◆書く/読む/喋る/考える◆

言葉の仕組みを暴きだす。ふるい言葉を葬り去り、あたらしい言葉を発見し、構成する。生涯の願いだ。

ぼくたちのクリスマス・キャロル/短編

2007-12-24 17:13:30 | 創作
  ◇


2045年、クリスマス・イヴ。天気予報があたって、東京は夕方から雪になった。ビルやブティックに明かりが灯されるごとに、青山通りにあふれていた車と人は少なくなっていく。会う暇もない彼女に贈ろうとクリスマス・プレゼントを探していた伸治は、通り沿いにあるコンビニの前で足を止めた。――なにか変だ。

駐車スペースに子どもたちがたむろっている。いや、そのこと自体が変だというわけじゃない。人口を膨張させつづけてきた東京が吐き出すゴミさながら、街にはホームレスがあふれ、生み捨てられた子どもたちで教会の孤児院は一杯になっている。この国はソニーの会長もトヨタの会長も寄付なんてしない不思議な国なので、子どもたちが集団をつくってコンビニのゴミ箱をあさる姿など、いまでは普通の光景だ。

だけど、なにか変だ。この一週間というもの、取材と記事の原稿書きでゆっくり寝ていられなかった伸治の頭が、にぶく回転を始めた。らしくない・・・。
うっすらと雪が降り積もっていく駐車スペースに、ひとクラス分の子どもたちが集まって座っているのに、無邪気なおしゃべりとか笑い声とか、騒々しさがないのだ。飲み食いもしていない。まるで互いに仲間じゃないみたいに、勝手にケータイの画面を眺めたり、何かメッセージを打ち込んだり、考えごとにふけったりしている。髪の毛についた雪を、だれも払おうとしない。

コンビニの壁に背中をあずけて、体育座りしていた男の子が立ち上がった。車止めのブロックに座っている、ピンクのパーカーを着た子に近づいていく。その子はビニール傘をさして、ノート・パソコンのモニターを睨んでいた。その横顔にケータイの画面を向けて、
「大佐!」と呼んだ。
大佐と呼ばれた子は、モニターから目を離さない。
「なに?」
「千葉のチームが、トラック3台キャッチ。こっちに向かってるって」
「プレゼントは?」
「たっぷり持った、だって!」
やっと顔をあげて、傘のしたで大佐はチョキを作った。
「新しいメールが飛んできたら知らせて」
「はい!」
もとの場所にもどろうとする男の子と、伸治の目があった。大佐も気がついて、伸治のほうを振りかえる。コンビニの窓から落ちる光が、パーカーの小さな背中を照らしている。顔はよく見えない。
「ぼくたちのこと、どうかしました?」
男の子だったのか。大佐という子はまだ声変わりをしていない。
伸治はその子に、営業用の微笑みを投げた。
「よかったら、どんな遊びをしているのか教えてくれないかな?」
「ほかの子どもたちと、メール交換してるだけです。大人もするでしょ?」
やっぱりどっか、らしくない・・・。
ぼやけた頭のなかで、数本のシナプスが明滅をくりかえした。
ケータイを開いて、伸治は大佐に訊いてみた。
「撮影してもいいですか?」
「写真は困りますね」
「なぜです?」
子どもたちの視線が伸治に集中する。立ち上がった5、6人の男の子が、ジャンパーやズボンのポケットにそっと手を入れた。
大佐も立ち上がって、開いたままの傘をノートの上に置いた。髪の毛についた雪を払った。
「警察?」
「ぼくは香川伸治というフリーのジャーナリストです。はじめまして。少し取材させてください」
ピンクのパーカーが近づいてくる。子どもたちの視線が、今度はかれに集まった。
街灯が投げる輪を慎重に避けているのか、顔がシルエットになっている。小学校6年生くらい? 大佐は、フードを被った。

