インド、デカン高原の古都市で企業内日本語教師をしていた時のこと。
宿題チェックや小テスト、週末テストなどで、学習者の答案の採点をすることがよくあった。
赴任して間もないころ、初めて採点した試験用紙を返したとき、なんだかよくわからなかったが、教室内に異様な雰囲気がさっと流れたような気がした。だが、何のことかわからなかったし、限られた授業時間で、JLPTのN5、N4に合格させることが至上命令で、とにかくテキストを進めなければならなかったので、すぐに授業を始めた。
そのまま数週間がすぎたころ、確か週末テストを返したときだったと思うが、一人の学習者が英語で、「これは'Correct'なんだ。'Zero'じゃないんだ」とつぶやくのが耳に入った。
鈍い私は、やっと気が付いた。インドでは、「〇」(まる)は、「ゼロ」(零点)を表していたのだ。
日本語を習い始めたばかりのころは、少ない語彙を使って、易しい文法を学ぶ、だから確認テストの問題も易しく、正解が多い。つまり、日本人の私が採点するので、「〇」(まる)が多いことになる。ほとんど全員がよくできているので、答案返却後答え合わせをすることもなかった。
だが、この答案用紙を返されたインド人の学習者にとっては、ほとんど「〇」(零点)ばかりの自分の答案を見て、絶句。普段なら、わからないことがあったら、すぐ口に出して質問してくるインダス文明の末裔たちも、零点に近い答案を見たら何も言えなくなったらしい。正しい答えを教えてくれと言い出す、勇気ある人も一人もいなかった。
だから、私も、採点に使う記号が日本とインドでは違っていることに、かなり長い間気が付かなかった。
インドでは、採点にどんな記号を使うか、聞いたところ、
正解 ー レ(レ点) 不正解 ー ×、 または 〇
日本ではどうかというと、
正解 ー 〇 不正解 ー ×、 または レ(レ点)
つまり、
「〇」 と 「レ」 は、日本とインドでは全く逆の意味、「×」だけは日印で同じ意味というわけだ。
国や文化が違えばいろいろなことが違うことは承知していたのだが、教師にとってごくごく日常的な「〇つけ」がこんな問題を生むとは思いもしなかった。インドに行ったら、「〇つけ」ではなく「レ点つけ」というべきなのか。
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宿題チェックや小テスト、週末テストなどで、学習者の答案の採点をすることがよくあった。
赴任して間もないころ、初めて採点した試験用紙を返したとき、なんだかよくわからなかったが、教室内に異様な雰囲気がさっと流れたような気がした。だが、何のことかわからなかったし、限られた授業時間で、JLPTのN5、N4に合格させることが至上命令で、とにかくテキストを進めなければならなかったので、すぐに授業を始めた。
そのまま数週間がすぎたころ、確か週末テストを返したときだったと思うが、一人の学習者が英語で、「これは'Correct'なんだ。'Zero'じゃないんだ」とつぶやくのが耳に入った。
鈍い私は、やっと気が付いた。インドでは、「〇」(まる)は、「ゼロ」(零点)を表していたのだ。
日本語を習い始めたばかりのころは、少ない語彙を使って、易しい文法を学ぶ、だから確認テストの問題も易しく、正解が多い。つまり、日本人の私が採点するので、「〇」(まる)が多いことになる。ほとんど全員がよくできているので、答案返却後答え合わせをすることもなかった。
だが、この答案用紙を返されたインド人の学習者にとっては、ほとんど「〇」(零点)ばかりの自分の答案を見て、絶句。普段なら、わからないことがあったら、すぐ口に出して質問してくるインダス文明の末裔たちも、零点に近い答案を見たら何も言えなくなったらしい。正しい答えを教えてくれと言い出す、勇気ある人も一人もいなかった。
だから、私も、採点に使う記号が日本とインドでは違っていることに、かなり長い間気が付かなかった。
インドでは、採点にどんな記号を使うか、聞いたところ、
正解 ー レ(レ点) 不正解 ー ×、 または 〇
日本ではどうかというと、
正解 ー 〇 不正解 ー ×、 または レ(レ点)
つまり、
「〇」 と 「レ」 は、日本とインドでは全く逆の意味、「×」だけは日印で同じ意味というわけだ。
国や文化が違えばいろいろなことが違うことは承知していたのだが、教師にとってごくごく日常的な「〇つけ」がこんな問題を生むとは思いもしなかった。インドに行ったら、「〇つけ」ではなく「レ点つけ」というべきなのか。
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