手際のよい合戦をやって大勝利を得て後、おごりの心が出てきて、敵を侮り、不行儀をすることは必ずあるものである。こんなにして滅んだ家は昔から多い(北条氏綱)。
◇読んで思ったこと:事業に成功すると「自分の実力」「自分は優れている」と考えがちで、そうなると人を見下したり問題を直視せず楽観視するようになりがちである。人を見下せば他者の意見を取り入れることができず、自分一人の能力で切り盛りするしかなくなって、能力の限界にぶつかるだろう。問題を直視せず楽観視していれば、より慎重に入念に準備してきた者に打ち負かされるであろう。一つの成功で自己過信しないように注意したい。松下幸之助のいうように、「成功したら周りのおかげ、失敗したら自分に原因を求める」という態度を持っていたい。
成功が続くといつしかおごり高ぶり、おごり高ぶると反省や準備を軽視して、いずれ大きな失敗や挫折を経験することになる。しかし自分が「おごり高ぶる」という状態に陥っているということを、自分自身で気づくのは難しい。利害関係を持たない人で、自分に対して客観的に率直な意見を述べてくれる相談相手を身近に持っておきたい。
◇引用元:桑田忠親「武士の家訓」講談社学術文庫