浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

中国主導のアジアインフラ投資銀行AIIBの実像とは

2015-03-31 00:30:28 | 資料

◆日本が無能とかいた日刊現代を褒める中国

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015) 3月24日(火曜日)
     通巻第4495号  <前日発行>
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 「日本政府は無能、中国に完敗」と日刊現代の報道に感涙した中国紙
   アジアインフラ投資銀行に参加表明しない日・米を揶揄した日本のメディア
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 日本の極左新聞『日刊現代』が、日本の立場を徹底的に批判し、中国主導のアジアインフラ投資銀行に参加表明したドイツ、フランス、イタリア、そして英国に先を越され、日本政府が無能ぶりを天下に曝したと報じたことが、中国メディアは嬉しくて仕方がないらしい。
同紙が『日本の完敗』と書いたことがよほど気に召したらしいのだ。

 すでに述べたようにアジアインフラ投資銀行は、まだ発足もしていないうえ、本店ビルは基礎工事を終えたばかりだ。
資本金の払い込みも遅れており、実質は中国が60%程度負担することになる。つまり、この銀行は政治資金を活用してアジアの政治攪乱、ひいては金融覇権を目ざす野心的試みとはいえ、ドル基軸体制に挑戦するという銀行がドルによる運用をするのだから、この矛盾に対して中国から何の回答もない。

 欧州が加わるのはユーロが価値を激減させている最中、すこしでも米ドルが弱くなることを歓迎する政治的意図がありありとしており、中国に本気で協力しようとする姿勢はまったく見あたらない。

 いずれアジアインフラ投資銀行は空中分解か、最初の貸し付けが焦げ付き、増資を繰り返しながらの低空飛行となるだろう。
 つまり日本は歯牙にもかける必要がないのである。

http://melma.com/backnumber_45206_6183338/

◆中国はAIIBで何を狙うのか 拓殖大学総長・渡辺利夫

2015.3.27  産経ニュース

 現在の中国経済のありようを端的に表現する用語法は「国家資本主義」(ステートキャピタリズム)である。これを担う主体の一つが、中央政府の直接的管轄下の国有企業群である。「央企」と呼ばれる。120社に満たないこの央企が国有企業15万社の利潤総額ならびに納税総額の6割前後を占め、国家と共産党独裁のための財政的基盤を形成する。

 ≪高い投資依存と過剰生産≫

 央企の経営幹部には共産党指導部に連なる人々が座し、厚い財政・金融支援を受けて投資拡大を継続する特権的企業集団である。中国が圧倒的な投資依存経済となったのも央企の投資のゆえである。

 もう1つの投資主体が地方政府である。中国の地方政府は単なる行政単位ではない。傘下の国有企業、銀行、開発業者を束ねる利益共同体である。地方政府は企業投資やインフラ投資、銀行融資に関与し、外資系企業の導入にも大いなる力を発揮している。シャドーバンキングとして知られる理財商品を開発して大量の資金を吸収し、これを不動産・インフラ投資に回すのも地方政府である。

 資源、エネルギー、通信、鉄道、金融などの基幹部門における央企の投資に地方政府による不動産・インフラ投資が加わって、中国は先進国のいずれもが過去に達成したことのない極度に高い投資依存率の国となった。

 その半面が家計消費という最終需要の低迷である。最終需要の裏付けのない投資拡大はいずれ限界を迎える。中国は所得分配の最も不平等な国の一つである。可処分所得に占める最終消費比率の高い低所得者層に所得が薄くしか分配されないために家計消費が盛り上がらないのである。胡錦濤政権は階層間で均衡の取れた「和諧社会」の実現を求めたものの、この間、所得分配は逆に不平等化してしまった。

 高い投資依存の帰結が過剰生産能力の顕在化である。とりわけリーマン・ショック後の大規模な景気刺激策は深刻化していた鉄鋼、電解アルミ、鉄合金、コークス、自動車などの過剰生産をもはや放置できない状態としてしまった。

