浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

AIIBから見えてくる習近平の戦略

2015-06-09 07:34:57 | 資料

中国のシルクロード、「一帯一路」の正体

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)4月20日(月曜日)弐
   通算第4520号  
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 中国のシルクロード「一帯一路」は鉄道、ハイウエイ建設による軍輸送が基軸
  曖昧だった「陸のシルクロード」は鉄道輸出プロジェクトが根幹に
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 21世紀のシルクロード構想、中国は400億ドルを「シルクロード財団」に投じ、あるいはAIIBを通じての融資によって、アジア各国との国境を越えて新幹線、ハイウエイ、そして海のシルクロートは港湾の建設プロジェクトが主眼とすることが分かった。

 米人学者によれば「これは徹頭徹尾、軍の戦略が基本にある」という。
軍の機関誌に発表された論文を読んでも「21世紀のシルクロード構想」はいかにして軍事力を迅速に効率的に輸送できるかに力点が置かれており、2007年と11年の中ロ共同軍事演習でも、ロシア兵、中国兵それぞれが鉄道によって如何に迅速に輸送できるかの作戦展開に重きを置いた。

 2014年末に中国は新幹線を(1)蘭州(甘粛省)からウルムチ(新彊ウィグル自治区)へ。(2)貴州省貴陽から広州へ、そして(3)広州から広西チワン自治区の南寧へ通した。いずれも中国版「新幹線」(中国語は「高速鉄道」)で、残りの予定工事区間は、まだ3000キロ(この三千キロだけでも日本の新幹線の全営業距離に匹敵)。

 そして国内ばかりではなく、この高速鉄道を(1)カザフスタン、ウズベキスタンなど中央アジアイスラム圏を通過させ、トルクメニスタンを通過してヨーロッパへ向かわせる。モスクワは従来のシベリア鉄道の競争力を奪われる危険性もあるが、モスクワがシルクロートのハブとして機能し、対欧輸出の拡大となれば、ロシアのメリットは大きいとして前向きになった。

 (2)トルコへはすでにイスタンブール → アンカラ間を中国が支援した高速道路が完成しており、これをトルコはさらに四本、東方へ連結する計画がある。

(3)アジアへも雲南省からラオス、カンボジア、ベトナムへ鉄道を拡充して結ぼうとしており、軍事戦略として勘案すれば、たしかに米人学者等の懸念が当たっている。

 米国の有力シンクタンク「ジェイムズタウン財団」のレポートによれば「中国国内の鉄道プロジェクトは明らかに中国人民解放軍の軍事戦略の下に発想されており、兵力、兵站、装備、戦車輸送などの基幹ルートでもある」(同財団CHINA BRIEF、4月16日)

欧州戦線への軍投入という事態は想定しにくいが軍人の論文には「ロシアがクリミア戦争で苦戦し、日露戦争が敗北におわったのも、鉄道建設が遅れたからである」としている点には注目しておくべきである。

とはいえ今世紀最大のプロジェクトともいわれる「一帯一路」は短時日で完成しない。
そもそも資金が続くのか、どうか。途中で挫折すれば、あとに残るのは索漠たる曠野であろう。

▼あちこちにプロジェクトの残骸はゴーストタウン、こんどの「一帯一路」のシルクロードも、アジアのあちこちに曠野を出現させるだけでおわるリスクが高い

中国自身が「おそらく何世代にもわたる」と言っているように、これは短時日のプロジェクトでないことも鮮明になった。そしてAIIBの融資先は、これらのプロジェクトへの融資が主力となる。
やはり、そうだった。AIIBは「中国の、中国により、中国のため」の銀行なのだ。

 習近平はことし初めての外遊先をパキスタンと、インドネシアに絞り込んだ。
パキスタンとは半世紀を超える軍事同盟でもあり、同国のイランとの国境グアイダールの港湾建設工事も十年前から中国主導で進んでいる。陸のルートも山道が開けているが、これを本格的なハイウエイとする。

 インドネシアは大々的な港湾設備に全力を注いでおり、中国の「21世紀の海のシルクロード」はマラッカ海峡を重要視している。シンガポールで分岐するもうひとつのシーレーンをインドネシアへ向かわせる。
 したがってジャカルタは中国からの資金導入に前向きとなる。

