かつて村上春樹がエッセイ「辺境・近況」のなかで、「讃岐でうどんを食べ歩いて人生が変わった」と書いた。それは、トスカーナで過ごしたときにワインに目覚めたインパクトに近いものがあると。
香川にいって讃岐うどんを食べないというのは、イタリアを訪れて美味しいパスタやワインを口にしないくらい人生の損失かもしれない。
そんな意気込みで食べた、讃岐うどん3軒。
■ あなぶき屋
四国高速道SAにある手打ちの讃岐うどん屋。
定食やラーメンはSAで一般的な食券方式だが、うどんだけは街中の店同様セルフ(笑)
すでに昼飯時であった徳島鳴門から名物「鯛めし」に目もくれずに香川入りして最初に食べた讃岐うどん。打ち立ての麺(小)を自分で温めて、出汁をかけていただく。ショウガと出汁の風味が讃岐にきたなぁという感じ。空腹は最良の調味料というが、讃岐うどんのスタンダードという感じでフツーに美味しいです。
屋号の「あなぶき」とは四国のゼネコン、穴吹工務店のもの。道路公団民営化をビジネスチャンスとして色々やってますねー。
■ むさし(琴平町)
こんぴら参りする前に、腹ごしらえ(?)の一杯。
実は名店「みやたけ」に向かったのだが臨時休業でした。
古民家風の落ち着いたインテリアで、器のなかに美しく整えられた「ざるうどん」をいただく。
麺がツヤツヤと輝いています。コシがあって、麺のエッジが効いていて、いいのど越しです。
ゆっくりしたときに再訪できたら、天麩羅でビールと日本酒いただいて、そのあとの〆にうどんといきたいですね。そういうのが似合いそうな店です。
■ がもう(坂出市)
前日のうちに松山まで移動するはずが、予定変更。
楽天トラベルでとったはずの道後温泉の宿が僕のミスで取れてなかった。(汗&笑)
あわててナビと携帯を駆使して宿を取る。このへんのハプニングがすっかりロードムービーっぽい。
おかげで出会えたのが、坂出の田んぼの真ん中にある「がもう」
ホテルのロビーで教えてもらった道順が、「墓場のある角を右にまがり、ひたすら田んぼのなかをまっすぐ。右手に大きな一本木が見えてきたらその下です。」って!!(笑)
これぞ、まさに映画「UDON」でみた景色。
帰宅してから本棚から取り出して10年ぶりに再読すると、村上春樹も「がもう」を訪れているのですね。
朝9時前にもかかわらず、店の周りにはすでに行列と立ち食いの人の姿が。
期待度高まります。
メニューは麺が「あつ」と「ひや」で、量が、小・中・大とある。
これに、天ぷらとかコロッケをトッピングし、熱い出汁
親父さんに「何にします?」といわれ、焦る僕。
スタバではこういう組み合わせを楽しんで「カフェラテのグランデ持ち帰り、豆乳、エスプレッソのショット追加で。スリーブつけてください。」と呪文のようにスラスラとオーダーできるのだけど、食べたいメニューの組み合わせがとっさに出ない。
これからは、丸の内のスタバやディーン&デルーカで観光客の人がカウンターでまごついていても優しい目で見てあげよう。
そんなことを思いつつ、頼みました。キツネうどん(ひやあつ)とぶっかけ(あつ)の温泉たまごかけうどん。黄金メニューと自画自賛。
小麦の香りが鼻をくすぐって、う、う、う、うまい。
温泉たまごの絡まった熱々のうどんが、のどを駆け抜けていって、ひゃー、たまらん。
うんうん、これは人生変わるかもしれない、というか、讃岐うどんなしの人生は考えられない、というくらいの満足感!!
名店「がもう」は休日ともなるとすごく並ぶらしいですが、この日は小中学生が夏休みに入っているとはいえ、平日の朝なので、落ち着いて楽しむことができました。
この体験に巡り合えたことに感謝です。
これも、こんぴらさんのお導きかな。ありがとうございます。