ちょっと用事があったから
少し早めに職場を出て少し早めのお迎え
保育園の門をくぐると園庭を挟んだ保育室から叫び声
けんちゃーん!ママきたよぉ~!
保育室に着くまで
けんちゃんがテラスに出るまで
何人ものこどもが叫ぶ
そして帰りの用意をするけんちゃんより早く
何人ものこども達が
かあちゃんを出迎えてくれる
あやとりをしながらのこともあるし、
けんだま持ったままのこともある
今日はコマまわしをしていたらしい
けんちゃんの先生は男性で
だからかどうかは分からないけど
それは男女差なのか個性なのか
そういうのを語るのって難しい世の中だけど
こどもたちは
昔で言うならすごく面倒見のいい近所のオニイチャン的
そろそろオジサン的年齢に近付きつつある
その先生が大好き
いつもの時間なら
延長のこどもたちは保育室で延長の先生のお話を聞く時間で
テラスに出ているのは延長のないこどもだけ
だから、
今日みたいに少し早めの時は
大騒ぎ
けんちゃんのママー
声の方を見るとあやとりの紐をかけた手を差し出している
あら、あやとりなんてできるの?
上手にできるんだねぇ
かあちゃんの目に映るのはニマァ~とした顔
かわいい
どうしてこんなにかわいいんだろう
そしてやっとテラスに出てきたけんちゃんは
ポーカーフェイス
遺伝子のせいなのか
こんな時には表情はない
だってまわりにいっぱいこどもたちがいて
かあちゃんの前には何人ものこどもたちが
かあちゃんを見上げている
けんちゃんは黙ってちらっと見て
そして靴入れから靴を持って来て
かあちゃんに一番近いところに割り込んで
そしてかあちゃんの足元に靴を置く
先生がやってきて今日のちょっとしたこと
教えてくれて
挨拶をしてから門に向かう
ひとりで走って門に向かうときもあるし
手をつないでゆっくり歩くときもある
いきなりしゃべりまくるときもあるし
とぼとぼと歩くときもある
保育園での何かを話しているとき
その話を聞いてるのは楽しい
聞いて欲しいって思われることは幸せ
むちゃくちゃな筋道で出てくる言葉を
かあちゃんは頭の中で組み立て直す
車で出掛けた先で用事を済ませて帰り道
車でテレビの音を聞いていると天気予報をしている
明日は寒いらしい
今日はポカポカで4月下旬だったのが、
明日の午後は2月に逆戻り
そんなことを聞いていたらけんちゃんの声
ほっかいどーのちかくのけんはさぁー
北海道の近くの県?
車の運転しながらけんちゃんの話を聞くのって
神経を使う
安全運転に支障を感じる
でも、聞きたい
うん
北海道の近くの県がどうしたの?
ほっかいどーのちかくのけんはさー
ほっかいどーのせいでさむいよねぇ
ふーん、そうなの?
うん、ほっかいどーがさむいからさぁー
ちかくのけんはさむいよ
そうなのか
かあちゃんの頭の中には
凍えそうに身を縮めながら
北海道の方を恨めしそうに見つめる
青森県の人々って絵が浮かんだ