▼中国国内シンクタンクからは疑問の声も

とはいえ、構想はあまりにも壮大であり、本当に完成するのか、リスクはないのかと中国の国内シンクタンクからは疑問の声があがっている。

『サウスチャイナ・モーニングポスト』(4月19日)によれば、中国国際問題研究院の石澤らは、「トルクメニスタンからイスラム国へ入っているテロリストは360人、もし鉄道がかれらによって爆破されると、どうなるのかという脆弱性がある。鉄道沿線の長い距離を守れるのか、ましてカザフ、ウズベクなど指導者はすでに70歳代であり、次の後継者が未定(つまり親中派の指導者が続投できるのか、どうか)なのもリスクをともなうだろう」としている。

 「こうした諸問題を勘案すれば、中国の当該地域への投資はリスクが高い」。
また、国内ではGDP成長率が鈍化し、不況にさしかかっているタイミングでの海外投資には疑問がのこり、あまつさえ米国が協力しない金融機関の設立など、「歴史をひもといても中国がおこなった壮大なプロジェクトは多くが挫折しているではないか」と自省の声が聞こえてくるのである。

http://melma.com/backnumber_45206_6196561/

◆「中国流」では頓挫する新シルクロード構想
ルールは曖昧にして情報はひた隠し

2015.4.21(火) 姫田 小夏 JB PRESS

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSSI)が運営するウェブサイト「アジア海洋透明性イニシアチブ」に掲載された南沙諸島・ミスチーフ礁の衛星画像。中国の船が浚渫(しゅんせつ)作業中とみられる。フィリピン大統領の「世界が中国に懸念」という言葉に中国は反発している(2015年3月16日撮影、同4月11日提供)〔AFPBB News〕

 中国の中長期戦略である新シルクロード構想「一帯一路」。その融資をサポートするアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立をめぐり、中国でも激論が交わされている。

 学者や研究者の報告書には「中国の課題克服」をテーマにしたものが目につくようになった。その懸念の1つが「中国のやり方が参加国に受け入れられるかどうか」ということである。

領有権争いからASEAN諸国の目をそらす策略?

 30億人の市場を切り開く陸上と海上の新シルクロード構想は、習近平国家主席が掲げる「中国の夢」を実現する「新しい改革開放政策」とも言われている。アジア、欧州、アフリカ大陸と周辺の海洋が舞台になるが、その核となるのが、新疆ウイグル自治区を拠点とした中国の西方の開発と、東方の南シナ海の海洋開発だ。

 中国が掲げる「21世紀の海上シルクロード」とは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の海洋周辺地区の経済や貿易の活発化を目指すものだ。この構想には、言うまでもなく中国主導の新秩序を構築しようという野望が潜んでいる。

 その中国主導の枠組みであるAIIBに、ASEAN諸国は参加を表明した。だが一方で、南シナ海における領有権問題を抱えるフィリピン 、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、ベトナムは、中国に強い警戒を示している。

「中国の新シルクロード構想は、南シナ海の領有権争いからASEAN諸国の目をそらす策略だ」という批判の声もある。

 インドネシアのシチズン・デーリー紙は「成果を急ぐ中国は、ASEAN諸国が希望しない形で計画を進める可能性がある。結果として、経済利益と領有権の相殺が行われるだろう」と記し、この枠組みに参加する国に対して中国は領土に関する主張をますます強めるだろうと警鐘を鳴らしている。

 中国と、南シナ海における領有権問題を抱える複数の国々は、十分な政治的信頼関係を築けていない。ASEAN諸国は常に中国に対して疑心暗鬼の眼を向けている。中国のやり方をASEAN諸国が受け入れられるかどうか。新シルクロード構想の成否を握るのはこの点にあると言ってもいいだろう。

形骸化した「中国・ASEAN海上協力基金」

 ASEAN諸国が中国の枠組みに参加したのはこれが初めてではない。

 2002年、中国とASEAN諸国は「南中国海における関係国の行動宣言」(DOC)に調印した。また、2011年に中国は総額30億元の「中国・ASEAN海上協力基金」を創設し、双方の海上実務協力事業の支援を発表した。このとき中国は30億元を拠出してファンドを設立した。

