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車止めピロー:旧館

  理阿弥の 題詠blog投稿 および 選歌・鑑賞など

久哲さんのうた

2009年11月11日 | 八首選 - 題詠2009
久哲さんの歌から8首(前半はこちら)。


094:彼方
個々にある林檎は箱に詰められて最終駅の先にも彼方

074:肩
壁際にふたりは影を貼り付けて そして微熱の肩先と月

048:逢
虹になるつもりの虹に逢う場所の交差点から閉じる冬枯れ

041:越
ガムテープで緊縛されて諦念の殉教者めく引越荷物

039:広
手を繋ぐことで失う どの空もこんなに広いことがおかしい

027:既
皆既食は等しく燻すノストラダムス後の僕等と戦後の父も

022:職
夏蜜柑    転がってゆくワックスがまだ乾かない職員通路

003:助
背の低い助産婦歩く道筋の冬の桜の身の内の朱



分かるようで分からない、分からないみたいで
やっぱり分からなかったりもする(笑)、久哲さんの歌の数々。
でもこの企画が終わったとき、強く印象に残っていたり、
好きだなぁって最終的に思ったりするのは、結局久哲さんの
ような作風の歌だったりするのかもしれないと思うと、ちょっとくやしい気がする。
今のところ、自分が理屈でしか歌を詠めていないってことを、
突きつけられちゃうからだと思うんだけど。

