原題:血滴子/製作・監督:劉偉強(アンドリュー・ラウ)/製作:陳可辛(ピーター・チャン)
出演:黄暁明(ホァン・シャオミン)、阮經天(イーサン・ルァン)、余 文楽(ショーン・ユー)、王羽(ジミー・ウォング)、李宇春(クリス・リー)
2012年/113分
下調べなしで見に行ったのだが、たぶん往年のショウブラ映画「空飛ぶギロチン」あたりがネタになっていると思われる。この映画は見てないのだが、ピーター・チャンはかつて「刺馬(ブラッド・ブラザーズ)」を「投名状(ウォーロード)」にしてしまった前科があるので、正直、期待していなかった。たぶんつまんないと思うけど、黄暁明が出てるから見に行かなきゃ、という義務感から見た。
期待しなかったおかげで、案外悪くなかったと思えたが、人には薦めない。
以下、ネタバレです。
まず、血滴子こと空飛ぶギロチン。これがこれまで映画やドラマで見たものが牧歌的に思えるほど、ありえない進化を遂げていた。まあ面白いからいいや。で、冒頭、空飛ぶギロチンが飛びまくるアクションシーンはおおいに盛り上がる!
冷(イーサン・ルァン)たち血滴子部隊は、反清復明のリーダーというより宗教団体の教祖みたいな天狼(ホァン・シャオミン)を追い詰め逮捕するが、処刑直前、天狼の仲間の乱入によって天狼に逃げられる。しかも、血滴子の統領(ジミー・ウォング)の娘・穆森(クリス・リー)が天狼に人質にされてしまう。ここでは、ガンガン爆発は起こるわ、街中の建物が崩壊しまくるわのありえない大スペクタクル。そして、その後に残された死屍累々の惨状。人が死にすぎで、ちょっと気分がよろしくない。
血滴子部隊と乾隆帝の親衛隊長(?)・海都(ショーン・ユー)が、天狼を追っていく。エリートの海都と、影の存在であり兄弟として結束の固い血滴子のメンバーはそりが合わず……という展開かと思ったら、実は、冷は幼い頃に海都とともに乾隆帝の側近として選ばれ、血滴子部隊に送りこまれていたのだった! うう、暗いよ。
特筆すべきは(あくまで私にとって)、乾隆帝を演じる文章(ウェン・チャン)。まだ卒業したての頃に出演したドラマで偶然見て以来(これ)、ずーっと気になっていたのだ。2010年の映画「海洋天堂」で見た時はうれしかったし、チャウ・シンチー映画にも主演してしまうし、最近はすっかり売れっ子になった模様。めでたい。「フライング・ギロチン」では出番は少なく、せっかくの演技力もあまり披露できていないのは残念だが。
鉄砲隊を新設した乾隆帝は、なんと用済みになった血滴子部隊を抹殺しようとする。仲間が一人一人と殺されていくのだが、空飛ぶギロチンなしの彼らは案外よわっちい。しかも、鉄砲隊に空飛ぶギロチンで立ち向かっても、全然歯が立たない。何、この悲しすぎる展開は。
鉄砲隊を率いる海都は、冷と対立し、冷は鉄砲で胸をぶち抜かれたうえに高い崖から転がり落ちるのだが、もちろん主人公はこのくらいでは死なない。うまい具合に天狼に助けられ、つれてこられたのが、山に囲まれた桃源郷。というか、成功した人民公社みたいな村で、ここの描写がなんだか薄ら寒い。穆森は、天狼の身の上話を聞かされて、あっさり仲間になってしまっていたし。
しかし、ついに海都率いる鉄砲隊が村を襲撃。天狼は村人たちを逃がし、残った男達は時間稼ぎに戦おうとする。が、鉄砲どころか大量の大砲を撃ち込まれてはなすすべもなく。しかし、この時代にこんな大砲があったなら、アヘン戦争なんかどうなるのさ。なんて考えるのはよそう。
村人たちを護って戦おうとする穆森に、冷は、自分の空飛ぶギロチンを「最後の一つだ」と言って手渡す。いよいよお待ちかねのクライマックス、空飛ぶギロチンが飛び回るアクションシーンよ再び! と期待するでしょ、普通? ところがなんということか、空飛ぶギロチンを手に鉄砲隊に向かっていく穆森は、あっさりと鉄砲の的となり、鞘を抜くことすらできずにご臨終。さんざん気をもたせておいて、なんなのこれ……。
最後に、天狼は(私には)理由がよくわからないままに、冷に殺される道を選び、冷も(私には)何を考えているのかよくわからないまま、天狼の首を取る。これが空飛ぶギロチンの最後の出番。ああ。よくわからないけどたぶん、冷は再び乾隆帝に会いたかったんだろう。会って最後のセリフを直接言いたくて、そのためにも天狼を殺したのかな、と思ったんだけど、どうなんでしょ。
監督はアンドリュー・ラウだが、ピーター・チャン色の強い、エンターテイメントでありながら、何か言いたいことを入れ込もうとして、今ひとつうまくいかなかったような、微妙な映画になっていた。「ウォーロード」もそうだったなあ。物語はぐっとシンプル、アクションも今見るとしょぼいかもしれないけど、それでもオリジナルの「刺馬」のほうが圧倒的に面白かった。「空飛ぶギロチン」も見なきゃ。
血滴子の統領を演じるジミー・ウォングが地味すぎて、期待はずれだったのも残念。「捜査官X」の時みたいな破壊力を勝手に期待していたもので。かつて彼が主演した「片腕カンフーと空飛ぶギロチン」をまた見たくなった。ヘンテコな映画だけど、面白かったよな、これ。
出演:黄暁明(ホァン・シャオミン)、阮經天(イーサン・ルァン)、余 文楽(ショーン・ユー)、王羽(ジミー・ウォング)、李宇春(クリス・リー)
2012年/113分
下調べなしで見に行ったのだが、たぶん往年のショウブラ映画「空飛ぶギロチン」あたりがネタになっていると思われる。この映画は見てないのだが、ピーター・チャンはかつて「刺馬(ブラッド・ブラザーズ)」を「投名状(ウォーロード)」にしてしまった前科があるので、正直、期待していなかった。たぶんつまんないと思うけど、黄暁明が出てるから見に行かなきゃ、という義務感から見た。
期待しなかったおかげで、案外悪くなかったと思えたが、人には薦めない。
以下、ネタバレです。
まず、血滴子こと空飛ぶギロチン。これがこれまで映画やドラマで見たものが牧歌的に思えるほど、ありえない進化を遂げていた。まあ面白いからいいや。で、冒頭、空飛ぶギロチンが飛びまくるアクションシーンはおおいに盛り上がる!