パーカーの左胸には「Kill God !!」の赤いワッペンが縫いつけられている。
アイルランドのロック・バンドの名前だ――どこの音楽事務所にも属さないのに、若者たちには熱狂的な人気があるグループ。彼らのデビュー曲「Kill God !!」は、ネットを通じて瞬くうちに全世界に知れわたった。混迷を深めていく著作権の騒動に、新しい一石を投じた有名な事件でもある。

大佐は、パーカーの両ポケットに親指をつっこんだ。音が消えた雪の街に、ささやかな舌打ちが鳴り響く。数人の子どもたちが伸治の背後に忍び寄った。セーターのうえから羽織ったカーキ色のジャケッツの襟が、じっとりと汗ばんできた。
大佐が口を開く。生まれたての、ピンク色の舌がヒラヒラと見えた。
「ぼくたち、ここで遊んでいるだけの普通の子ども。ニュースなんか何もない。放置してください」
伸治の背後で、声変わりした男の子が叫ぶ。
「このまま帰したら、警察にチクられちゃうよ!」
「大人のやること、みんな一緒!」今度は女の子の声だ。
「待ってくれ!」伸治はあわてた。
「取材対象の、って君たちのことだけど、秘密は命がけで守る! 取材費もちゃんと払う! なにがいいかなあ・・・。そうだ、コンビニで好きなものを買っていい! そんな条件でどう!?」

わーい! あちこちで子どもたちが歓声をあげる。
フードの奥で、大佐の表情がくずれた。

「じゃ、こっちも条件だします。写真を撮ったら顔にモザイクかけて。今から、ぼくたちが地震を起こしても、大爆発をしかけても、ぜったい警察に連絡しない。守れる?」
「じ、地震? バクハツ?」
「たとえばの話」
「いい、でしょう。約束します。地震だって爆発だって、特ダネ間違いなしだ!」
「じゃ、そういうことで。みんなァ、何でも買っていいって!」
わぁぁぁぁーーーッ! コンビニのドア下半分だけが、まっ黒になった。店内の下半分だけ超満員になった。
読んでいたマンガを放り出した店員が、口と目をあんぐり開けている。
伸治もコンビニに飛び込んだ。
「この子たちが買った代金、ぼく払いますから!」
隅にみつけたATMに齧りついた。指が震えてパスワードを打ちまちがえる。クッソォ!
金額を打ち込むまえに、伸治は店内をふりかえった。無数の手が棚のうえに伸びている。
お菓子とおにぎり、コンビニ弁当の棚はすっかり空だ! 
唐揚げ棒とかブタマンとか入っていたケースは湯気だけになってるし!
いま、プリンとミルクの棚が空になりましたァ!
伸治はパネルに指タッチして、泣いた。――20万円。

「キッズ・ネットってサイトが、あふあふ、あるんでふ、アティティー!」
車止めに座る大佐は、ブタマンで口をふくらませた。
伸治は3メートル離れたコンビニのひさしの下に立っていた。
フードの中をしげしげ覗きこまないように、大佐から距離を置いたのだ。
「へえ、チューッ・・・知らなかったなあ。チュチュッ・・・どんなサイト?」
ぬる冷たいカフェオレでも、ストローで吸い上げればとってもおいしいと思う伸治だった。
「世界で一億人くらいの子どもたちが参加して、うまーい! SNSの一種です。
紹介がない人はアクセスできないんだ。しんちゃーん、まだブタマンある?」
へえ・・・チュッ。手帳を忘れた伸治は、ケータイのメモにキーワードだけを打ち込んでいく。ピコピコ。
「そこにね、クリスマス用のスレが立って。立てたのはフィンランドの子。すぐ全世界の子どもたちがコメントしはじめて、ありがとう! ・・・アクセス不能になっちゃった。パフゥ、ぼくたちがうまーい! クリスマス・キャロルっていう別のスレを立てた」
ほほう、チュゴーッ・・・(空か)。
そこって面白いの? ピコピコ。
「今年はね、自分たちのクリスマス・ツリーを作ろうじゃないかって。パフゥ」
えっ、自分たちの? ピコピコピコ。
「ング。・・・ぼくたち、自分のクリスマス・ツリーを知らないんです」
うーん、政治だね。政治問題だよ、それは。
「むずかしいことは、まだわからないけど。でも、今年は違うんだ。ぼくたちは協力して自分たちのクリスマス・ツリ-を、この東京にね、作るんです。全世界の子どもたちが成功を待ってくれています」
あ、ネット中継するんじゃない? そのシーンっていうか・・・。
「そうです。中継は名古屋チームが準備しています。東京と千葉、埼玉、栃木のチームでツリーを作ります、この青山に」
ふーん、面白そうだな。そのツリーって、どんな大きさ?
「最終的には、千代田区と渋谷区に、またがる計画」
なっ、なに!? そんなに大きな木は、どこにも生えていないだろ?
「それ以上、ぼく、お話できません。見せてあげるってしか、いえない」
けち。子どもたちがローソクを持って、あっちこっちで一斉に火を灯すとか・・・?
ヘリが必要だな。伸治もドキドキしてきた。愛のキャンドル・リング――記事のタイトルまで浮かんだ。
「余計なアドバイスかもだけど。ヘリ、いるんじゃ? 新聞社に頼もうよ。空撮するんだ、ゴジラみたいにね」
「実行は今日の夜、12時ジャスト。5分前なら新聞社に連絡してもいいです」
5分じゃ短すぎると伸治は訴えて、連絡は10分前にしていいと約束をかわした。