一首一首の歌世界をこじ開けたり、そしてこじ開けられたりしてるうちに、
選歌にはけっこう時間がかかってしまいました。
一番のお気に入りは39番。

駒沢直さんのうた

2009年11月11日 | 八首選 - 題詠2009
駒沢直さんの歌から8首。


096:マイナス
マイナスの体温残しキッチンに水飲みにいく真夜中の君は

074:肩
つややかな肩に唇押し当てて冷と温とが混ざり合う夜

055:式
いまはもう君の葬式出なくてもいいやと思う 一人梨剥く

052:縄
白黒の世界がそんなに好きですか たぶん君とは来ない沖縄

048:逢
「逢う」という字面ときめくやましさに新幹線はスピードを増す

033:冠
夏が逝く たぶん君とはこれきりと 思い出にするコロナの王冠

021:くちばし
くちばしであなたの腕をなぞる夜 このつるつるを知る人のいて

006:水玉
蜘蛛の巣に水玉連なる美しさ 無意味の意味がありすぎる怖さ



「君」との様々な時間。駒沢直さんの歌。
肉感的といってもいいような、実のある手触りがします。

52番。
黒か白か。善か悪か。好きか嫌いか。あたしか彼女か。
グレーゾーンを許してもらえない男たちの呟き。
あ~縛られたくない・・・

55番。
一緒にいたときは、剥いてあげたり剥いてもらったり。
ふたりで食べた梨やいろいろ。
時間差で訪れる、本当の訣別。

Ni-Cdさんのうた

2009年11月10日 | 八首選 - 題詠2009
Ni-Cdさんの歌から8首。


096:マイナス
寝台にマイナスふたつイコールにならないことはひしひしと 夜

063:ゆらり
鉄塔がゆらりとかしぎ夕焼けにふたりの街は炭化されゆく

054:首
首筋に生えたほくろを数えあう われらは熱を帯びてゆく雨

053:妊娠
中指で妊娠線をなぞられてろくがつむいかの蛞蝓になる

042:クリック
クリックのたびに手と手を重ねたる講師につけるあだ名で迷う

035:ロンドン
好きな子が浮いてくるまで川べりで僕ら歌おうロンドン橋を

14:煮
煮え立った雨に閉じ込められていて君の乳房の息が激しい

12:達
矛盾なら沢山あるさでも君は達筆過ぎて言い返せない



生半な解釈など跳ね除ける、Ni-Cdさんの歌世界。
一度読み手に喚起させたイメージを、
別方向から照射するとはどういうことなのか、を考えさせられました。

お気に入りは96番。

soraさんのうた

2009年11月10日 | 八首選 - 題詠2009
soraさんの歌から8首。


018:格差
享年九十一享年二十三 命に、流す涙に、格差はなくも

048:逢
竹林の日照雨(さばえ)の中に立ちてみるふと逢えさうな気がする午後は

055:式
地図上のリアス式海岸丹念に指でなぞればつるつるの海

067:フルート
フルートに添えたる指の細きこと言葉にしてはならぬと思つた

074:肩
なで肩に細き首のせ佇つ人のうしろ姿をじつと見てゐる

088:編
下駄箱の隅に直立不動なる履き主を失ひし編み上げブーツ

095:卓
「おはよう 晴れたね」一晩中ぽつんと置かれた卓上の塩に

100:好
空の高さに驚きながら「透明」好きな色を問はれて答ふ



soraさんの百首。

55番。
思い出しながら触っても、そこには自分の知っている海と
あまりにちがう感触があるのみ。

74番。
同じ年のころの後姿にみる面影。

95番。
このような破調歌が、圧倒的な力を持って迫りくるのは、
やはり定型を踏まえたうえで詠まれているからで、
私たち読み手は、定型に嵌りきらない溢れる想いや、
こころの解れなどをそこに見ることになる。
返ってこないと判っていながら、食卓へとかけるおはよう。
そしてまたぽつり、晴れたね。
この如何ともしがたい定型に「整えられなさ」こそが、
真実としてこちらの胸をうつ一首を支えている。

青野ことりさんのうた

2009年11月09日 | 八首選 - 題詠2009
青野ことりさんの歌から8首。


084:河
鉄橋を渡るときには席を立つ 一級河川に夕日が散るよ

074:肩
いまごろはどこを旅しているのだろう 柔らかかったわたくしの肩

067:フルート
唇をふれた刹那の冷たさに思わず置いたフルート 君の

062:坂
ベランダは音だけ花火 たまらずに坂の途中へサンダルでいく

041:越
寝過ごして慌てふためく心地して春春夏を追い越さないで

040:すみれ
ぼんやりと空はすみれに みおろせば瞬くほどに営みの窓

035:ロンドン
垂れ込める霧の重さを両肩に ロンドン 道は眠りにつづく

024:天ぷら
絵に描いたような晴天ぷらすちっくめいた景色だ 雲ひとつない



青野ことりさんの歌を読むと、詩ってやっぱり
理屈じゃないんだよなぁ、と改めて感じます。
自分の中のノスタルジックな部分を、優しく刺激される。
特徴的な一字空け、言葉の組合せなどが寄与していることは
間違いのないところと思いますが、そんな分析も野暮・・・かな。

24番。
ビルの二階にあるような、薄暗い喫茶店から外を見ると、
まるで書割みたいだな、と思うような青空に会うことがあります。
地上をうごめく人たちが、それまでと違ったふうに見えたりして。
すべてが作り物めいて、現実感を失っていくんだけど、
なぜかそれが心地よかったりする、そんなプラスチックめいた景色。

暮夜 宴さんのうた

2009年11月08日 | 八首選 - 題詠2009
暮夜 宴さんの歌から8首(前半はこちら)。


095:卓
祈るよう食卓に置くアメジストセージ笑顔がこぼれますよう

079:恥
晴れた日は恥部を諸々さらけだし空の青さに染め上げておく

060:引退
引退を余儀なくされた古時計いちばん下の仔ヤギが眠る

050:災
災いを転じて福田くんとした紫陽花よりも淡い想い出

044:わさび
泣いたのはみんなわさびのせいだからもうかっぱ寿司なんか行かない

042:クリック
離婚するために象牙の実印をワンクリックで買うこどもの日

037:藤
藤棚のしたに零れたひかりだけあつめてあそぶ春のてのひら

001:笑
傍らの愛があまりに真っ当で恥ずかしそうに夜が笑った



一瞬、一瞬のこころの動きが赤裸々に、
新鮮に切り取られている暮夜 宴さんの百首。

37番。
穏やかな光が、藤棚にさえぎられてポツポツとまだらになっている。
それを面白がっている光景って、想像はできても、
こんなふうに一首にまとめあげるのって、とても難しい。
キラキラした映像を、ぱっと思い起こさせる結句がお見事。
春のてのひら。好きです。