 ≪窮地脱出のための海外戦略≫

 指導部もこの事態を憂慮し「発展方式の転換」が胡政権以来のスローガンとなった。3月15日に閉幕した全人代(全国人民代表大会)で李克強首相が表明した「新常態」とは、要するに投資依存型の経済成長のこれ以上の追求は不可能であり、7%という近年の中国には例のない低成長率を「常態」(ノーマル)だと認識しようという提案である。記者会見で李首相はしかし、7%といえども実現は容易ではない旨を発言した。

 その意味するところは、一方には、央企と地方政府という強固な利益集団の投資拡大衝動を抑制することは難しく、また成長鈍化にともなう雇用機会減少への国民の不満に火を点(つ)けてはならないという事情がある。他方には、投資依存経済をこれ以上放置すれば、資本ストック調整という反動不況リスクがますます高まることへの恐れが強い。ぎりぎりの妥協が7%なのであろう。

 窮地を脱するための方途が、習近平政権によって打ち出された海外戦略である。輸出と外資導入によって積み上げられた4兆ドルという突出した外貨準備を原資として、拡大の一途を辿(たど)るアジアのインフラ建設需要に応じるための国際投資銀行の創設を図り、これを中国の過剰生産能力のはけ口とし、併せて中国企業の海外進出への道を開こうという戦略である。

 「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)の設立が急がれた理由である。昨年7月に合意された、BRICS銀行と通称される「新開発銀行」(NDB)も同様である。

 ≪スキを突かれた日米の不覚≫

 AIIBの資本規模は1000億ドル、出資額は参加国の経済規模に応じるとされ、中国の出資規模と発言権が際だって大きいものとなろう。AIIBには、東南アジア、中央アジア、中東の国々に加えて、先進7カ国(G7)からも英国に続いて独仏伊が参加を表明した。国内的矛盾の解消という不可避の政策課題の解決策を、中国の勢力圏の拡大につなげるというしたたかさを習近平政権はみせつけたのである。

 世界銀行やアジア開発銀行(ADB)の高いハードルの融資基準に「中国基準」をもって臨み、周辺諸国のインフラ建設需要に迅速に対応することをもって旧来の国際金融秩序に挑戦するという戦略があらわである。

 環境劣化と所得分配の不平等化を続ける中国が、巨大な「国家資本」をもって新たな秩序形成者として登場するというのも奇妙な構図だが、それゆえにこそ中国の力量を軽視してはならない。

 中国の膨張、日米の力量の相対的減衰をこれほど端的に示した事例は近年ない。オバマ政権の「内向き志向」、遅すぎた安倍晋三政権の登場のスキをみごとに突かれてしまったのである。かかる帰結にいたらしめた日米の指導者の自省は徹底的でなければなるまい。(わたなべ としお)

http://www.sankei.com/politics/news/150327/plt1503270007-n1.html

◆人民元が米ドルを代替する??

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)3月10日(火曜日)
   通巻第4484号  
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 中国の「大国幻想」が世界のメディアにファンタジー的仮説を溢れさせている
  人民元は米ドルに替わる基軸通貨? 中国の金備蓄が三万トン?
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 プラウダ(英語版)によれば、米ドルに替わって世界通貨の位置を狙う中国は、通貨スワップ取引を通じて人民元の市場を拡大してきたが、最近では英国が人民元建て国債を発行し、またマクドナルドが人民元建て社債をだして話題を呼んだように、「いよいよ米ドルに代替し、世界通貨となる事態が近い」と吠えた(2015年3月6日付け)。

 人民元取引を認めた市場は香港、シンガポールからフランクフルト、ルクセンブルグ、ロンドンと増え続けている。
世界の基軸通貨は80-100年周期でおこり、米ドルの基軸通貨体制の嚆矢は1921年から。
したがって「そろそろ時期的にも米ドル時代は終わり、つぎは人民元が世界通貨だ」と中国の儚い夢の応援団をプラウダが自ら買って出た。

