(620字)
一般的には有名なA駅前は意外と栄えていないと思っている。すぐ近くの私鉄や地下鉄駅のB、C駅の方がずっと人の流れも多いし、店も色々とあると友人に伝える。彼はこちらの話を聴いていない。無表情に正面を向いているだけなので間違ったことを口にしたか、言い方が不味かったかと何かを失敗した気分になり、再び彼の顔をそっと窺う。
A駅構内を出ると目の前は視界を妨げるくらいの高さの花壇が広がっていた。地面からの高さは2mくらい、横幅は数十mあるようだ。
ふと視線を上へやると焦げ茶色の旧いビルが見え、屋上の少し下あたりに『デザイン学校』との名称をロゴにかたどったピンク色の文字。中は事務所みたいな造りで雑然としていて、学生の姿は見えない。コピー機の前を一人の男性が行ったり来たりと忙しそう。
信号を渡ろうと、足を一歩進め終えたそのときに中年男性に声を掛けられ、自分は宇都宮あたりに住んでいると突然告げられる。話を聴いてみれば、大学が自分の家だということなのだとか。信号を渡ったところでいい話を教えてあげるとの耳打ちがあり、男性の携帯電話番号をメモするようにと話を継ぐ。怪しく感じるが、番号を聞くだけならまあいいかと画面を見せてもらうことにする。
自分の電話帳に登録が済むと、目の前の人物の名前として打ち込んだはずの「箱崎」が「箱龍」に勝手に切り替わる。この名前は以前に登録した怪しい男リストの中の一人だと気がつく。やはりそうだったか、と。
一般的には有名なA駅前は意外と栄えていないと思っている。すぐ近くの私鉄や地下鉄駅のB、C駅の方がずっと人の流れも多いし、店も色々とあると友人に伝える。彼はこちらの話を聴いていない。無表情に正面を向いているだけなので間違ったことを口にしたか、言い方が不味かったかと何かを失敗した気分になり、再び彼の顔をそっと窺う。
A駅構内を出ると目の前は視界を妨げるくらいの高さの花壇が広がっていた。地面からの高さは2mくらい、横幅は数十mあるようだ。
ふと視線を上へやると焦げ茶色の旧いビルが見え、屋上の少し下あたりに『デザイン学校』との名称をロゴにかたどったピンク色の文字。中は事務所みたいな造りで雑然としていて、学生の姿は見えない。コピー機の前を一人の男性が行ったり来たりと忙しそう。
信号を渡ろうと、足を一歩進め終えたそのときに中年男性に声を掛けられ、自分は宇都宮あたりに住んでいると突然告げられる。話を聴いてみれば、大学が自分の家だということなのだとか。信号を渡ったところでいい話を教えてあげるとの耳打ちがあり、男性の携帯電話番号をメモするようにと話を継ぐ。怪しく感じるが、番号を聞くだけならまあいいかと画面を見せてもらうことにする。
自分の電話帳に登録が済むと、目の前の人物の名前として打ち込んだはずの「箱崎」が「箱龍」に勝手に切り替わる。この名前は以前に登録した怪しい男リストの中の一人だと気がつく。やはりそうだったか、と。