 この「中国・ASEAN海上協力基金」が、「21世紀の海上シルクロード」の重要な支柱となった。その後、2013年に習近平氏がインドネシアを訪問した時に「21世紀の海上シルクロードの共同建設」を提議している。

「中国・ASEAN海上協力基金」は当初、海上交通のインフラ整備や航行の安全、救難捜索、犯罪取締りなど幅広い取組みが掲げられ、大国としての中国が周辺地域の安定を維持し、また南シナ海に友好的雰囲気を形成する役割を担うとされた。

 発表された当時は大きな関心が寄せられたが、今では形骸化していると言ってよい。中国の学者や研究者は「この枠組みがASEAN諸国に受け入れられていない」と指摘し、その状況は「新シルクロード構想」にも悪影響を及ぼすと懸念している。

 国際問題を扱う中国人研究者が、国務院系の媒体に投じたある報告書がある。そこには「中国・ASEAN海上協力基金」の問題点について、次のように述べられていた。

「2011年に設立された基金だが、ASEAN諸国からは、どのように申請し、どう活用したらいいのか要領が分からないという指摘がある。中国がASEAN諸国政府に行うのは通知のみだ。合作プロジェクトはネット上で発表されるものの、それは中国語でしかない」

 この一文からは、中国主導のこの基金の運営状況が、ASEAN諸国の参加を促すものではなく、逆に排除するものになっていることが伺える。また、報告書全体からは、「不透明性」がもとで、当初ASEAN諸国が示した高い期待と関心も次第に薄れて行った状況が読み取れる。

 同様の指摘は、別の報告書でも見られる。「このファンドはどのように活用されるのか、どの部門が管轄して、どのように管理するのか、どういう形でプロジェクトの入札を発表するのか、どうやって申請するのかなどいずれも不明瞭だ」という。

情報は常にブラックボックスの中

 「中国・ASEAN海上協力基金」よりもさらにスケールが大きい「新シルクロード構想」は「果たして大丈夫なのか」という懸念は中国国内にも存在する。その懸念の内容を一言で表すならば、「中国の隠ぺい体質によって失敗するのではないか」ということである。

 情報を非公開にするのは中国の“得意技”である。中国で事業展開する企業や個人は常にこれに泣かされてきた。制度の詳細や手続きの方法を窓口に尋ねても「分からない」の一点張り。さまざまな部門をたらい回しにされ、最後は金銭(すなわち贈収賄)で解決するしかない。また中国ではグレーゾーンの領域が大きすぎるとも言える。ルールの解釈にある程度の幅を持たせるため、不正や収賄が起きやすくなる。

 構想をぶち上げたはいいが、AIIBも一帯一路も詳細が見えてこない。“走りながら考える”のは中国の常套手段だと言えるが、振り回されるのは外からの参加者だ。北京五輪、上海万博はその最たる例だった。

 最近では2013年9月に開設された「上海自由貿易試験区」がそうだ。鳴物入りでぶち上げたものの、「情報がまったく伝えられない」と内外の企業から不評を買っている。

お粗末な申請書に愕然

 話を「中国・ASEAN海上協力基金」に戻そう。目下、このファンドがサポートするプロジェクトは17を数えるという。水面下では、予算にありつくための「あの手この手」が展開されているようだ。

 試しに基金利用の申請書をダウンロードしてみたところ、A4サイズ2枚ほどのあまりにお粗末な申請書に愕然としてしまった。この程度の内容で、一体何を審査できるというのだろうか。詳細資料の添付を求めているとはいえ、どこまで詳細な情報が必要かという基準も明確ではない。

 結局、予算を獲得したのは、外交部、交通部、国土資源部など国の機関が主導するプロジェクトが7割以上を占める結果となった。残り3割は、福建省などを中心とする沿海部の地方政府である。民間企業やASEAN諸国の参加はほとんどない。資金が行きわたるべきところに行きわたっていない状況が浮き彫りになった。また、予算がついたプロジェクトはなぜか「漁業支援」が目立った。

