My ordinary days

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ふと思い立ち第2のキャリアを始めてしまった、流されがちなひとの日々を綴るブログです

いとうせいこう「想像ラジオ」

2013-07-04 20:20:52 | 読書
ビットワールドのセイコーさん・・・・として、ほぼ毎週テレビでお見かけしているのですが(次男くんがこの番組好き)
著作を読んだのはこれが初めて。


想像することって、本当にたいせつ。目に見えることだけが真実ではないのです。
震災を題材にしているお話ですが・・・この表題のラジオ、聴けるんですよ。私たちも。だって想像ラジオなんだから。

想像ラジオは津波に流されて木の上にひっかかっている、「DJアーク」さんが放送している番組なんだけど、いろいろな人が聴いていろいろな人が放送に参加して。

そう、こんな一文でも想像できるの通りアークさんはもうこの世の方ではありません。初めは本人も自覚がなかったようですが。
そんなことあるわけないし。小説だし。と、思うのもアリ。元々想像なんだから。でも、これが想像のお話だからって、ないっていいきれます??聴いてないよね。聴こえてないからこんなことないっていうだけで、聴こえる人には聴こえていて、それが本当のことだ、って言われた時に否定しきれないでしょう、当事者ではないから。

癒しの物語、というものでもないです。人の心、魂の持ちようについてのお話。

多くの人が震災で、いろいろな事故や病気でこの世を去ります。生きていれば、だれでもそうなります。では、死んでしまったらもうそれでその人は無になるのか、といえば、そうではない。あちら側にいってしまった人と、こちらにまだとりあえず残っている人と、交流している人だっている。(オカルトではないよ~)

自分の家族の安否を気にしつつも放送を続けるDJアークさんの章と、その放送をなんとなく受信できそうでできないこちら側の人たちの章とに分かれており、そんな亡くなった人たちの声が聞こえる気になってはいけないと憤るボランティアのプロなども登場し、被災した人々を支援することの難しい一面を感じることもできます。今、まさに、被災地支援の方法や形を細かく段階別(と、ひとくくりにはできないのではあるけれど)に変化させていかなければならない現実があり、内容が時間とともに変わっていくだけのことで支援の問題自体がなくなるということではないためにある程度の期間古びないトピックとして読者に届けられることになるでしょう。

この想像ラジオの存在に惹かれ、なんとか聴いてみたいと願うこちら側での主人公がカノジョとそのことについて会話するシーンがるのですが・・・・・この世の善悪とか何とかを超えて、切ない。と同時に、人はどういう形であれ、繋がっていられるのだということを改めて信じることができました。

このお話は普通の人の人生と同じく100%のハッピーエンドな風に終わるというわけには行かないのですけれど、考えようによっては100%のハッピーエンドなんてない、またはどんなエンドィングであってもそれはハッピーなものになるので・・・ただ、読後にきちんと残るものはあり、読者にとってはハッピーな終わり方をしていると言えましょう。

お薦め☆☆☆☆☆ の本。



個人的意見としては、芥川賞をとろうがとるまいが良い作品は良い、なのでまーどっちでも・・・
しかしビットワールドのあのセイコーさんがなんとかというスゴイ賞をとったんだぜい!ということになれば、あの番組を楽しくみている子どもたちにも喜ばしいニュースとなるとは思います。

第149回「芥川賞・直木賞」候補11作決定 湊かなえ氏が初ノミネート(ORICON STYLE) - goo ニュース2013年7月4日(木)05:00
(ORICON STYLE)
 日本文学振興会は4日、第149回芥川賞・直木賞(平成25年度上半期)の候補作を発表した。
 芥川龍之介賞候補には、タレントとしても活躍するいとうせいこう氏の『想像ラジオ』をはじめ、4度目のノミネートとなった戌井昭人氏の『すっぽん心中』など全5作が選出。

 直木三十五賞候補には、5度目のノミネートとなった恩田陸氏の『夜の底は柔らかな幻』ほか、日本でも人気のマティス、モネら4人の画家たちの人生を描いた原田マハ氏の作品集『ジヴェルニーの食卓』、初選出となる湊かなえ氏の『望郷』など、幅広いジャンルから全6作が選ばれた。作品の多くが実写化されている湊氏が、同賞を初受賞するのかにも注目が集まる。受賞作を決める選考会は17日、東京・築地「新喜楽」で行われる。

 芥川賞・直木賞は昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌、堪能本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定する。

 前回の第148回(平成24年度下半期・1月16日発表)は、芥川賞が黒田夏子氏の『abさんご』、直木賞を平成生まれ初の受賞者となった朝井リョウ氏の『何者』と安部龍太郎氏の『等伯』が受賞している。

候補作品は以下のとおり。

■第149回芥川龍之介賞 候補作品
いとうせいこう『想像ラジオ』文藝春号
戌井昭人『すっぽん心中』新潮1月号
鶴川健吉『すなまわり』文學界6月号
藤野可織『爪と目』新潮4月号
山下澄人『砂漠ダンス』文藝夏号

■第149回直木三十五賞 候補作品
伊東潤『巨鯨の海』光文社
恩田陸『夜の底は柔らかな幻』文藝春秋
桜木紫乃『ホテルローヤル』集英社
原田マハ『ジヴェルニーの食卓』集英社
湊かなえ『望郷』文藝春秋
宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』早川書房