげなのです。
これでは流石に皆やりきれません。
なかでも年長の牝ジカなど、あまりのくやしさに蹄をうち鳴らして地団駄する有様です。
いつもは黒毛の気品に満ちた姿も、今ばかりは土くれに汚れ乱れてしまい、見る者が憐れみさえ抱く程でした。
そんなことなど露知らず、何日かぶりに帰ってきたシカは用意された床に就きました。
そしてその夜、不思議な夢をみたのです。
次の日、頭のいい黒の君に意味を尋ねました。
「これこれこういう夢をみたのだけれど、何か夜の君との意味深なものを感じる。君よ、貴女の深い知識の井戸から答えをさらってくれないか」
黒の君は、それを聞いて激怒しました。
「まぁなんと憎らしい。私たちはいつも貴男を想い焦がれているのに、貴男の心はあの女のことばかり。よくぞぬけぬけと――」
言葉は今にも口から飛び出しそうでしたが後一歩のところで飲み下し、黒の君は精一杯努力して平静を装い、微笑みました。
「貴男様は好き兆しとお考えのようですが、わたくしから診るにこれは凶夢で御座います。ススキは矢、雪は塩という風に、つまり人間に捕まり食卓に供されるという予見でしょう」
「なんと! そのような感はなかったが…」
「もし今後外出なさるならお伴を付き添わせましょう。勝手に出歩いてはなりません…特に、浜辺などは」
「しかしそれでは…」
「黒の君は貴男様を思って言われてるのですよ」
彼女の若い取り巻きは口々にそう言います。皆、黒の君の味方でした。
こうしてシカは牝ジカ達に説き伏せられ、またハーレムの生活に戻ることになりました。
しかし、床の中で見上げる満月に心中そぞろくばかり。
嗚呼、夜の君は、今なにをしているだろう。
会いたい。
恋しい――
――会いたい!
ある晩、シカは供の目を盗んで浜辺に向かいました。
弓張の晩でした。
見上げた月の形にぞくりとするものを覚えつつ、ざぶざぶと波を蹴って水に入り始めたとき。
ひょん
夜風を裂いて
一本の
矢 が
シカの頭を貫きました。
彼はしんでしまいました。
夢のなかで、男はシカでした。
目を覚ました男は鏡を覗きました。
鏡の中で、男は白髪の老人でした。
広くなったダブルベッドに再び横になりました。
男は、シカをうらやましく思いました。
そしてまた目蓋を閉じます。
--------------------------------
あれほど暗い話はやめろとorz
絵があってこそ伝わる構成にしたかったので、シカが見た夢の描写は省いてます。
まだ書きたてですし変更すると思います。本にしたとき違ってる確率大です^^;アーカイブということ?で。
絵も他の方が描くわけだし。。
しかし。
この話のシカの部分、とある諺のくだりをそのままパクっているのですが…解る方いらっしゃるかな…?
(バレてほしくないけどw
意味は「ものの善し悪しは解釈次第」だそうですが、ネットで調べたところ「気にかかることや心配事が、予想していたとおりになること」という意味もあるそうな。。。随分意味が違うぞ?w
元をたどれば日本書紀の時代の言葉だから、シチュエーションが違うと変わってくるのかもしれませんね。
現在ではどのような意味となるのやら。
少なくとも私には昼ドラ展開しか浮かばなかったYO!\(^o^)/
*お話へのツッコミ大歓迎w

絵本のストーリーが1本、ようやっと書けたので晒してみます。
絵本は「色」をテーマに赤・青・黄・紫・黒の5編のオムニバスな内容になっており、私が担当するのは赤・黄・紫のストーリー。と、表紙絵…の予定w(表紙絵はまだ話し合っておりませんが^^;(ヲイ))
今回書けたのは「紫」です。
童話‥ではない気がする。
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男は一匹のシカでした。
これがまたムンムンなのか、ものすごくもてたのでした。
シカはハーレムの中で、とても幸せな気分で、毎日を無為に楽しんでいました。
あるとき。浜辺をひとり散歩していたシカは、一匹の娘ジカに出会いました。
沈丁花の香りをまとい、月が渡る夜空のような紫の毛が綺麗な、ほんとうに美しい牝ジカでした。
その艶やかな佇まいに、シカはあっというまに恋におちてしまいました。
早速声をかけます。
「やあ、今晩和」