 中国が主導する国際組織の中には、成功したものもあるだろう。だが、中国・ASEAN海上協力基金のように有名無実化したものも少なくない。その遠因が中国の隠ぺい体質にあるとしたら、新シルクロード構想の運営もとても楽観できるものではない。

 新シルクロード構想を打ち出したことで、「中国・ASEAN海上協力基金」の役割は総合的プラットフォームにグレードアップされるという。しかし、狙い通りに行くのかどうか。放っておけば、ますますブラックボックス化していくことは間違いない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43553

中国のシルクロード「一帯一路」は鉄道、ハイウエイ建設による軍輸送が基軸であることが判明している。
曖昧だった「陸のシルクロード」は鉄道輸出プロジェクトが根幹にある。しかし途中国にどれほどの需要が有るかというと非常に希薄である。過疎の地域にそんな出費が可能とも思えずメリットもない。

メリットと言えば人民解放軍の移動が非常に敏速に出来るということか。
欧州戦線への軍投入という事態は想定しにくいが軍人の論文には「ロシアがクリミア戦争で苦戦し、日露戦争が敗北におわったのも、鉄道建設が遅れたからである」としている点には注目しておくべきである。

もしAIIBによって高速道路や鉄道が出来たとして、喜びも束の間、人民解放軍が怒濤のように押し寄せたなどは冗談にもならない。

◆【巨星・虚勢の中国】習体制“新常態”は毛沢東時代と酷似 中国の政官財は“経済犯罪者集団”

2015.04.18 zakzak

 中国では近年、「無官不貪」(=不正を図らぬ幹部はいない)という皮肉な表現が流行している。

 事実、中国メディアによる大物幹部に関する報道は、「収賄」「脱税」「不正蓄財」「資金の海外流出」「国外逃亡」「自殺」「他殺」「暗殺未遂」「愛人騒動」「粛清」「党員資格剥奪」「終身刑」「死刑」「軟禁」など、ブラックな内容ばかりだ。

 習近平体制での「汚職幹部追放」キャンペーンでは、周永康・前共産党政治局常務委員(=胡錦濤前政権で序列9位)や、徐才厚・前中央軍事委員会副主席(今年3月、多臓器不全で死去)ら、大物幹部や親族が次々と血祭りに上げられている。

 産経新聞は16日朝刊で、習近平指導部が、前出の徐氏と同じく、胡錦濤前指導部で軍制服組の最高位を務めた郭伯雄・前中央軍事委員会副主席の身柄を拘束し、汚職の疑いで取り調べを始めた、と報じた。在任中、部下から多額の賄賂を受け取り、昇進や軍用地の民間転売などで便宜を図った疑いがあるという。

 このほか、国外逃亡を図る腐敗犯罪の官僚と民間人を取り締る捜査プロジェクト「猟狐活動」(キツネ狩り)も展開中だ。

 つまり中国の政官財は、われわれの常識からすれば“経済犯罪者集団”であり“腐敗者集団”なのだ。おまけに、2ケタ、場合によっては3ケタの数の女性を国内外で囲い、芸能界の大物子女を含め、麻薬に手を染めるインモラルさもある。

 習体制は“新常態”などと聞き心地の良い表現を打ち出したが、「腐敗」「造反」「憎悪」「復讐」といった異常心理が蔓延する国内は、国共内戦で疲弊しきっていた毛沢東時代と酷似している。

 毛主席が1951年12月に始めた「三反運動」は、政府機関、軍、学校、国営企業の汚職や浪費、官僚主義に反対する闘争のこと。「五反運動」は、起業家らの贈賄、脱税、国家資財の窃取、おから工事、国家の経済情報の窃取に反対する国民運動だった。

 当時も腐敗幹部を処刑した後、資本家らが主ターゲットとなり自殺者が激増したが、五反運動はその実、資産家の財産の強奪だった。

 文化大革命への再突入を予感させる「批判と自己批判」運動も復活しており、ネット規制や言論弾圧も強化されている。暴動や労働争議が各地で頻発し、大気汚染や毒食問題も常態化している。

 ドイツに本部を置き、汚職・腐敗を監視する非政府組織(NGO)「トランスペアレンシー・インターナショナル」は昨年12月、世界各国の汚職状況を、実業界への調査などに基づきまとめ、最新の腐敗認識指数(CPI)ランキングとして発表した。中国の清潔度は、一昨年の80位から100位に下落した。

 つまり、習体制がいくらトラやハエをたたこうが、世の中がシロくなるどころか、金太郎あめ状態で次々と同じ顔ばかりという実態がバレたからではないのか?