富田林薫さんのうた

2009年11月08日 | 八首選 - 題詠2009
富田林薫さんの歌から8首。


080:午後
午後、風になりましょう。よろしければ夏の麦わら帽子飛ばして

079:恥
蝉の声きこえる図書館に目が合えば逸らす恥じらいの夏の始まり

078:アンコール
いつまでもアンコール待ちつづけゆっくりと舞台下手に同化する

064:宮
宮崎のひとが紙袋抱えてやってきて次々取り出す完熟マンゴー

063:ゆらり
ゆらりゆれている人に教えてあげる誰もいない公園のブランコ

062:坂
坂の途中あるいは空を見上げたかった俯き加減の角度をかえる

048:逢
お気に入りのサングラスなくして出逢うほんとうの空にあふれるひかり

035:ロンドン
すこしだけ高いところの風をさがしてロンドンバスの二階にすわる



短歌の韻律をこえたところにある、富田林薫さんのうた。
破調歌にとまどいつつも、ひかれる世界。
現代短歌の、ひとつの潮流と言えるのかな。
お気に入りは62番。

夢雪さんのうた

2009年11月07日 | 八首選 - 題詠2009
夢雪さんの歌から8首。


008:飾
男子校我が親友に想い寄せ雪で飾った禁忌の果実

017:解
古代神邪悪な神の呼ぶ声に我が魂は解(ほど)けてゆけり

026:コンビニ
深夜4時無駄に明るいコンビニで拾った少年小鳥のようで

053:妊娠
妊娠をすることのなき少年を何度も愛して肌馴染みをり

054:首
騎士の首毬の代わりに蹴り遊ぶ姫君たちの嬌声響く

062:坂
「坂道を駆け下りいつか空をとぶ」見習い天使の君の口癖

064:宮
王宮で出逢った少年美麗なり王の稚児の驕慢な顔

092:夕焼け
夕焼けに染まった空に赤い羽根散り散りになる紅蓮の天使



幻想・耽美的世界を詠う夢雪さんの短歌。

92番。
朱に染まる鱗雲が広がっている、そんなイメージが浮かびました。
かならず消えて行く定めの天使たち。

64番。
こういう世界を読んだとき、思い浮かぶのはゲルマン系の
美少年なんですよね。「ベニスに死す」に出てきたような。
笑顔の裏に魔性を感じさせるのは何故だろう。

吉里さんのうた

2009年11月07日 | 八首選 - 題詠2009
吉里さんの歌から8首。


092:夕焼け
誘う(いざなう)は夕焼け空の美しさ家路辿れと母を想えと

088:編
微笑を日々の暮らしに編みこんで 流れる時間留めて飾る

076:住
散歩行き昔住んでた家の前そっと耳澄まし今をうかがう

069:隅
片隅で心寄せ合う家族にも光が当たる日々でと祈る

035:ロンドン
店の名を何を思ってロンドンに不思議に思う下町のサテン

023:シャツ
唐突と開襟シャツの君の胸 思い出したり故郷の道

004:ひだまり
ひだまりのぬくさをそっと手ですくい頬で感じる春の日まぢか

002:一日
一日の朝の時間のひと時がキラキラすれば勝つ予感する



偶然に題詠blogと出会ったという吉里さん。
ちょうど100人目の完走者です。
私も今年の春に作歌に行き詰って、なんとなく
「題詠」で検索して初めてこの企画をみつけたので、
境遇は似ているかもしれないですね。

お気に入りは2番です。一日の始まりの、心のもちよう。

遥遥さんのうた

2009年11月06日 | 八首選 - 題詠2009
遥遥さんの歌から8首。


093:鼻
たわむれに我は何かと今日も問い「鼻」という名の小説を読む

089:テスト
まっすぐに人類の死が道をなしこれはテストですこれはテストです

083:憂鬱
遠い国ミサイルが飛ぶぼちぼちと明るい憂鬱に手を洗おうか

081:早
早送りされる社会の中にいて花が散るのは春の夜の風

063:ゆらり
花一つ手を伸ばしたら届くよなゆらりゆらりとゆらりゆらりと

055:式
桜散る春の空気の成分は湿式製法手のひらにのせ

022:職
職場から帰る夜道の桜花つぼみは堅し靴音を聞く

006:水玉
起立する胸元にある水玉の適正比率考えており



選ばせていただいたお歌、半分が花の歌であることに
気付きました。夜風に吹かれる桜、あるいは春の終りに
舞い散る花をいちどでも観てしまえば、だれだって
その美しさに取り付かれてしまう。
日本人の体の中には、花という言葉に共鳴する
音叉みたいなものが隠されてるんでしょうね、きっと。