 この幻想は【歴史の終わり】の文明観と酷似したファンタジーである。
 実態はと言えば、物々交換に近い貿易を人民元と相手国通貨との交換にしているだけ、中国国債は人民元建てだが、香港市場いがい本格的市場は成立していない。
いや、そもそも原油ガス、レアメタルから穀物相場、金銀銅マンガンに到るまで米ドル建てである。

米ドルが基軸通貨としてのサイクルの終焉が近づいている兆候さえない。いやいや、中国の富裕層はゴミ同然の人民元を一刻も早く米ドルかユーロなどの基軸通貨と切り替えて海外に逃がしている現状を、プラウダは意図的に無視している。

 さても面妖なるトピックはまだ続くのだ。
 
 ▼中国の金備蓄が3万トンを越えた??

世界的なゴールド・アナリストとして有名だというアラスデア・マクデルドは「2014年度までに中国は3万トンもの金備蓄をしている」と推定した(多維新聞網、3月6日付け)。

 同紙に拠れば1882年から2003年までに中国は25000トンの金備蓄をなし、次の11年でさらに5000トン増やして、3万トンを突破していると大胆な推測を述べた。

 世界の金備蓄ランキングで中国の国家備蓄は1054トンであり、過去十年の猛烈な民間の金が年平均500トンである。合計しても5000トン前後と見積もられる。
仮に後者の数字が正しいにせよ、中国の備蓄量は米国、ドイツに次ぎ、日本は740トンしかない。

金備蓄が大きいと、その国の通貨の信任が得られ、あるいは世界の通貨が金本位に復帰したときに価値が躍進する通貨となりうる。
 だが、どのような資料を捜しても、中国の金備蓄が30000トンというデータはない。人民元の世界通貨入りキャンペーンの一環として外国人を駆使してプロパガンダではないか、と思われる。

 そのうえ、中国の金の延べ棒は国際水準の99・99%(フォウナイン)ではなく、99・9(スリーナイン)である。つい四半世紀前までは96%で、これを「純金」として売られていたし、民間備蓄は延べ棒ではなくアクセサリーが主力である。

 まして国際的ウォッチャーの常識では、中国流の金備蓄とはミサイルの半分がセメントを流し込んだだけの囮であるように、クロームに金メッキをしたシロモノが多いのではないかと推定されている。
 いずれにしても中国の「大国幻像」が、面妖な仮説の洪水をもたらしているのではないか。 
    
http://melma.com/backnumber_45206_6177147/

ドルに代わる基軸通貨を確立すると言い出して始めたAIIBがドルベースで行われる。まして支那の貨幣元札は、支那共産党が持つ印刷機で共産党の意志で印刷される。その支那が過半数の出資をして作られるアジアインフラ投資銀行である。支那の共和国建国は高々60数年で金融の歴史も経験も元は欧米の指導で得られた僅かな経験だけである。しかも自国は融資基準も管理能力も出鱈目で、元をじゃぶじゃぶつぎ込んでもザル状態と破綻の危機にある。もっとも国内では、いくらでも印刷すればカバー出来たが、ドルベースで行われる海外金融活動はそうはいかない。長い歴史と経験を持つ欧州ハゲタカファンドには到底太刀打ち出来まい。甘いところだけ食われて先はどうなるか容易に想像できる。それを分らぬ南朝鮮が脅しに屈して参加しても、利益など得られる分けがない。最多出資の支那を後ろ盾に上から目線で威張り、引っ掻き回されるのが目に見えている。だが狂ったオバマが、どんな行動に出るかは誰にも予想が付かない。

◆「中国が米国の“闘”に勝った」「英は米と中国をめぐり犬猿の仲」…中国主導の投資銀、中英韓紙はどう論じたか

2015.3.23 産経ニュース

 中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に、先進7カ国(G7)を含む国々が次々と参加の意思を示している。今月末までに参加を表明した国が「創設メンバー」に名を連ねる見通しで、中国では「米国の姿勢に勝った」という趣旨の論評が出た。世界の金融秩序はどう変わるのか。G7でいち早く名乗りを上げた英国のほか、動向が注目される韓国などでも、さまざまな論評が出た。