 それなのに、世界は“ブラックな中国”が掲げるアジアインフラ投資銀行(AIIB)に群がった。世界の新常態は“インモラル”なのか。

 ■河添恵子(かわそえ・けいこ) ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。著書に『中国崩壊カウントダウン』(明成社)、『だから中国は日本の農地を買いにやって来る』(産経新聞出版)、共著に『国防女子が行く-なでしこが国を思うて何が悪い』(ビジネス社)など。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150418/frn1504181000001-n1.htm

◆ニカラグア運河は不可能と専門筋は見ている

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)4月4日(土曜日)
    通巻第4506号
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 中国主導の「ニカラグア運河」は2019年に完成する筈がない
  中南米に今後十年間で2500億ドルを投資するという大風呂敷に似て
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 中国の「無謀」というより「発狂的な」海外投資の典型は対ベネズエラに行われた。
 反米政治家だったチャベス大統領の中国べた褒め路線にのっかって、中国は450億ドルをベネズエラ一国だけに投資した。

担保はベネズエラが生産する石油であり、昨今は一日60万バーレルを輸入する。基本的ルールとは、幕末維新の日本が英米独露から押しつけられた不平等条約の中味を思い出すと良い。つまりカネを貸す見返りが関税だったように中国は猛烈に石油を確保して、その前払いを利息先取りを含めて行っているのである。

将来のディスカウントを貸し付け利息に算定して計算しているわけだから、原油代金はおもいのほか安くなっている筈である。

 パナマ運河をこえて、ベネズエラ石油は中国へ運ばれる。後述するようにニカラグア運河とパナマ運河拡張プロジェクトは、このベネズエラへののめり込み路線と直結するのである。

 ともかくベネズエラは歳入の過半が石油輸出(輸出の96%)によるものである。ベネズエラ原油価格は1バーレル99ドル(13年)から、2015年四月現在、なんと1バーレル=38ドルに墜落したため、2015年は2013年の三分の一の歳入に落ち込むことは必定である。

 ベネズエラはOPEC(石油輸出国機構)のメンバーでもあり、勝手な行動も許されずチャベルを引き継いだニコラス・マドゥロ大統領は悲鳴を上げて中国に助けを求める。
 しかし中国はベネズエラ鉱区を買収し、投資しているが、石油市場の悪化により、これ以上の投資が出来ない。

2015年1月に急遽、訪中したマドゥス大統領は「中国開発銀行を通じて、200億ドルの融資に合意した」と北京で発表したが、実際に実行に移されたか、どうかは不明である。
「結果を見極めなければ判定ができない」というのは『井戸の中の竜』(DRAGONIN THE ROOM)を書いたボストン大学のケビン・ギャラガー教授である。

 ベネズエラのみならず、中国は中南米全体で1000億ドルもの投資をしており、二位はエクアドル、三位がアルゼンチンと、いずれも社会主義路線をすすめる準独裁国家。チャーチルがいみじくも言ったように、「社会主義なんて、他人の懐がつきればおしまい」ということである。

 エクアドルでは銅山開発を中国企業が行っている。環境汚染、農地取り上げに反対する先住民族が中国企業に抗議にでむいたところ、死体で発見される事件がおこり、鉱区では住民の反対運動が盛んである。

 メキシコでも中国が売り込んだメキシコシティ → ケレタロ間210キロの新幹線プロジェクトが白紙に戻った。11月APECで北京に出発するときにメキシコ大統領が発表したのだ。
 
 ブラジルへは主に鉄鉱石鉱区への投資だが、香港企業をふくめての直接投資は2005年から2011年までに170億ドル。またブラジルへは武漢製鉄、レノボ、グリーディ、華為技術、中興通訊(ZTE)信など錚々たる中国企業が軒を競うかのように進出している。