一番のお気に入りは81番。

磯野カヅオさんのうた

2009年11月06日 | 八首選 - 題詠2009
磯野カヅオさんの歌から8首。


097:断
にはたづみ遣る瀬もあらず降りなづむこの断腸の思ひ流せよ

079:恥
落花生食む手も止まず恥多き生涯書かれし本再読す

074:肩
オクターブ差のある声で「靴が鳴る」交互に歌ふ肩車かな

067:フルート
衣鉢継ぐ新米の僧よどみなくフルート吹きし頃もありしか

041:越
水秤たつたひとつを携へておほよそびとは国境を越ゆ

032:世界
フラクタル曲線終はりますやうに あなたのゐない世界はさびし

016:Uターン
たはむれにショッピングカート弄ふ子のげになめらかにUターンせり

008:飾
仲春の窓辺に飾る似顔絵はこの先ずつとコート着るらし



32番。
どこまでも、どこまでいっても繰り返されるのか、そんな恐ろしさ。
限り無い相似形の生活にケリをつけられるのは、自分だけ。
判っているのに、そこに安住してしまいそうな心地よさもあり。

67番。
お坊さんの来歴って、気になるものの一つですよね。
おそらく、百人百様なのでしょうけどそれを、
フルートを吹きこなす姿でもって代表させたところ、
絶妙と思います。
ここでの「僧」は、虚無僧とは限らないですけど、
横笛を縦笛に持ち替えたところが、頭によぎったり(笑)。

74番。
こんなふうに詠めるようになるまでには、私にはあと十年は要るんじゃないかな。
この情景、「父」「子」といった単語を使わずに詠むのは自分には難しい。
習い覚えたばかりの童謡を歌う子と、唱和する父。
とてもシンプルで、優しいまなざしの歌。大好きです。


歌の最初の音を、「いろは」で詠みはじめるという条件を設けられた、
磯野カヅオさん。
全百首を「カ」音で詠みはじめた迦里迦さんもそうなのですが、
そんな縛りを気付かせないほど、お二人とも一首一首の完成度が高いです。
お二人に共通するのが、文語の扱いの流麗さ。
ことばの引出しが多いほど、表現に余裕が出てくるのだと思います。
私も読んで詠んで読んで詠んで、頭の中で表現のパンデミックが起こるまで、よまなければ。

目標とさせていただく歌人が、また一人増えました。

キヨさんのうた

2009年11月05日 | 八首選 - 題詠2009
キヨさんの歌から8首。


092:夕焼け
大阪の口縄坂での夕焼けが世界で一番のんびり沈むよ

074:肩
肩ならば怒られたりはしないだろう 疲れたあなたに愛押し付ける

072:瀬戸
恋人になれるかどうかの瀬戸際でバオバブの芽が成長する庭

051:言い訳
この部屋で言い訳していた バス停に最終バスが停まった気配

044:わさび
もう一度「ふにゃあ」って言わせるためだけにわさびを求めて長野に行くこと

039:広
こんなにも広いベッドで(ゆるせない)君が毎晩ねむりにつくこと

005:調
浮気とか勝手にドラクエ進めたりとかしてないか今から調べる

004:ひだまり
酔っている君のほっぺの熱とかをひだまりに近い位置づけにしている



5番。
浮気、とっても切実。ドラクエ、意外と切実。
この両者を扱う手つきが、偏ってないところが面白い一首。
もちろん、ホントに調べたいのは浮気の方なんだけど。
ドラクエは、まあ調べるためのおまけ、言い訳。
しかしどちらも、二人の仲を破滅させるには十分な
破壊力を秘めていそう。

92番。
時間は、それぞれにそれぞれのスピードで流れる。
圧倒的に主観的に。これはもう確かなこと。
私の場合は・・・熱~いお湯で半身浴してるとき、
一番のんびり時間が進みます(笑)