 □環球時報(中国)

米国の対抗姿勢に勝利した

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は18日付の社説で、英国に続いてドイツやフランス、イタリアなどがAIIBへの参加を表明したことを、「中国の“和”(仲間作り)が米国の“闘”(対抗姿勢)に勝った」と論評した。

 AIIBをめぐる駆け引きで、事実上の“勝利宣言”をした格好だ。G7の欧州の国々を自らの陣営に引き込むことに成功した中国の“はしゃぎぶり”が伝わってくる。

 同紙は、「中国の発展には対外政策において独立した自主的な原則が求められている」とも主張した。世界銀行やアジア開発銀行(ADB)など、戦後の金融秩序を構築した「ブレトンウッズ体制」の枠組みにしばられない、独自の国際金融機関を中国が運営することの必要性を強く訴えた。

 このほか、既存の金融秩序に対する中国の不満を端的に表しているのが、国営新華社通信が運営するニュースサイト、新華網だ。「日本人がADBの総裁を独占し、米国人が世銀の総裁を独占し、ヨーロッパ人が国際通貨基金(IMF)の専務理事を独占してきた不文律がある」などと主張しており、AIIB初代総裁に中国人が就任する可能性を示唆している。

 また、人民日報(海外版)は、「G7中心だった西側経済体制に亀裂が入り始めた」などと分析した。中国を起点に中央アジアや東南アジアを経由して欧州まで伸びる「シルクロード経済圏」構想を中心としたAIIBの融資先をめぐる利益誘導に際し、安全保障などの観点で対中懸念の少ない欧州勢が中国側に傾いたことを歓迎した。

 それに加えて、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で、“中国包囲網”構築を進める日米に対抗する勢力の形成にも自信をにじませている。(上海 河崎真澄)

 フィナンシャル・タイムズ(英国)

米は秩序崩壊避ける方策示せ

 英紙フィナンシャル・タイムズは14日、「英国と米国は中国をめぐり犬猿の仲だ」と題する社説を掲載した。英国がG7で初めてAIIBへの参加を決めたことについて、米国は強く反発しているが、中国を既存の金融秩序に取り込む方策を示し、自由市場の原則を傷つけさせないことが肝要だと主張した。

 同紙はまず、中国の影響力拡大につながるとして、米国が英国などの同盟国に対してAIIBに参加しないよう働きかけてきたことにふれた上で、英国の決断は「特別な関係にある2国間に亀裂を生んだ」と指摘した。

 その上で、中国は「第二次世界大戦後、米国が主導してきた国際金融体制に、新たな金融機関を創設することで挑んでいる」とし、「米国と中国の影響力競争はますます過激になっている」と強調した。

 その一方で、英国のオズボーン財務相がAIIBへの参加をいち早く表明して中国寄りの姿勢を示したことは、「中国が今後も戦略目標を達成するために西側諸国を分断し、操る政策をとり続けることを意味する」と警告し、G7は「自国だけの利益のために分裂するのではなく、統一された戦略を打ち出すべきだ」と訴えた。

 英国に続いてドイツやフランス、イタリアなど、欧州のG7主要国もAIIB参加を打ち出した。フィナンシャル・タイムズは「米国の同盟国を引き寄せる中国マネーの磁石」と題する17日付の記事で、「米国は孤立に追い込まれ、だだをこねているようにみられてしまう」と指摘。米国は「外交政策の大失敗で、21世紀に力が揺らぐ事態に直面している」と警鐘を鳴らした。

 社説は最後に、「米国がいかなるコストを支払ってでも中国を外そうとすれば、傷を負った中国は、米ドルが基軸通貨の国際金融体制とは別の独自の金融体制を構築しようとするだろう」と予測し、米国は金融秩序の崩壊を避ける方策を示すべきだと訴えている。(ロンドン 内藤泰朗)