 アルゼンチンへの中国投資は鉱山開発に加えて鉄道事業に集中しており、キルチネス大統領が訪中のおりには鉄道インフラ整備への投資の他、人口150万人のコルドバ市の地下鉄四本の実現に向けて投資協力などが謳われた。

 ▼こうみてくると、ニカラグア運河は本気かどうか怪しくなる

 ここへ出てきたのがニカラグア運河建設という大プロジェクトである。パナマ運河の三倍強の長距離を東西に運河で結ぶ工事で、実際に2014年に着工された。

 香港に設立された「香港ニカラグラ運河開発投資」(HKND)という会社が推進主体で工事に500億ドル、付帯して倉庫、工業団地など合計1000億ドルを投資して2019年開業を謳っている。

 ところが、このニカラグラ運河も暗雲がただよい始めた。
 ニカラグラ南部ノバス県では農地没収を懼れる住民らが立ち上げり「環境破壊反対」のデモを行った。
プラカードには「中国は出て行け」と大書されていた。

ニカラグアは人口600万人しかいないため、この運河プロジェクトで雇用が20万人も生まれると聞けば、政府は前向きになるだろう。

ところが、専門家の多くが「実現不可能」とみている。
 いや中国自身、半信半疑なのかもしれない。それゆえに工事主体は中国政府ではなく、「香港ニカラグラ運河開発投資」というダミー会社(なぜかこの会社、香港という地名の冠をつかいながら本社登記は北京である)

 中国はニカラグラ運河開発とは別にパナマ運河の拡張工事に乗り出しており、53億ドルを投じて、現在の二倍の規模に運河を拡大するとして、「いざニカラグア運河で失敗しても次の伏線を引いている」のである。

現在最大のコンテナ輸送でも5000コンテナ積載が上限、これを13000コンテナを積載できる「新パナマックス」を就航させるという。

そうなると、いまの輸送力三倍増を計ろうとしている。

 2015年1月9日に北京で開催された「ラテンアメリカ、カリブ海共同体」(33ヶ国。CELACという)総会の席上、習近平は憮然として表情で、「中国は今後10年間に2500億ドルをラテンアメリカとカリブ海諸国に投資する」とぶち挙げた。

その天文学多岐な金額は眉唾で、いかにも大風呂敷が好きな中国の打ち上げ花火に終わるのであろう。

http://melma.com/backnumber_45206_6189104/

◆中国、アフリカにも軍事拠点

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月14日(木曜日)
   通算第4539号  <前日発行> 
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 中国、アフリカの三ヶ所に軍事拠点構築へ
  ジンバブエでは大統領選挙にまたも介入、ジブチにも軍事拠点
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 ジブチのレモニエール基地は米軍の拠点。ここをベースにイエーメン、ソマリアならびにアフリカ諸国への軍事介入拠点としている。米軍の作戦本部である。
このジブチはエチオピアへの出入り口であり米軍のほか、わが自衛隊とフランス軍も拠点を設置している。
安倍首相はジブチを訪問した際、自衛隊基地を慰問した。

 中国は、このジブチに対して鉄道、港湾などいくつのかのプロジェクトを支援し、エチオピアとの貿易のハブとして活用しているほか、軍事拠点の構築を模索している(英文プラウダ、5月12日号)

 独裁者ムガベが君臨するジンバブエは鉱物資源の宝庫として知られるが、中国はミグ戦闘機、戦車、装甲車、ライフルなど夥しい軍事支援をなして、ムガベ独裁を支えてきた。
7月31日に控える大統領選挙に選挙参謀を送り込んでいる。

このほか、軍の選挙動員に備え軍人多数を派遣した。前回の選挙も中国が丸抱えで望み、宣伝カー,Tシャツ、ビラなどで中国は背後のロジェスティッックを取り仕切った。
 中国とジンバブエの貿易は2014年に10億ドルに達した。

