Kaz Laboratory  (KazLab)

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Kazが読んだ本、考えたこと、日々の記録

デザイン思考が世界を変える ― イノベーションを導く新しい考え方

2010-10-23 15:31:17 | 経営戦略・仕事スキル・キャリア開発
デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方 (ハヤカワ新書juice)
ティム ブラウン
早川書房


appleの初代マウスやPDAのpalm Vをデザインしたことで世界的に著名なデザインコンサルティング会社IDEOのトップ、ティム・ブラウン氏による著。

高度に情報化された我々の社会はますますデザインを必要としている。
それは工業的な意匠に留まらず、ビジネスにおける思考そのものにおいて。
実際IDEOの活動領域はIT、ファーストフードから、医療、大学にまで及ぶ。

この本の中でも、一見”デザイン”とは無縁そうな医療業界におけるデザイン思考の例として、米国メイヨークリニックが既存の病院施設を使いながら、患者の新たな治療アプローチを考案、視覚化、プロトタイプ化する環境を築きあげられるかといった事例や製薬業界が特定薬剤を患者が服用ルールを守るためのアプローチに取り組む事例などを紹介している。

日本の大学受験、高校受験制度にどっぷり浸かった僕たちは、国語・英語・数学・理科・社会のみを主要科目と捉え、音楽・美術・保健体育を軽視しがちだ。
だから、無味無臭の文字と数字とグラフが並んだ書類を作ったり、眺めて議論することが「仕事」だと思い込んでる。

そんな環境で”デザイン”なんて言葉やアイデアを、ビジネス上のコンテクストに織り込むのは勇気がいる。
でも、それが必要な時代だ。
だってデザインを考えることは「人間中心」に考えることなんだから。
iPhoneにおけるappleの成功一つとってもデザインの必要性は明らか。そんな証左を挙げながら、そ上司や同僚を巻き込んでしまおう。

(なんで啓蒙調になってるんだ、オレ 笑)


(以下引用)

 イノベーションを技術に偏った視点でとらえるのは、従来と比べて持続可能とはいえなくなってきている。また、既存の戦略から選ぶだけの経営哲学では、国内外の進展に圧倒されてしまうだろう。そこで、新たな選択肢が必要になる。個人と社会全体のニーズのバランスを取る新たな製品。医療、貧困、教育といった世界的な課題に取り組む新たなアイデア。重大な差別化を生み出し、それに触発された人々に目的意識を芽生えさせる新たな戦略。われわれの抱える問題が、問題に取り組むクリエイティブな人材と比べてこれほど多い時代は、今までなかっただろう。
いわゆる”ブレインストーミング”セッションに参加したり、ちょっとしたコツやトリックを学んだりしている野心的なイノベーターは確かに存在している。しかし、そういった付け焼刃の手段では、新製品、新サービス、新戦略が送りだされることはほとんどないのだ。

 したがってわれわれには、イノベーションに対する新しいアプローチが必要だ。強力で、効果的で、幅広く利用できるアプローチ。ビジネスや社会のあらゆる面に適用できるアプローチ。個人やチームが画期的なアイデアを生み出して、実行し、影響を与えられるアプローチ。このようなアプローチを提供するのが本書のテーマである「デザイン思考」なのだ。

 デザイン思考では、デザイナーが長きにわたって培ってきたスキルを利用する。デザイナーたちは、ビジネスの実務的な制約の中で、人々のニーズと利用可能な技術的資源を結び付けようと模索してきた。つまり人間的に望ましい物事と、技術的・経済的に実行可能な物事を結び付けることで、今日のような製品を生み出してきたのだ。しかしデザイン思考はそれだけにとどまらない。自分がデザイナーだと自覚したこともない人々にデザイナーの道具を手渡し、その道具をより幅広い問題に適用するのが、デザイン思考の目的なのだ。

デザイン思考では、誰もが持ってはいるものの、従来の問題解決方法では軽視されてきた能力を利用する。デザイン思考は、人間中心であるというだけでなく、人間本質そのものといえる。直感で判断する能力。パターンを見分ける能力。機能性だけではなく感情的な価値を持つアイデアを生み出す能力。単語や記号以外の媒体で自分自身を発信する能力。それを重視するのがデザイン思考だ。
(P10-12)

サイクリック宇宙論

2010-10-17 08:55:43 | 宇宙・地球・環境・生命科学
サイクリック宇宙論―ビッグバン・モデルを超える究極の理論
ポール J.スタインハート,ニール・トゥロック
早川書房


原題に“ENDLESS UNIVERSE Beyond the Big Bang-Rewriting Cosmic History”とある通り、現在、宇宙の起源として主流のビッグバン理論=インフレーションモデルでなく、ビッグバンは1兆年くらいで循環的に起こるというモデルを提起する代替理論。

ひも理論を発展させたM理論に基づくサイクリック宇宙論では、「われわれの宇宙ともう一つの宇宙という二つの「ブレーンワールド」が、4番目の空間次元方向に離れて存在していて、それらがおよそ1兆年ごとに衝突と反発を繰り返す。それとともにブレーンワールド自体は、どんどん膨張を続ける。そしてそのサイクルには上限がなく、もしかしたら無限の過去から続いているかもしれない」(P302、訳者あとがき)というモデルを提起する。