 朝鮮日報(韓国)

“統一後”視野に参加すべきだ

 中国主導のAIIBに創設メンバー国として参加するか否か、韓国政府は今月末までに結論を出すとしている。保守系紙、朝鮮日報は19日付で、「北朝鮮との統一後も視野に、積極的に参加すべきだ」との社説を掲げ、韓国のAIIB参加を後押しした。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領が進める韓国外交は、安全保障分野では最大の同盟国・米国と手を携え、経済分野では最大の貿易相手国・中国を重視するという危ういバランスの上に成り立っている。

 米国が検討中とされる最新鋭の迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)の韓国配備や、AIIB参加問題をめぐる主要韓国紙の報道ぶりも同じ構図だ。THAAD配備への懸念を表明する中国に対し、「第三国にとやかく言われる筋合いはない」と反発の声を上げる一方、AIIB問題では「実利」優先を掲げ、一転して、中国と手を結ぶべきだと唱えている。

 朝鮮日報も19日付社説で、欧州各国が相次いでAIIBへの参加を表明する中、強く反対していた米国も「参加するかどうかは主権国が決める問題だ」と態度を軟化させたと指摘。その上で、「既存の国際金融秩序に変化をもたらしうる重大な転換点」を迎え、韓国も「AIIBの支配構造を論議する初期段階から積極的に参加」する必要があると説いた。

 アジアのインフラ整備を目的とするAIIBに創設メンバー国として加われば、韓国の建設、土木、通信企業の域内進出に有利になる。さらに、同紙は「北朝鮮もAIIBに参加させることができれば、核放棄を前提に、AIIBを通じて北朝鮮の遅れたインフラの開発事業を推進する道が開ける」と主張する。

 そして、「中韓、米韓関係という枠」の中だけで参加を判断するのではなく、「国際金融秩序の再編という大きな波」の中で、韓国の役割を模索しなければならないと強調した。(ソウル 藤本欣也)

http://www.sankei.com/world/news/150323/wor1503230013-n1.html

◆【経済快説】中国投資銀、国民レベルでは「ろくでもない」 金融の形を使った企業への補助金

2015.03.26 zakzak

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)設立構想が波紋を呼んでいる。アジア開発銀行(ADB)のトップのポストを確保している日本政府は、ADBとの役割分担が不明確であることや、中国が主導するガバナンス構造が不透明であることなどを理由に、AIIBへの参加に消極的な態度を取ってきた。

 中国は議決権の過半に加えて、本部所在地と総裁ポストの両方を確保する見込みだ。ローンが人民元建てになる可能性もあり、人民元と日本円の勢力争いに影響を与える可能性がある。

 日本の不参加方針は、もちろん、日本の実質的な親会社のごとき存在である米国の意向をくんだものでもあった。ADBはIMF(国際通貨基金)のコントロール下にあり、IMFは米国の支配下にあって、日本はこれに協力してきた。中国のAIIB設立構想の登場は、米国がIMFにおける中国の地位向上を認めなかったことに遠因があるとの見方もある。

 ところが、中国とASEAN諸国だけではなく、英国やドイツなどが続々と参加を表明して、日本政府を慌てさせている。米国の地盤沈下と、中国の国勢拡大の反映だ。

 日本が不参加の場合、アジアにおけるビジネス展開で日本企業が不利な立場に立つ可能性もあり、創立メンバーへの参加意思表明の期限である3月末に向けて、一部には参加を是とする意見もある。

 AIIB構想における中国のメリットは明確だ。同行の運営における主導権を握ることによって、半分程度の出資で、自国に好都合な投融資を行うことができる。中国は、自分の資金だけでなく、他国の資金も使って援助的な投融資を差配することができるレバレッジ効果を持つ。