 モランゲのダイヤモンド産出地域には、中国が軍事基地を確保した。ジンバブエは海の出口がない内陸国家ゆえに、モザンビークのマプト港を利用しているが、中国はジンバブエ奥地の世界有数のダイヤモンド産出地域であるモランゲに空軍基地を建設したのだ。

 また南ア政府と交渉して喜望峰にも軍事拠点を構える勢いにある。喜望峰は世界貿易の10%が、この岬を経由している。
中国が輸入する石油の13%近くは、アンゴラ沖から、この喜望峰を通過して、インド洋を横切り、中国へ運ばれている。
       
http://melma.com/backnumber_45206_6206551/

◆習氏の醜聞もみ消し目的? 側近・王氏訪米で臆測 

2015/5/21 日本経済新聞

 中国で習近平国家主席の右腕として反腐敗運動を指揮する共産党の王岐山・中央規律検査委員会書記が今年夏にも米国を訪問する見通しだ。本来、極めて国内的な問題の担当者がなぜわざわざ外遊するのか――。その思惑を巡って様々な臆測が飛び交っている。

■海外逃亡した官僚の写真公開

 「猟狐(キツネ狩り)2015」。4月22日、王氏の指示の下、中国公安省はウェブサイトに海外逃亡した主な腐敗官僚100人の名前と顔写真を掲載した。国内での反腐敗運動を軌道に乗せた習政権の次のターゲットは、海外に逃亡した経済犯罪や汚職の容疑者らだ。「キツネ狩り」と称して、外国政府に対し、1万人近くいるとされる容疑者の中国への引き渡しを要請している。

 王氏が訪米を計画する表向きの理由は、米国にこの「キツネ狩り」への協力を求めることだ。公安省のリストで挙げた100人だけをみても、逃亡先は米国が40人と最も多い。しかし、それだけでわざわざ王氏が訪米するとは考えにくい。そこで様々な臆測が浮上する。

 「習氏一族の資産は20億元(約390億円)に上る」「習氏の姉の投資会社が09年に2860万ドル(約35億円)分の株式を保有していた」――。王氏が「キツネ狩り」の強化を指示した直後の4月末、米紙や香港紙などで習氏関連のスキャンダルが伝わった。「キツネ狩り」を強化する習指導部に反発するようなこうした動きの背景に、共産党関係者は米国に逃亡中とされる中国人富豪、郭文貴氏の存在を指摘する。

 郭氏は山東省出身の政商で、胡錦濤前国家主席の元側近で失脚した令計画氏の親族に近い。反腐敗運動で習氏との摩擦が伝えられる江沢民元国家主席や曽慶紅元国家副主席ともつながっており、習氏や王氏に関するスキャンダルを握っているとされる。今回の習氏に関する報道も、実は米国逃亡中の郭氏が仕掛けたものではないか、と党関係者はにらむ。

 大物の郭氏は公安省が公表した100人のリストには含まれていない。だが王氏訪米の真の狙いは、米国逃亡中の郭氏の身柄の引き渡しを米国に求め、郭氏が握る習氏らのスキャンダルをもみ消すことだ、ともささやかれている。

 安全保障面で中国と対立する米国にとっては、またとない交渉カードとなる。もっとも米国も中国と経済的な相互依存関係を深めており、中国が指導者のスキャンダルで政治的に不安定になり中国経済まで揺らぐのは、今の米国経済にとってもプラスにならない。中国側も、基本的には米国は郭氏引き渡しに協力するとにらんでいるようだ。中国外務省関係筋は「指導部からは『習氏が9月に訪米するまでは米国との摩擦を増やさないように』と指示されている」と明かす。

■王氏首相昇格の布石か

 一方、王氏訪米について、習氏が王氏を17年の次期党大会で李克強首相に代わり首相に昇格させるための布石だとみる向きもある。李氏は首相就任後まだ訪米していない。王氏は胡前政権時に経済担当副首相を務めて経済分野に明るく、経済分野での米国との人脈は李氏よりも深いとされる。米国側は、李氏や並みいる中国の経済閣僚などを差し置き、習氏の右腕である王氏と実質的な経済交渉をしたがっている、との見方もある。