子どもたちは忙しくなった。ケ-タイやパソコンでメールをやり取りする回数がふえてきたし、プリンタがA4のペーパーを何枚も吐きだしている。なにかの資料か? 次々と子どもたちが湧いてきては、資料を受け取って闇のなかに散っていった。

でかいダンプが3台、青山通りのコンビニに横付けされた。
たむろっていた子どもたちが走りだす。
「プレゼントが届いた!」
「プレゼントって、花火なんです!」大佐が補足説明してくれる。
そんな会話から、千葉チームが到着したんだと知った。へぇ、花火もか。素敵なイヴになりそうだな。ここに彼女もいたら、どんなに暖かだろうと伸治は思った。いま、ニューヨークに出張・・・。

ダンプの荷台から大きなバッグが何個も降ろされた。車体のデコボコを伝って、チンパンジーみたいに子どもたちも降りてくる。
大佐たちはチームのメンバーと握手して、プリンタが吐きだしたばかりの資料を配る。それを受け取ると、降ろしたバッグを一個ずつ持って、かれらも雪の向こうに消えていった。

高速バスが次々とやってくる。降りてくるのは、騒々しい子どもたちばっかりだ。世界の国旗をふっている者もいる。
大佐が伸治のそばまで来た。身長は半分くらい、ってことは1m? フードのなかに見えた顔は意外に丸顔で、鼻筋が通っているように見えた。
「この子たち、今日のイベントをネットで知った観客だよ。貯めたお小遣いでバスをチャーターしてきたみたい。子ども、半額だし」
バスのナンバー・プレートを調べた。大阪、岡山、山形、青森、福岡!?
「付き添いって、だれもいないの? まだ自分じゃ歩けない子もいたみたいだけど」
「あはは。それって岡山のエリちゃん? 大丈夫、エリちゃんはアイドルだから」
「アイ、ドル・・・」
「まだ1歳だけど、予知能力があるって大切にされてる子」
「予知、ノーリョク・・・」
「きれいね、って今日のことをエリちゃんは予言したらしいです。成功は間違いない!」
「きれい、っていったの!?」
どーせ考えてもわかんない。
絶望にちかい希望を感じる伸治だった。
「大佐ァ! もうすぐ名古屋チームが到着するって!」