 日本が参加した場合、中国の周辺国支援に対して資金援助するような形になり、面白くないとする意見にもうなずける。

 他方、アジアのインフラ投資に対する需要、すなわちビジネス機会は今後大変大きく、このファイナンスにAIIBが絡む可能性を考えると、日本企業のビジネス展開を不利にしないために、日本は面子(メンツ)を捨ててでも参加すべきだとも考えられる。

 AIIBは、今後アジアで行われる大プロジェクトの協調融資団の一部に参加する可能性が大きい。プロジェクトの競争入札にあってファイナンスの条件は決定的な役割を果たすことが多く、有利な条件で提供できる資金が一部でもあると勝ちやすい。商社、メーカーなど日本企業にとっては、日本政府がAIIBに参加してほしい面がある。

 一方、AIIBに限らず公的金融は、金融の形を使った企業への補助金であり「ろくなものではない」。納税者としての国民レベルでは、そもそも、こんなものに参加しない方が望ましい。

 政府の決断に注目だ。 (経済評論家・山崎元)

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20150326/ecn1503261140004-n1.htm

◆金融不安、貸し渋り、ヤミ金融…「失聯=夜逃げ」ドミノに見る中国経済の末日

石平(せきへい)のチャイナウォッチ 2014/12/07

中国の新聞に今、
頻繁に登場する新造語に「失聯」というのがある。
「連絡を絶つ」という意味だが、
多用されるのは企業経営者の場合である。

倒産寸前の企業の経営者が突然連絡を絶って夜逃げする、
それが失聯事件となって世間を騒がすのだ。
もちろんその際、企業の借金や未払い賃金などが
踏み倒されるのは普通である。

 たとえば最近、新聞に報じられた失聯事件を拾ってみよう。

10月22日と24日、広東省にある
2つの照明器具企業の経営者が相次いで失聯した。
そのうちの1つの企業の場合、
踏み倒された借金は7千万元(約13億4千万円)に上る。

23日、陝西省の企業経営者が
数億元の借金を踏み倒して失聯。
25日、山東省でも企業経営者が
従業員の未支払い給料45万元を踏み倒して失聯。

11月5日、雲南省では、
不動産開発会社の経営者が
県の「重点開発プロジェクト」の工事の途中で失聯している。
13日、中国中古車のトップブランドとされる
「易車匯」の経営者が失聯、
全国に点在する数多くの店舗が閉鎖された。

同じ13日、河南省の物流大手「東捷物流」の経営者が失聯、
同社に商品を供給している数百の企業は
売掛金の回収ができなくなってしまった。

そして14日、大連市で前代未聞の失聯事件が起きた。
中之傑物流と邁田スーパーという
2つの会社の経営者が同時に失聯したのだが、
この2人は実は夫婦だったのである。

このように多くの業界で、
経営者たちによる夜逃げ事件が多発しているが、
経済環境全体の悪化以外に、
「高利貸」と呼ばれる闇金融の氾濫も、
失聯事件を多発させた大きな原因である。

金融不安が高まってきている中で、
保身に走る国有銀行が民間中小企業への融資を渋った結果、
多くの中小企業が生き延びるために闇金融に手を出すことになった。

だが、借りた金の法外な高金利に耐えられなくなると、
経営者たちは結局、元本を踏み倒して失聯を選んでしまうのである。

このような現象が広がると、窮地に立たされるのは
高利貸をやっている民間金融業者である。
貸金が踏み倒された結果、
破綻に追い込まれるのは彼らの方だ。
そうすると今度は、民間金融業者の失聯も始まる。

たとえば、四川省の成都市では10月20日、
民間金融業者、創基財富会長の
段家兵氏の失聯が発覚したが、それに先立って、
9月4日には聯成●という民間金融の経営者が姿をくらまし、
同12日には、内江聚●融資理財公司の経営者が
飛び降り自殺した。
※●=晶の三つの日を金に

そして10月初旬、
地元民間金融大手の四川財富聯合が破綻して、
経営者の袁清和氏は夜逃げ先で拘束された。
9月からの一連の破綻・失聯事件で
焦げ付きとなった融資総額は百億元にも上ったという。