「今晩和。綺麗な三日月ですわね」
「君ほどの方に誉められる月がうらやましいよ」
「お上手ですね」
「今夜はどちらに」
「特には」
「では僕のところにいらっしゃい。貴女のように美しい娘のひとり身は危ないよ」
「随分、率直なお誘いをなさるんですね。しかし私は戻らねばなりません」
彼女は浜辺の向こうの離れ島に住んでいるシカでした。
それからというもの、彼は夜の君の虜でありました。
海を泳ぐこともいとわず毎日彼女の処へ通い、口説きとおし、添い慕うことこの上もない有様です。
夜の君も最初のうちは惑っていましたが、危険を顧みずやってくる彼の心意気に打たれておりました。
そんな日が繰り返され、三日月もいつの間にやら幾望になった頃のこと。
シカの最近の仕打ちに、ハーレムの牝ジカ達は内心煮えくりかえっておりました。
ほとんどの時を夜の君に費やし、たまに戻ってきても切なげな様子で溜息をつくばかりで、彼女達がどんなに献身しても、むしろ鬱陶しげなのです。
これでは流石に皆やりきれません。
なかでも年長の牝ジカなど、あまりのくやしさに蹄をうち鳴らして地団駄する有様です。
いつもは黒毛の気品に満ちた姿も、今ばかりは土くれに汚れ乱れてしまい、見る者が憐れみさえ抱く程でした。
そんなことなど露知らず、何日かぶりに帰ってきたシカは用意された床に就きました。
そしてその夜、不思議な夢をみたのです。
次の日、頭のいい黒の君に意味を尋ねました。
「これこれこういう夢をみたのだけれど、何か夜の君との意味深なものを感じる。君よ、貴女の深い知識の井戸から答えをさらってくれないか」
黒の君は、それを聞いて激怒しました。
「まぁなんと憎らしい。私たちはいつも貴男を想い焦がれているのに、貴男の心はあの女のことばかり。よくぞぬけぬけと――」
言葉は今にも口から飛び出しそうでしたが後一歩のところで飲み下し、黒の君は精一杯努力して平静を装い、微笑みました。
「貴男様は好き兆しとお考えのようですが、わたくしから診るにこれは凶夢で御座います。ススキは矢、雪は塩という風に、つまり人間に捕まり食卓に供されるという予見でしょう」
「なんと! そのような感はなかったが…」
「もし今後外出なさるならお伴を付き添わせましょう。勝手に出歩いてはなりません…特に、浜辺などは」
「しかしそれでは…」
「黒の君は貴男様を思って言われてるのですよ」
彼女の若い取り巻きは口々にそう言います。皆、黒の君の味方でした。
こうしてシカは牝ジカ達に説き伏せられ、またハーレムの生活に戻ることになりました。
しかし、床の中で見上げる満月に心中そぞろくばかり。
嗚呼、夜の君は、今なにをしているだろう。
会いたい。
恋しい――
――会いたい!
ある晩、シカは供の目を盗んで浜辺に向かいました。
弓張の晩でした。
見上げた月の形にぞくりとするものを覚えつつ、ざぶざぶと波を蹴って水に入り始めたとき。
ひょん
夜風を裂いて
一本の
矢 が
シカの頭を貫きました。
彼はしんでしまいました。
夢のなかで、男はシカでした。
目を覚ました男は鏡を覗きました。
鏡の中で、男は白髪の老人でした。
広くなったダブルベッドに再び横になりました。
男は、シカをうらやましく思いました。
そしてまた目蓋を閉じます。
--------------------------------
あれほど暗い話はやめろとorz
絵があってこそ伝わる構成にしたかったので、シカが見た夢の描写は省いてます。
まだ書きたてですし変更すると思います。本にしたとき違ってる確率大です^^;アーカイブということ?で。
絵も他の方が描くわけだし。。
しかし。
この話のシカの部分、とある諺のくだりをそのままパクっているのですが…解る方いらっしゃるかな…?
(バレてほしくないけどw
意味は「ものの善し悪しは解釈次第」だそうですが、ネットで調べたところ「気にかかることや心配事が、予想していたとおりになること」という意味もあるそうな。。。随分意味が違うぞ?w
元をたどれば日本書紀の時代の言葉だから、シチュエーションが違うと変わってくるのかもしれませんね。
現在ではどのような意味となるのやら。
少なくとも私には昼ドラ展開しか浮かばなかったYO!\(^o^)/
*お話へのツッコミ大歓迎w