 もっとも王氏は17年秋にも開く党大会のころには、すでに党指導部の引退年齢である68歳を超えており、今季限りで引退するというのが通説だ。だが習政権になって、こうした年齢制限の例外は増えている。閣僚の引退年齢である65歳を過ぎて続投した中国人民銀行の周小川総裁はその典型だ。反腐敗運動はまだ道半ばだとの理由で、王氏を再任、もしくは首相に抜てきする可能性は残されている。

 こうした噂を警戒するのが、李氏の出身母体である党青年組織、共産主義青年団(共青団)の出身者だ。李氏が王氏に追われるように首相の座を退けば、党老幹部の子弟ら「太子党」と党内勢力を二分する共青団の影響力は一気に落ちる。

 「政策は政局」。政策の裏には必ず政局的な意味合いが含まれていることは、洋の東西を問わない。新しい政策が示される度にそれが暗示するものを巡って噂が流れ、外遊が発表される度にその真の狙いを探る様々な見方が流れる。中国国内のあらゆる関心は、すでに17年の党大会で決まる次期指導部人事に向いている。

◆【お金は知っている】オバマ政権、金融面でも習政権に“絶縁状” VOAでは痛烈な中国批判

2015.06.05 zakzak

米オバマ政権は軍事ばかりでなく金融面でも増長する習近平政権に対し、絶縁状を突きつけている。

 それを物語るのは、王岐山党中央常務委員(66)に対する「捜査」である。王氏は党中央規律検査委員会トップで、党幹部の不正蓄財一掃をスローガンにする習近平主席の片腕である。2008年9月にリーマン・ショックが起きると、ワシントンとの間で米中協調を話し合った。オバマ政権やニューヨーク・ウォール街でも高い信頼を得ているとみられていた。ところが、ワシントンの態度は一変した。

 きっかけは、今年2月初旬に表面化した米金融大手、JPモルガン・チェースに対する米海外腐敗行為防止法(FCPA)違反容疑である。同法は、米企業による海外での贈賄を禁じている。米司法省と証券取引委員会(SEC)は、捜査の過程で、モルガン幹部と党幹部の間でやりとりされたEメールなどの通信記録を検証したところ、高虎城・商務相が商務次官を務めていた08年、JPモルガン・チェースに在籍していた息子・高●(=王へんに玉)氏の雇用継続を条件に、同社のために「一肌も二肌も脱ぐ」と申し出ていたことが発覚した。

 ウォールストリート・ジャーナル紙など米メディアによれば、米当局は高商務相ばかりでなく、中国側の調査対象として35人をリスト・アップ、その筆頭格に王岐山氏を挙げている。王氏の配下で党幹部不正取り締まりを担当した公安部長、中国銀行副行長、中信集団など国有企業大手のトップも含まれる。

 王岐山氏自身は夫人(姚依林元副首相の娘)との間に子はない。しかも、中国国内でも清廉潔白で厳しく悪をただすとの評判がある。ところが、米当局は周辺の党幹部からの依頼を受けて、交流のあるモルガンなど米金融大手に「口利き」して利権を仲介したとの嫌疑をかけている。

 モルガンが党幹部子弟の雇用継続でどれだけの不当な利益を得たかどうかを、厳密に実証するのは実際には困難で、結局はモルガンへの罰金を科す程度で決着させるとの見方が強かった。ところが、米当局は王岐山氏に狙いを定めていることをメディアにリークしたばかりか、対外情宣活動を行うボイス・オブ・アメリカ(VOA)の中国語版「美国之音」の5月29日付インターネット番組に北京に批判的な在米中国人専門家4人を登場させ、習主席や王氏の不正蓄財取り締まりのいい加減さを余すところなく語らせた。

 「美国之音」については北京当局が報道管制し、本土での受信を遮断しているが、海外の中国人社会にはその内容が知れ渡っている。ほんの一部を除き、大物の腐敗幹部については不問に付しているばかりか、取り締まる王氏の周辺は米金融大手と癒着三昧、というわけで習主席の面子は丸つぶれである。オバマ政権はワシントン・ニューヨークの王氏とのパイプを廃棄し、北京と全面対決に転じたのだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20150605/ecn1506051550006-n1.htm