かくして今の中国では、
多業界にわたる「失聯」が各地で広がり、
そのドミノ現象で民間金融の破綻を誘発する
という悪循環が始まっている。

民間金融から大量の資金を調達しているのは
不動産開発業者だから、現在進行中の不動産バブル崩壊はまた、
悪循環に拍車をかけることとなろう。
バブル崩壊後にやってくるのは金融の崩壊であるから、
中国経済の末日が確実に近づいてきているのが分かる。

習近平国家主席がアピールしてきた
「大国中国」の経済という名の土台はすでに崩れかけている。

( 石 平 )

◆【お金は知っている】親中派メディアの無知露わ「AIIB報道」 融資どころではない中国事情

2015.03.27 NewsU.S.

英国に続き、ドイツ、フランス、イタリアも、中国主導で設立準備中のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加を表明したことから、メディアは「流れが変わった以上、現実的な目線で中国の構想と向き合うべきではないか。AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ」(日本経済新聞3月20日付朝刊社説)と言い出す始末だ。日経に限らずテレビ局を含め「親中派」メディアの無知さ、甘さには驚かされる。

参加すれば、「日本はAIIBに注文を出せる」のだろうか。中国はAIIBに50%を出資し、本部を北京に置き、総裁も元政府高官。マイナーな出資比率で発言するなら、理事会の場しかないはずだが、中国側の説明では理事会はほとんど開かず、総裁の専決で諸事を決めていく。総裁は重要事項については共産党中央委員会にうかがいを立てる。突き詰めると同委員会総書記の習近平国家主席が最終決定権限を持つ。つまり、AIIBとは中国政府の各部局と同じように、党の指令下にある。そのAIIBに日本代表が物申す、と言って通るはずはなく、北京では物笑いの種にされるだろう。

日経は盛んに、AIIBに参加しないと、アジアのインフラ建設プロジェクトで「日本企業は不利な扱いを受けるのではないか」と論じる。AIIBは世界一の外貨準備を持つ中国の信用力と国際金融センターロンドンの英国の参加で、有利な条件で資金調達できる、従って年間90兆~100兆円のアジアインフラ建設需要が本物になるという、思い込みによる。これも、中国の金融に無知なゆえの誤解である。

中国の外貨準備は2014年末で3兆8430億ドル(約461兆円)に上るが、同年6月に比べて1500億ドル(約18兆円)も減った。不動産市況や景気減速を背景に資本逃避に加速がかかっているためだ。外準を対外融資に役立てるどころか、中国当局は対外借り入れを増やして外準のこれ以上の縮小に歯止めをかけようと躍起となっている。

しかも、外準をおいそれと対外融資の財源に使えるはずはない。中国の金融制度は、中国人民銀行が流入する外貨に見合う人民元資金を発行する。外貨を取り崩そうとすれば人民元資金供給を減らさざるをえなくなる。すると国内経済にデフレ圧力がかかる。外準は見せ金にしか過ぎないのだ。

中国は14年9月末で1・8兆ドルの対外純債権を持ち、日本に次ぐが、外準を除くと、負債が資産を2・4兆ドルも上回る。実質的な中身からすれば、中国は債務大国であり、債権大国の日独とは大きく違う。

ロンドンなど国際金融市場にとって、中国は最大の融資先になっている。英国はお得意さんである中国のAIIB参加要請に応えたのだろうが、国際金融界はリスクに応じて高い金利を要求するだろう。巨額のインフラ・プロジェクト融資が北京主導でできるはずはない。 (産経新聞特別記者・田村秀男)



http://www.news-us.jp/article/416374992.html

◆インフラ銀…その正体は「共産党支配機関」 参加論を斬る 編集委員・田村秀男

2015.3.29 産経ニュース

 中国のあらゆる政府組織、中央銀行(中国人民銀行)とも軍と同じく、習近平党総書記・国家主席を頂点とする共産党中央の指令下にある。

 中国主導で設立準備が進められている「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」はどうか。中国は当初から資本金の50%出資を表明し、今後出資国が増えても40%以上のシェアを維持する構えだ。総裁は元政府高官、本部も北京、主要言語は中国語。AIIBは中国財政省というよりも、同省を支配する党中央の意思に左右されるだろう。今後、何が起きるか。