はっきり言えば、難しくてインフレーション理論への反証など全然理解できなかった。(2200円もしたハードカバーなのに。 笑)

しかし以前から僕も素人ながらに「ビッグバン宇宙論の描像が聖書の記述に気味悪いほど似ている」(P202)と思っていた。
ビッグバンが起きる以前には何があったのという問いには誰も答えられないし、そこには創造主をおいた方がしっくりくるからだ。
実際に1950年にローマ教皇は全司教に対し、以下のような通達を発したそうだ。
「何世紀にもわたって発展してきた今日の科学は、原初の『光あれ』の神々しい瞬間の証拠を手にし、そのとき物質とともに無から光と放射の海がほとばしり、元素が分かれてかき混ぜられ、何百万という銀河が形成されたことを明らかにした。」(P203)

これに比べると、サイクリック宇宙論は東洋哲学的な輪廻転生を想起させる。
ビッグバンは何度も繰り返す、地球が出来て、生物がいることもモデルに組み込まれたひとつの運動なのだと。
冒頭のべたように、まだまだ異端に近いモデルらしいが、今後の研究発展で僕らを(出来れば平易にわかりやすく 笑)ワクワクさせてほしいものだ。



最高の胃腸科肛門科ブログ

2010-10-15 11:57:25 | 健康・ワークライフバランス
患者のために書いた最高の胃腸科肛門科ブログ (mag2libro)
大西 達也
パレード



サービスの提供者と利用者の間の情報格差というのは悩ましい問題である。 一般的な商行為、例えば自転車をスポーツとして本格的に始めたいということであれば、ネットリテラシーの発達した今、まったくのド素人であっても文献のいくつかとガイド本、さらに愛好家のブログなどを読めば、周囲に詳しい人がいなくても、楽しむために何を準備すべきかはつかめる。そのうえで、信頼できるプロショップを探せばよいのだ。 しかし、利用するサービスが専門的で高度であればあるほど、利用者の理解できる内容には限度があり、最終的にサービスの提供者にお任せするしかないという構図は残る。医療サービスはその典型だ。 医療サービスの場合、患者ごとに症状や体質が異なるので、グルマンで教えてくれるレストランがいつも外れがなくて信頼おける人が「あの病院いいよ」といってもそこは別問題。 有名医大付属のブランドネームの大病院は設備やストックされた知見・技術は素晴らしくても、施術を担当してくれるのが経験不測の新人医では何とも不安である。(実際、2年前の胃の内視鏡検査では結構悲しい思いをした。) まあ、そんな思いを抱きつつ、一昨日僕なりにこの先生は間違いなかろうと胃と大腸の内視鏡検査とポリープが発見された場合の切除手術をお願いしたのが、この本の著者の大西先生。

”戦果”は大腸ポリープ3個切除と、収縮性胃炎+ピロリ菌。
最新の設備とほんの一握りの医師しかできないという軸保持短縮法というゴッドハンドで痛みもなく、短時間に終了。
どうやら僕はポリープが出来やすい体質。これからもお世話になりますと挨拶してきた。

内視鏡検査って健康保険効かないけど、絶対やっておいたほうがいい。
毎月5000円払ってガン保険入るのと比較すれば、検査代はトントンか安いくらいだしね。



なぜ君は絶望と戦えたのか

2010-10-15 10:57:07 | 人間・家族・教育
なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日 (新潮文庫 か 41-2)
門田 隆将
新潮社



ちょうどこの事件発生が子供が生まれる頃であったこと、自分にとって見知った土地であったこと。
大学で法律学を専攻して目的刑や応報刑の概念などについて学んでいたものの、それがいかに表層的であったかをこの裁判を通じて思い知らされたこと。
ひとりの個人の想いが社会を突き動かすことを知ったこと。

色んな想いが混ざってこの事件には関心を持っていて、その一連の流れについてのドキュメントであるこの本には、この本で初めて知る事実や背景、主人公の感情の動きに深い感動と涙なしに読めなかった。


今日は手術明けで自宅安静にしていて、この本を原作にしたWOWOW制作のドラマを見た。概ね原作通りで読んだ内容が蘇る。たくさん見ているわけではないがスポンサーや視聴率に左右されないWOWOW制作のドラマは佳作が多いと思う。


KITANO par KITANO 北野武による「たけし」

2010-10-15 10:49:13 | 人間・家族・教育
Kitano par Kitano 北野武による「たけし」
北野武,ミシェル・テマン
早川書房


10代の頃、当時漫才師として絶頂だったビートたけしの本は何冊か読んだ。
それから20年が過ぎ、ビートたけし生死を彷徨う事故から復活し、映画監督北野武として世界から称賛を浴びる存在となり日本を代表する文化人となった。にもかかわらず相変わらず日本のブラウン管のなかでは道化を演じている(笑)
読み手の僕も20年経って、大学を卒業し、仕事と家族をもち、人生の半ばにいる。その立場から北野武の語る自らの生い立ち、栄光と挫折、家族や恋人、映画、メディアの現状、日本の文化や政治について語ったこの本、しかも「なんとなくわかるでしょ」の同邦でなく、フランスの読み手に向かって語られた「たけし」は沁みる。