冷(イーサン・ルァン)たち血滴子部隊は、反清復明のリーダーというより宗教団体の教祖みたいな天狼(ホァン・シャオミン)を追い詰め逮捕するが、処刑直前、天狼の仲間の乱入によって天狼に逃げられる。しかも、血滴子の統領(ジミー・ウォング)の娘・穆森(クリス・リー)が天狼に人質にされてしまう。ここでは、ガンガン爆発は起こるわ、街中の建物が崩壊しまくるわのありえない大スペクタクル。そして、その後に残された死屍累々の惨状。人が死にすぎで、ちょっと気分がよろしくない。
血滴子部隊と乾隆帝の親衛隊長(?)・海都(ショーン・ユー)が、天狼を追っていく。エリートの海都と、影の存在であり兄弟として結束の固い血滴子のメンバーはそりが合わず……という展開かと思ったら、実は、冷は幼い頃に海都とともに乾隆帝の側近として選ばれ、血滴子部隊に送りこまれていたのだった! うう、暗いよ。
特筆すべきは(あくまで私にとって)、乾隆帝を演じる文章(ウェン・チャン)。まだ卒業したての頃に出演したドラマで偶然見て以来(これ)、ずーっと気になっていたのだ。2010年の映画「海洋天堂」で見た時はうれしかったし、チャウ・シンチー映画にも主演してしまうし、最近はすっかり売れっ子になった模様。めでたい。「フライング・ギロチン」では出番は少なく、せっかくの演技力もあまり披露できていないのは残念だが。
鉄砲隊を新設した乾隆帝は、なんと用済みになった血滴子部隊を抹殺しようとする。仲間が一人一人と殺されていくのだが、空飛ぶギロチンなしの彼らは案外よわっちい。しかも、鉄砲隊に空飛ぶギロチンで立ち向かっても、全然歯が立たない。何、この悲しすぎる展開は。
鉄砲隊を率いる海都は、冷と対立し、冷は鉄砲で胸をぶち抜かれたうえに高い崖から転がり落ちるのだが、もちろん主人公はこのくらいでは死なない。うまい具合に天狼に助けられ、つれてこられたのが、山に囲まれた桃源郷。というか、成功した人民公社みたいな村で、ここの描写がなんだか薄ら寒い。穆森は、天狼の身の上話を聞かされて、あっさり仲間になってしまっていたし。
しかし、ついに海都率いる鉄砲隊が村を襲撃。天狼は村人たちを逃がし、残った男達は時間稼ぎに戦おうとする。が、鉄砲どころか大量の大砲を撃ち込まれてはなすすべもなく。しかし、この時代にこんな大砲があったなら、アヘン戦争なんかどうなるのさ。なんて考えるのはよそう。
村人たちを護って戦おうとする穆森に、冷は、自分の空飛ぶギロチンを「最後の一つだ」と言って手渡す。いよいよお待ちかねのクライマックス、空飛ぶギロチンが飛び回るアクションシーンよ再び! と期待するでしょ、普通? ところがなんということか、空飛ぶギロチンを手に鉄砲隊に向かっていく穆森は、あっさりと鉄砲の的となり、鞘を抜くことすらできずにご臨終。さんざん気をもたせておいて、なんなのこれ……。
最後に、天狼は(私には)理由がよくわからないままに、冷に殺される道を選び、冷も(私には)何を考えているのかよくわからないまま、天狼の首を取る。これが空飛ぶギロチンの最後の出番。ああ。よくわからないけどたぶん、冷は再び乾隆帝に会いたかったんだろう。会って最後のセリフを直接言いたくて、そのためにも天狼を殺したのかな、と思ったんだけど、どうなんでしょ。
監督はアンドリュー・ラウだが、ピーター・チャン色の強い、エンターテイメントでありながら、何か言いたいことを入れ込もうとして、今ひとつうまくいかなかったような、微妙な映画になっていた。「ウォーロード」もそうだったなあ。物語はぐっとシンプル、アクションも今見るとしょぼいかもしれないけど、それでもオリジナルの「刺馬」のほうが圧倒的に面白かった。「空飛ぶギロチン」も見なきゃ。
血滴子の統領を演じるジミー・ウォングが地味すぎて、期待はずれだったのも残念。「捜査官X」の時みたいな破壊力を勝手に期待していたもので。かつて彼が主演した「片腕カンフーと空飛ぶギロチン」をまた見たくなった。ヘンテコな映画だけど、面白かったよな、これ。