 例えば、党中央が必要と判断したら、北朝鮮のAIIB加盟がただちに決まり、同国向け低利融資が行われ、日本の経済制裁は事実上無力化するだろう。東南アジアや南アジアでの中国の軍艦が寄港する港湾設備がAIIB融資によって建設されることもありうる。そう、AIIB問題の本質は外交・安全保障であり、平和なインフラ融資話は表看板にすぎない。

 今、政府内部や産業界、日経新聞などメディアの一部で、AIIB出資論が出ている。党指令先組織に日本もカネを出せ、というブラックジョークである。

 反論もあるだろう。「AIIBは英独仏など欧州主要国も参加するではないか、党に支配されるはずはない」という具合に。世界銀行、アジア開発銀行、国際通貨基金(IMF)など既存の国際金融機関は主要出資国代表で理事会を構成し、運営されている。これに対し、楼継偉財政相は22日に北京で開いた国際会合で「西側諸国のルールが最適とはかぎらない」と強調した。同財政相らは世銀やアジア開銀などの理事会決定方式を否定し、トップダウンによる即断即決方式を示唆する。圧倒的な出資シェアを持つ中国の意図は、世銀やアジア開銀などと全く違う中国式の意思決定方式なのである。

 日経新聞は「AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ」(3月20日付社説)と論じたが、仮に日本がマイナーな出資比率で参加したところで、党中央政治局に伺いを立てるAIIB総裁に影響力を持てるはずはない。

 世界最大の外貨準備という「資力」を持つ中国が、アジアなどのインフラ建設資金融通を主導するのは理にかなっている、と思い込む向きもあるだろうが、とんでもない誤解である。

 中国の外準残高は2014年末で3兆8430億ドル(世界2位の日本は1兆2千億ドル)もあるが、実は半年間で約1500億ドルも減った。景気の低迷や不動産相場の下落の中で、資金流出が年間で4千億ドル以上に上るからである(本欄3月1日付参照)。無論、習近平政権による不正蓄財追及から逃れるために、一部党幹部らが裏ルートで資産を外に持ち出していることも影響している。



 外準は人民銀行による人民元資金発行の原資になっている。外準が減ると、中国経済が貧血症状を起こす。そこで、中国は急激な勢いで、国際金融市場から借り入れを増やしている。グラフは、最近の外準と海外の銀行からの借り入れの増減額の推移である。昨年9月末には、外準の増加額を借入額が上回った。12月末のデータはまだ公表されていないが、借り入れは資金流出分を補うためにも、かなり高水準になると推計される。このまま資金流出が止まらないと、ロンドンなど国際金融市場から借金を増やさないと、外準は数年間で半減してしまうだろう。しかも、人民元金融システムを維持するためにこれ以上減らすわけにいかないのだから、外準をアジアのインフラ整備のために活用すること自体、ありえない。「世界一の外貨資産」というのは、いわば見せ金にすぎないのだ。

 中国がAIIBを創立し、アジア地域全体でインフラ投資ブームを演出する背景には、自身の窮状を打開するためでもある。鉄道、港湾、道路などで需要を創出し、中国の過剰生産能力、余剰労働力を動員する。そのために必要な資金はAIIBの名義で国際金融市場から調達する。そして、中国主導の経済圏が拡大するにつれて、人民元が流通する領域を拡大して、人民元経済圏を構築する。各国が人民元に頼るようになれば、外交面での中国の影響力が格段に強化される。AIIBは党支配体制維持・強化のための先兵なのである。

 政府は参加するかどうか、6月までに最終的に決めるが、北京の思うつぼにはまりこんでよいはずはない。

http://www.sankei.com/economy/news/150329/ecn1503290012-n1.html