珠弾さんのうた

2009年11月04日 | 八首選 - 題詠2009
珠弾さんの歌から8首。


097:断
酒断ちを課して眠りについた冬 春告げ鳥の声で目覚める

086:符
満月の夜にあなたと出会うまで割り符を持ったままで馬なり

084:河
おとといの河北新報よんでいる 届いた荷物のそこに故里

082:源
あの日からわたしの心は揺れている 震源地に咲く花の名前は

066:角
四角(コーナー)先頭そのままそのままあ あらんかぎりの あらんかぎりを

063:ゆらり
母の背にゆらりおぶさるみどりごとアイコンタクトのエスカレーター

007:ランチ
遠乗りの予定は雨に流されてしまったけれどランチボックス

002:一日
自分史にゴシック体で印される一日がある 私事変



66番。
以前にも書きましたが、競馬って、なんて詩歌と相性がいいんでしょう。
二句と三句、四句と結句のシンプルなリフレインが、
走るためだけに力をそそぐ、その純粋な姿を象徴しているかのよう。
そしてそれはまるごと、彼らを応援する観客の姿にも置き換えられる。
あらんかぎりの疾走。あらんかぎりの歓声。
怠けるということとは無縁な、力強い能力だけの世界。
だからこそ人々は惹きつけられる。

84番。
新聞の購読者数は、今後もどんどん下がってゆくのでしょうが、
こういう光景は見られなくなるんですかね・・・。
ネットショッピングの梱包材を使いまわすのが、
デフォになるんだろうなぁ。

都季さんのうた

2009年11月03日 | 八首選 - 題詠2009
都季さんの歌から8首。


089:テスト
ぶつかった視線をいかに処理するかチェックテストは瞬くあいだに

070:CD
あの曲が流れて君が溢れ出すCDの裏側の虹から

066:角
角が立つくらいに固く泡立てた生クリームに葬る痛み

054:首
首筋を撫でてゆく風生ぬるくラムネ瓶透かし世界が弾ける

053:妊娠
妊娠とか結婚だとか程遠くトイカメラ持って海に出かける

033:冠
コカ・コーラの王冠はまだ宝物 王様にはもうなれないけれど

024:天ぷら
不意打ちで本音に触れて思い出すアイスクリームの天ぷらのこと

016:Uターン
Uターンラッシュは未だ他人事で自立の意味を考えている



33番。
私がまだとても幼いころ、コカ・コーラの王冠の裏に、
スターウォーズのキャラクターがプリントされていたことがあって、
ご近所の宴会に参加しては、大人たちの間をまわって、
王冠を集めたことを思い出しました。
そのコレクションはちょっとした自慢だったなぁ。
映画そのものは観たことなかったのに。

24番。
表面は温かで、中は・・・

16番。
帰省の計画を立てるのはお父さん。
運転するのもお父さん。
苦労するのはいつだって、お父さん。

月下燕さんのうた

2009年11月03日 | 八首選 - 題詠2009
月下燕さんの歌から8首。


097:断
blogにて切断面を見せつける昔(今でも)好きだった人

084:河
見てこれが機械の身体広すぎる銀河に声は響くことなく

076:住
きっとあなたは白髪も似合う新しい住民票の発行を待つ

073:マスク
意味なんか生き延びてから考えろ象の鼻にもマスクをかけて

067:フルート
雨のなか一度交わした口づけが冷たかったことフルートを吹く

022:職
雑草に名があろうともそれはそれ住所不定無職の夕べ

014:煮
肉じゃががなすすべもなく煮くずれる立つべきでないキッチンにいて

001:笑
メールから(笑)をぬいてみてきみの笑顔の意味がわかった



67番。
四句目までが、過去のひとつの出来事。結句が現在時制。
関連を明確に述べないで、二つの事象をただ並列しておく。
前者が、フルートを吹いている作中主体の経験・記憶なんだけど、
その唇のひやりとした金属的な感覚が、読み手にしっかり伝わってきます。

こういう詠み方は、私の理想とするものの一つです。
なかなかこんなふうにスマートに行かないのが悩みですけど。
一度きり、交わしたキス。
おそらくその相手は、いま彼の手に届くところにはいない。
強くつながることが出来るのは、フルートを吹くときだけ・・・。