ちと日が経ってしもうたが、前回のブログの続きでございます。
この日の午前中は、武蔵野市立吉祥寺美術館「出久根育 展 チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」を観ましたのじゃ。
https://www.musashino.or.jp/museum/1002006/1003349/1005926.html
(ロビーのみ写真撮影可)
昨年、銀座の教文館で2回開催された出久根育の個展で観た『ぼくのサビンカ』『チェコの十二カ月 おとぎの国に暮らす』『チェコの猫の12ヶ月カレンダー2024』の原画がとても良かったゆえ、本展が楽しみだったのじゃ。
本展は、出久根のデビュー作から初期の銅版画、代表的なシリーズ、今回初公開となる2024年刊行の新作まで、約200点の原画が展示されておりまする。
構成は以下の通り。気になった作品もリスト順に。
【1:新たな季節を迎えて】(チェコの十二ヵ月 愛猫との生活)
この章はロビー展示で写真撮影OKなのじゃ。嬉しいのぅ。
『チェコの十二ヵ月 -おとぎの国に暮らす-』2017年
この本は昨年読んだが、2002年にプラハに移住した出久根が、チェコの年中行事や暮らしを紹介したエッセイ集で、たいそう興味深かったのじゃ。
原画8点の展示。
4点をば。
《ザビヤチカ(豚を屠る)》(2月)テンペラ、紙
《マソプスト(謝肉祭)》(2月)テンペラ、紙
《ヴェリコノッツェ(復活祭)》(3月末か4月)インク、紙
《ぱにぽうとの魔女》(パーレニー・チャロデイニッツェ〈魔女焼き〉4月)テンペラ、紙
『ぼくのサビンカ』2023年 ガッシュ、紙
チェコの詩人・児童文学作家ラデック・マリーの文を、出久根育が初めて翻訳を手掛け、絵を描いた絵本。
原画10点の展示。再会できて嬉しゅうござります。
5点をば。
男の子とサビンカが可愛いのでアップも。
『ぼくのサビンカ』ラフスケッチほか。
展示台も可愛く、イラスト入り手描きコメントも楽しい。
チェコのお写真。サビンカとマクルカもおる。
「出久根育の“チェコの紙あそび”」
どれも可愛くてツボじゃ。
ワークショップもあったそうで、参加したかったのぅ(対象が小学生以下なので無理w)
【2:絵本作家としての出発点】
(東京からチェコへ・・・恩師ドゥシャン・カーライの影響と“四角頭の子どもたち”)
《上昇する欲望Ⅲ》1997年 エッチング・雁皮紙コラージュ、紙
初期の作品を初めて観たが、今と作風がずいぶん違ってビックリ。
こちらは鳥の羽根のように大きな腕をのばす少女(ちょっと怖い)と、その上を飛ぶ黒い鳥。
『あめふらし』2001年/2013年 油彩、板
グリム兄弟の怖~い物語の原画が9点。原画も怖いけど素晴らしい。
《作品番号29》
赤と黒の対比が鮮やか。頭から花を生やした王女、赤いドレスの上に3匹の黒猫、鎖に繋いだカメレオンも連れておる。
『わたしたちの帽子』2005年/新装版2024年
作:高楼方子。原画7点の展示。
主人公・育ちゃんのバルーンスカートは、出久根が当時よく着ていたものだとか。
《作品番号56》テンペラ・油彩、板に石膏
他の6点は紙に鉛筆で額装じゃが、こちらはケースに入れて展示。
『ワニ -ジャングルの憂鬱 草原の無関心-』2004年 ガッシュ、紙
作:梨木香歩。原画5点。ジャングルもワニもグリーンの色彩で綺麗。
【3:中東欧の民話の世界】
(『マーシャと白い鳥』が魅せる、チェコという国で育まれた幻想的で絵画的な美しさ)
『命の水 チェコの民話集』2017年 テンペラ、紙
8つの民話の原画が12点。それぞれの簡単なあらすじもありがたい。
《命の水》
狼にまたがった王子が、12の頭を持つドラゴンを退治。狼がツボ。
『マーシャと白い鳥』2005年 テンペラ・油彩、板に石膏
再話:ミハイル・ブラートフ 文:出久根育。原画10点。
白い鳥たちが飛ぶ姿も迫力。
《作品番号87》
不思議な鳥めいた魔女の家が面白く、凝視してしもうた。
『もりのあさ』2024年刊行予定 テンペラ・ガッシュ、紙
作:出久根育。原画7点。
子どもと森の動物たちがブルーを基調に描かれておりまする。
《わたしはしっているの》2023年 テンペラ・ガッシュ、紙
本展の為に描かれた作品。本展のメインビジュアルじゃよ。
【4:チェコと日本がつながるとき】
(「こうさぎ」シリーズと、絵本作家・出久根育が魅せる現在)
『もりのおとぶくろ』2010年 ガッシュ、紙
作:わたりむつこ 原画6点の展示。
「こうさぎ」シリーズの出発点。擬人化されお洒落な洋服を着たうさぎたちが可愛い。
『こうさぎとおちばおくりのうた』2021年 ガッシュ、紙
作:わたりむつこ 原画8点の展示。
「こうさぎ」シリーズ最後の作品。秋の風景も素敵。
ガラスケースの中にも「こうさぎ」シリーズのデッサンが、イラスト入り手描きコメントと共に展示。
『こどもべやのよる』2024年2月刊行 ガッシュ、紙
文:出久根育 原画10点の展示。
出久根が4姉妹で過ごした“こどもべや”が舞台。見守る月がとても優しい。
初期作品から最新作までたいそう観応えあり、楽しゅうござりました。
会期は3月3日まで。入館料300円。ご興味ある方はぜひ。
わたくしも再訪する所存にござります。
同時開催の2つの記念室の展示も観ましたのじゃ。
★浜口陽三記念室「黒をよく知る」
https://www.musashino.or.jp/museum/1002006/1003366/1005388.html
1950年代の初期作品を中心に25点の展示。
わたくしの好きなメゾチント《うさぎ》(1954年の葉っぱをかじるウサギのほう)も展示。
★萩原英雄記念室「版画人生の証 ~52枚の年賀状~」
https://www.musashino.or.jp/museum/1002006/1003367/1005389.html
1954年から2005年までの52枚の年賀状が展示され、お気に入りを見つけるのも楽しゅうござります。
会期はどちらも3月3日まで。
★おまけ話
Albizia(アルビジア)のフォトブックvol.29が届いたぞよ。
毎号頂いておるが、今回は大好きなグリーンがテーマで嬉しさ倍増じゃ。
ちなみにわたくしが着けておるのは、丁度3年前にAlbiziaで購入した、アズライトマラカイト×水晶のダブレットストーンのリングじゃよ。