ブアァァーーン! やがて10トンくらいの大型トラックが何台もつらなって、青山通りを上ってきた。どの車にも、無数の豆電球がネオンサインみたいにキラキラ光ってる。
「あれって、築地行きの冷凍車じゃない? 鮮魚を積んだりする――」
「そうかも――」
大佐の丸顔が、少し曇った。
コンビニの前に先頭のトラックが停まった。鬼の顔を車体にペイントしている。
タオルを頭に巻いた運転手が降りてきて、車の後ろにまわり、雪でコーティングされた荷台のカンヌキをはずす。
グワッシャーン! ついたぜ坊主、はやく降りてくれ!
だれも降りてこない。運転手はブルッと震えて、運転席にもどった。

ギッ。荷台のドアがきしむ。
ギギギ。また、きしんで、ドアが大きく開いた。
スニーカーが覗く。ほそい足が何本もでてきた。
パタ、パタパタパタ。荷台から飛び降りた子どもたちは、道路にそのまま貼りついて動かない。そのうえに雪が降り積もる。
「救急班、出動でーすっ!」
「はーい!」
大佐の指示で、タンカをもった子どもたちが駆け寄っていく。
運ばれてきた子どもたちの髪の毛は、みんなツンと立っていた。
触ってみたら、ペキーンと折れた。ツララみたい。
「あったかいお茶! それとお湯でカップ・ラーメンを作ってあげて!」
子どもたちがコンビニに飛び込んでいった。
左右をちょっとつり上げた目で、大佐がじぃぃぃっと伸治の顔を見あげる。
はいはーい、伸治もあわててコンビニに飛び込んだ。

資料を受け取って、雪の青山に散っていく子どもたちを、伸治は見ていた。
「撮影チームもそろったね」
「やっと。これで完璧だー!」
大佐は、パーカーのフードを脱いだ。雪が止みそうだった。
想像していた以上に色が白い子で、鼻が高くて、耳が大きい。髪の毛は少し茶系。
ロシアが入ってる、多分――と伸治は直感した。
「あと、みんなの準備を待つだけ。キッズ・ネットに報告してきます」
「ぼくも見ていいですか? どんなサイトか知りたい!」

そこは、無数の掲示板が集まったサイトだった。まず国別のグループがある。音楽の話や、買ったゲームの話で盛り上がっている。そうそう、ここの特長だけど。たとえばオーストリーの子どもたちが何を話しているかって、日本人にも読めるのには驚いた。このサイト専用の翻訳ソフトが休みなく走っていて、どの国の言葉でも母国語で読めるし、書き込めるようになっている。なるほど、これなら全世界の子どもたちが繋がれるわけだ。

これが自分たちのスレだと、大佐はクリスマス・キャロルの掲示板を見せた。
うーん、すごい! 同じタイトルの掲示板が、もう10枚目だ。あとの9枚は、コメント数が1000を超えたのでクローズドになっている。それ以上書き込むと重たすぎるのだ。
10枚目の掲示板に大佐は書き込んでいく。
「すべてのメンバーがそろった! いまツリーを準備中!」
すぐレスがついた。
「じゃ、もうすぐね。わたしたちのクリスマス!」
「この子、ナンシーだよ。南アフリカからアクセスしてるんだって」
その後の1分間で、大佐のコメントに200個くらいレスがついた。
恐ろしいくらいのスピードで掲示板はどんどん流れていく。目が回ってきた。
視線をはずして、伸治は大佐に訊いた。
「あのペーパーって、なに? ほらプリンタで作って、みんなに渡してたの」
「ああ、これ?」
パーカーのポケットから、4つに折った紙を引っぱりだしてきた。
伸治は開いてみた。――青山から外苑、代々木公園あたりの地図!
×印が一杯ついている。ワォォーッ。これがツリーの位置なのか! この×印の一個あたりに、何人の子どもたちが忙しく働いているんだろう。と、想像するのは楽しかった。こんな国でも、じつは未来があるんじゃないのか・・・。

