シニア留学風土記

リタイア後、日本を脱出して世界を散策したいと旅立つ。英語生活の勉強も兼ねている。その様子を書き綴る。

ブログを閉じる前に究極の異文化衝突の映画に巡りあう

2009-01-11 10:59:55 | Weblog
 なにごとか集中して考えている時は、無意識に探しているせいでもあるのか、書物でも何でも「巡りあう」ということがある。昨日、ものすごい映画に出会ってしまった。「Instinct」(邦題「ハーモニーベイの夜明け」)である。霊長類研究の博士がアフリカでゴリラ社会の生態研究をしているうちに行方不明になり、見つかった時は殺人罪を犯した重症精神病囚人として見つかる。アンソニー・ホプキンズが異文化衝突の狭間で精神が壊れかけた役を見事に演じている。1999年の映画だから10年前のものだ。

不都合が起きて、あと1日の記入でこのブログを閉じることにした。その決心をした途端、この映画(DVD)にめぐり合ったのだから偶然にしてもビックリである。

 人類学者で霊長類研究者の博士が出会う異文化は、二つの層があって。ゴリラ社会文化と、重罪刑務所(ハーモニーベイはその刑務所の名前)内の精神病患者社会である。類人猿ゴリラは人類に最も近く非常に知能が高く、社会を作って生きている。社会を作っているということは、人類とは違うが独自の文化があるということである。霊長類の研究者だからゴリラ社会を理解する為にゴリラ社会に接近し、「あること」をして徐々にゴリラ社会も受け入れる。「あること」というのは、人類の“余計な”文化を脱ぎ捨てて社会に必要な相手を思いやる心とか、弱いものを守るとか、危害を加えないとか異文化が出会ったときに互いに仲良くやっていける共通基盤だけを身に残して接近を試みる。そして、最後に完全に受け入れられた時に、人間の密猟者がゴリラ捕獲・殺害に来てしまってゴリラが殆ど殺される。その時にゴリラを守る為に防戦して密猟者を2人殺してしまう。最後に捕まってしまう博士をリーダーのゴリラが助けようとかばってガンに打たれて死ぬ。博士は、密猟者が博士のジャングルへの途中の道々で残してきた人類の“余計な”文化の成果、例えばカメラ、双眼鏡、伐採刀などを追跡してきたことが分かって、罪意識に囚われ心を閉ざす。

 重罪刑務所での逸話や精神鑑定シーンなどが主な映画であるが、鑑定する精神科医がこの話を徐々に彼の心を開く中で聞き出す。当初、新人ながらやり手でこれを出世の決め手にしようという精神科医が鑑定の場をコントロールするのは医者の方なのであるが、ある時点でコントロールを止め、むしろ博士が教師、精神科医が学生の関係逆転が起こる。そして患者犯罪者社会との人間関係でも、刑務所を管理する側との異文化理解と異文化衝突が2重3重に用意されているのである。手に汗を握ってしまった。

 ここで分かることは、A社会とB社会が出会った時に、自分らのやり方(文化)を疑いもなく押し付ける場合に衝突が起こるということである。ゴリラと人類では次元がかなり異なるので、むしろ全部自分の文化を脱ぎ捨てるぐらいでないと異文化理解は出来ぬということである。人類社会でいえば、主流の文化になじまない人々は精神病者として社会からはじき出され、文化内異文化(異端、異常など)を作らざるを得ないということである。衝撃的な映画であった。