砂時計

人生は砂時計のようなもの。砂時計は、一粒の砂の落下から始まり、最後の一粒の砂が下の空間に着地したとき終焉となる。

お前は誰だ!

2017-04-11 00:11:22 | 捨石 拾遺(すていし しゅうい)日記
一緒に住んでいる夫の名前も忘れてしまった
83歳になる白髪春田桜さんは
畳2枚分を合せたよりも 大きな鏡の前に向かって
「お前は誰だ!」怒鳴っていた。
「どうしたの?」と尋ねたら
「わたしが話しかけても、この婆~は黙っているだけで話もしない」
「だから怒ったのさ」
「そしたら婆~怖い顔をしたので、また怒ったのさ」

「お前は誰だ!」と叫んだ桜さんの声を聞いたとき ハッとした。
それは
「お前は誰だ!」と放った桜さんの言葉は
こだまとなって「お前は誰だ」と
自分に帰ってきた。
「お前(自分)は何者か?」
と問われると 言葉が詰まってしまった。
「捨石拾遺(すていし しゅうい)です」と答えても
自分が何者なのか 説明したことにはならない。
自分は どんな人間なのか
他者に対しどう思われているかと
他者の眼を気にしすぎるけれど
意外と自分のことがわかっていないのが自分。
だから「お前は誰だ!」と尋ねられたときは
躊躇(ちゅうちょ)してしまう。

認知症老人という鏡を通し
自分は誰なのか。
他者の眼を気にせず
朝風呂のとき「自分は何者のだ~」
鏡に向かって叫んでみた。

他者のことはよく見える。
自分のことは自分が一番知っている、と
見えていない自分なのに。
自分のことは自分がよくわかっている、と
強がりを言っても、結局はわかってはいない。
自分という人間
大きな鏡の前に立ち
鏡に映った自分の顔は
たるみと浮腫みで肌艶はない。
「これが俺の顔か」なのかと
自分に思わず呟いてしまった。
いまは朝風呂のあと
顔をマッサージしクリームを塗っている。





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