先日、映画「悪人」を観てきた。
旬の映画なので、いつもより混んでいた。
※以下、ネタバレ
内容は、なるほど悪人ばかり出て来る映画だった。
何も法に触れるだけが悪人なわけじゃないんだよなぁ。
何が善で何が悪かを判断出来るのは、
法律などではなく人の心の中にある良心であろう。
その良心が、欲の深さに負けてしまってる人間のなんと多いことか。
映像は地味だけど美しい。
素朴な景色が、登場人物たちの感情、心の中身を映し出しているような。
妻夫木くんの役作りがすごかったな。
一番印象に残ってる。彼の顔。
ああいうほんとの田舎の生活ってのが、経験したことない私には深く理解出来ないんだけど、
でもなんとなく、ああいう若者が娯楽や刺激の無い田舎の町で、
年寄りの面倒を見ながら暮らしていて、
たぶん都会への憧れみたいなものがぼんやり頭の中にあったりもして、
でも現状から抜け出すことも出来なくて、
なんかそういうモヤモヤしたもんを漠然と感じさせられるような。
彼が髪の毛を金髪に染めているんだけど、根元が伸びて黒くなっててね、
それがまた物哀しいというか、そういった彼の境遇とか心の中を表現してるような気がして・・・。
妻夫木くんのダサい服装にしても。
そういった格好もそうだけど、彼の表情も役に入りきっててすごかった。
これまであまり好きな俳優では無かったんだけど、すごいなと思った。
そのほかの登場人物たちの演技も良かった。
加害者家族、被害者家族、それぞれの境遇、思いが伝わって来て胸が苦しくなった。
でも家族はみんな被害者だよね。
やっぱり人を殺してはいけない。
最後の方は、もういいから早く自首しろ~!と思いながら観ていた。
苦しくなるだけだからさ。
それがどんなにイバラの道であっても、やっぱり“正しい道”を行かないとダメだよね。
それが唯一救われる道だもん。
少なくとも彼は生きてるわけだから。
観終わったあと、すごい気が重くなった。
観てる私も疑似体験してるくらいのストレスがあった。
それだけの力がこの作品にはあったんだろうと思う。
観て楽しい映画ではないけど、こういう映画もたまにはいい。
でも、興行成績は知らないけど、内容では「告白」を超えてはいないでしょう。
マスコミはすぐそうやって大げさに煽るけど、これは観る人を選ぶ映画だろうと思う。
合わない人が観れば、ただ嫌悪感しか感じない映画になる可能性も。
イライラする場面いっぱいあるしね。
でもそれも監督の狙いなのだろうと思うし、
このイライラは映画に対するものというより、
今の世の中に対するものなのかもしれない。
だってさ、実際の世の中だって悪人ばかりだものねぇ。