そのとき、赤とピンクと黄色のケータイを首からぶら下げた女の子が走ってきた。
「大佐ァ! すべてのチームが準備完了でーす!」
「サンクス、ミカちゃん!」
大佐が両手でVサインをつくって微笑んだ。自分のケータイをひらいて、待ち受け画面を覗いている。
「えと・・・、いま11時45分。香川さん、あと5分したら新聞社に連絡してもいいです。15分後には、ぼくたちのメリクリだ!」
駐車スペースの真ん中まで行って、大佐はみんなに指示を出し始めた。
「じゃあ、きょーちゃん。そろそろキッズ・ネットにメッセージして。ゴーッて。ゆーちゃんは名古屋の撮影チームに連絡。危ないから、あんまり近づきすぎないように。ほかのみんなは観客の子どもたちにメールだ。地図の×印から、20メートルは離れてくださいって」

伸治は5分後、新聞社に連絡し始めた。
朝日新聞は、デスクが電話に出た。
「あはーん? 子どもたちのキャンドル・サービスぅ? なの、ありふれてるしー。ウチじゃ使わないね、またどうぞ!」
クソったれ! 何がアハーンだ。眠たい声、出しやがって!

毎日新聞は、清掃会社の社員が電話に出た。
「すんません、だれもいないんですよ」
「だれか残ってるはずでしょ? どこに行ったんですか!」
「え? どこって・・・、銀座かなあ。そんな話してたし。わかんないけど」
社員がいない新聞社なんてゴミだ!

共同通信社。
「おう香川くん! ひさしぶりだなあ、元気?」
いつも陽気なデスク、鳥飼さんの声だ。
かいつまんで、子どもたちのことを話す。
「面白そうじゃないの。よし、ヘリを飛ばそう。ほかの社にも教えた?」
これも、そのまま話す。
「わははは、チンカス新聞社め! もういいじゃないか、ウチだけの特ダネってことで。オレも飛ぶよ」
「じゃ、よろしくっ」
もう時間がない。ヘリは一機だけでもいいじゃないか、と伸治は考えた。
あの鳥飼さんなら、空撮に失敗するはずがない。

子どもたちが騒ぎだした。大佐の指示で、ケータイの音声連絡をオープンにしたんだ。みんなに向けて大佐が両手を振った。そこを撮影チームのひとりが動画に撮っている。
「そろそろ1分前です。カウント・ダウン、はじめまーす!」 

60! 59! 58!

子どもたちは大声を張り上げて数字を逆に読んでいく。伸治までゾクゾクしてきた。
なんだか外苑や代々木公園のほうからも、1オクターブ高い声が聞こえてくるような気がする。星が瞬きだした空に、ヘリの爆音が聞こえた。

10! 9! 8!・・・、
3! 2! 1!

ゼロ!!

ゴォーッ! 突然、東京の夜空が真っ白になった。
街中が赤く燃え上がる。
なにぃぃっ! いや、燃えているのは街じゃない。木だ。樹木だ。
ここからでも外苑のイチョウが一本残らず燃え上がっているのが見える。
炎に囲まれた美術館のドームが真っ赤に燃えている、ように見える。
消防車のサイレンが鳴りだした。パトカーのサイレンも混じっている。

リリリリリ・・・♪
さっきから伸治のケータイは鳴りっぱなしだった。

「はい?」
「香川くんか、鳥飼だ! なんだ、これは!?」
「ぼくも詳しい計画は知らなかったんですよ。これだったのか!」
「しかし美しい! 上から見ると、炎で描いたナスカの地上絵だ」 
「モノになりますかね?」
「もちろんだ。バッチリ絵になるし、いまから大騒ぎが始まるだろう。そら、消防車の赤いライトが見える。歴史に残る巨大なクリスマス・ツリーだ。これを親もいない子どもたちが計画してやったなんて、ほとんど信じられねーよ。特ダネだ、特級の特ダネだよ、香川くん! じゃ、また後でな」

ワァァァーーーッ! 青山通りは、歓声をあげる子どもたちであふれかえっている。
好き勝手なステップで踊っている。歌っている。

メリー・クリスマス! メリー・クリスマス! 
ぼくたちのクリスマスだね! 
そうさ、生まれてはじめての!

冬の夜空に花火があがった。
何回も、何回も、咲いては散っていく。

〈了〉

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