(814字)
いじめ撲滅アンケートが学校で採られる。一応書いたが提出期限を過ぎていたために出すのが億劫になり止めてしまう。どこか普段使われない薄暗い教室の一角にあるスチール棚の上段の引き出しに隠すことにする。
高校同級生W来が空手部を作らないかと誘ってくる。もう高校二年生だし、お前は野球部だろうとあしらうように返事をするが、もう野球はやらないとあっさり答えるのだった。
どうにも渋った気持ちのままで彼と一緒に暫く廊下を歩いていると、正面玄関付近にまで近づいたところで随分と人が多いことに気がつく。こちらに向かってぶつかりそうな感じに避ける素振りも全く見せず、ぎりぎりのタイミングでさっとよけて振り返らずに行ってしまう、微妙にデザインの異なる制服を着ている男子生徒。少し顔を俯かせ、視線はこちらを眺め値踏みするつもりか、どうやら新入生のようだ。
さらに下駄箱に近づくと、赤いジャージを来た二人の女子学生が「汗臭い」だの「薄暗いし、ダサい感じ」だのと文句を垂れつつ、やはりこちらに向かってくる。男子がほとんどの高校なんてそんなもんだと口が開きかけるが、やはり余計なことは言わないでいいやと女の子たちの横を通りすぎる。
続いて、体育会系の部活にでも入りそうな体格のいい坊主頭の新入生とすれ違う時には、「押忍」と声をかけてみると相手も少し驚いた顔で、それでいて一瞬のちニヤリとした顔で「押忍」
後ろからは先程のいじめアンケートを集計していた男子生徒が現れ、彼と目が合うと廊下の隅に連れて行かれてしまうのだった。あれを提出してくれと十数分前に収めた泣き顔や、大げさな懇願やら随分な義憤やらこちらに対する無限責任追及をするかの勢いで迫るのだ。どこに入れてしまったのか忘れていたし、提出期限も過ぎているのに面倒なやつだと感じながらも、どうやらそれを口にすることは許されないのだろうからと、すっかり弱った気持ちで何とか思い出そうとしていた。
いじめ撲滅アンケートが学校で採られる。一応書いたが提出期限を過ぎていたために出すのが億劫になり止めてしまう。どこか普段使われない薄暗い教室の一角にあるスチール棚の上段の引き出しに隠すことにする。
高校同級生W来が空手部を作らないかと誘ってくる。もう高校二年生だし、お前は野球部だろうとあしらうように返事をするが、もう野球はやらないとあっさり答えるのだった。
どうにも渋った気持ちのままで彼と一緒に暫く廊下を歩いていると、正面玄関付近にまで近づいたところで随分と人が多いことに気がつく。こちらに向かってぶつかりそうな感じに避ける素振りも全く見せず、ぎりぎりのタイミングでさっとよけて振り返らずに行ってしまう、微妙にデザインの異なる制服を着ている男子生徒。少し顔を俯かせ、視線はこちらを眺め値踏みするつもりか、どうやら新入生のようだ。
さらに下駄箱に近づくと、赤いジャージを来た二人の女子学生が「汗臭い」だの「薄暗いし、ダサい感じ」だのと文句を垂れつつ、やはりこちらに向かってくる。男子がほとんどの高校なんてそんなもんだと口が開きかけるが、やはり余計なことは言わないでいいやと女の子たちの横を通りすぎる。
続いて、体育会系の部活にでも入りそうな体格のいい坊主頭の新入生とすれ違う時には、「押忍」と声をかけてみると相手も少し驚いた顔で、それでいて一瞬のちニヤリとした顔で「押忍」
後ろからは先程のいじめアンケートを集計していた男子生徒が現れ、彼と目が合うと廊下の隅に連れて行かれてしまうのだった。あれを提出してくれと十数分前に収めた泣き顔や、大げさな懇願やら随分な義憤やらこちらに対する無限責任追及をするかの勢いで迫るのだ。どこに入れてしまったのか忘れていたし、提出期限も過ぎているのに面倒なやつだと感じながらも、どうやらそれを口にすることは許されないのだろうからと、すっかり弱った気持ちで何とか思い出そうとしていた。