俺には生きる意味が必要。どうやって、どんな方向性かはよくわかんないけど、まだ前に進んでいきたい、もっと映画を撮りたい。アーティストって基本的に、名が知れて人気が出るとさ、ずっとそこに留まっていたいって夢見るようになるものでしょ。でも俺は、芸術家っていうのは、不評の作品を作って、たとえ見捨てられたとしても、その時代の美的感覚の“スタンダード”を反映していなくても、自分を自由に表現するべきだと思うの。
俺にとって、ストーリーを作ってそれを大画面に表現していく作業っていうのは、ある意味、現実の人生では叶えられないことを実現させてくれる、ひとつの方法なんだよね。ときどき思うんだけど、人生って“厳しい真実”であって、映画ってのは、“永遠”っていうさ、ほっとさせる感覚を体験させてくれるものなんだよね。
結果的には、ホンダに入らなくてよかったのかなって思ってる。みんながやってるように、普通に仕事するサラリーマンになるのは無理だったから。ロボットみたいなサラリーマンになることはね。アーティストでいるのが、かならずしも快適なわけじゃないけど、人を笑わせるのは-しかも自己破壊的なやり方でね-これは俺にとっては必然なの。人を楽しませるときだけ、自分のあらゆる能力を駆使できる。25歳でフランス座に入ったとき、お笑い芸人には他の仕事では持ち得ない社会的な立場があるなって気づいたの。つまり世の中のバカげたことについてさ、コメディアンなら思ったことをさ、なんでも言えるんだよ。(P354)



人類が知っていることすべての短い歴史

2010-10-15 10:17:57 | 宇宙・地球・環境・生命科学
人類が知っていることすべての短い歴史
ビル ブライソン
日本放送出版協会


10のマイナス何十乗秒という時間に起きたビッグバン、DNAの螺旋構造の発見、プレートテクトニクス、地球の軌道とニアミスする小惑星、氷河期と人類誕生・・・テストのために丸暗記しただけの用語や数字の奥には、驚くべき物語が隠されていた。
宇宙の誕生、ダークマター、恐竜の消滅、小惑星、海底、地球の中心のマグマ・・・タイトル通り人類が知っている科学史にして、壮大な知的エンターテイメント。学校の教科書やテーマごとの新書で断片的に知っていた事象も、こうして包括的に読んでみると全く違った世界が見えてくる。何とラッキーにラッキーを重ねた自然の事象のうえに僕たちは立っているのだろう。


地球はまるでご都合主義の絵空事のように、太陽からの「正しい」距離に位置している。金星は地球より4000万キロ太陽に近いだけだ。その熱が到達する時間差は、わずかに2分。大きさと構成要素において、金星は地球に非常に似ている。太陽系が出来て間もない頃、金星は地球よりほんの少し暖かいだけで、おそらく海洋も有していたらしい。しかしその数度の余分の熱のため、表面の水を保つことができなくなり、金星は息が出来なくなった。表面の温度は摂氏470度と鉛も溶かす高温。表面の気圧は地球の90倍、人体に耐えられる限度を超えている。逆に遠ざかるほうの旅では、火星が冷ややかに証明しているように、暑さではなく寒さが問題になる。火星もかつてはずっと快適な場所だったが、凍てつく荒野になり果てた。(P337-338)

世界の海はどこもかしこも豊かなわけではない。自然のままで潤沢とみなせる海域は全体の10分の1以下だ。オーストラリアは3万キロ以上の海岸線と2300万平方キロの領海をもち、ほかのどの国よりも海に恵まれているにも関わらず、漁獲高では世界の50位以内に入っていない。(P382)

わたしたち人類は、自分たちが支配的な種であることを当然のように受け止めている。そのため、人類が存在するのは、地球外の爆発やその他の偶然の出来事がぴったりのタイミングで起こったにすぎないという事実を、なかなか理解できない。(P468)

すべての生き物は、たったひとつの原案にもとづいて入念に作りあげられている。わたしたち人類は、単にそれが増強されただけの存在だ。わたしたちひとりひとりが、38億年にわたる、調整、適合、修正、神の手による修繕などの黴臭い記録だ。特筆すべきは、わたしたちが野菜や果物とさえも密に結びついている点だろう。バナナの内部の化学作用は、根本的に、あなたの内部で発生する化学作用と同じだ。(P554)

ここにきわめて重大な問題がある。それは運命と呼んでも、神意と呼んでも、なんと呼んでもかまわないが、わたしたちはすでにそういう役割を担う存在として選ばれているということだ。周囲を見るかぎり、わたしたちがいちばんの適任者というほかない。唯一の適任者かもしれない。恐ろしいことに、人類は現時点における宇宙の最高の創造物になれると同時に、宇宙に最悪の悪夢をもたらす存在になれる。(P633)