Kaz Laboratory  (KazLab)

Knowing the A to Z of :-)
Kazが読んだ本、考えたこと、日々の記録

ポストモダンマーケティング

2005-05-29 21:51:31 | 経営戦略・仕事スキル・キャリア開発
ポストモダン・マーケティング―「顧客志向」は捨ててしまえ!

ダイヤモンド社

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「顧客は常に正しい」と、顧客の見えざる要望を想像し、ニーズを発掘して、惹きつける。競合他社も同様に「真の顧客の声」を探しているから、次回は更に顧客の声を聞いて・・・
国立大学を卒業して新卒で日系のシンクタンクに入ったコンサルタントがいかにも唱えそうな退屈なマーケティング主流派のセオリー。
これに代わる戦略として、筆者はTEASE(からかう)戦略を提唱する。
すなわち
Trick(トリック)、Exclusivity(限定)、Amplification(増幅)、Secrecy(秘密)、Entertainment(娯楽性)
上手いこというなあ、メモ、メモ。。。

こうも言う。
マーケティングは「誘惑」であり、「奴隷」ではない。
そうなんだよ。マーケティングを「相手(顧客)の気持ちを捕まえて離さないこと」と定義すると、恋愛と同じで、優しくて何でも言うこと聞いてくれる男(女)なんて退屈だからね。


良書だと思うけど、気に入らないのは邦題。
モダン・マーケティングに対するポスト(次世代の)、という意味なんだろうけど、マーケティング自体をモダン(現在)のものだと見れば、あくまでこの論はマーケティング理論の構造の範疇で行われているから、ポストモダンの語感ではないよね。
マーケティングに対するポストモダンとしては、内田樹先生の朋友、平川克美さんの著作「反戦略的ビジネスのすすめ」のような文脈の方がふさわしい気がする。
現題のDevelop Marketeaseのほうがいいと思うけどな。
え・・それもトリックだって!?

反戦略的ビジネスのすすめ

洋泉社

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成功読書術‐ビジネスに生かす名著の読み方

2005-05-28 18:41:16 | 哲学・心理学・自己啓発
成功読書術 ビジネスに生かす名著の読み方

ゴマブックス

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社会人になって以来、月に1~2万円分は本に投資すると決めている。
エンターテイメントとしてでなく、自己投資としての読書。
本に2万円使うのを高いとみるか安いとみるかはその人の価値観しだいだけど、仲間内でカイシャや上司の悪口やグチを言うだけのための飲み会を週に1度開けば同じ位の金額になるはずで、僕は前者をずっと選んでいて、十分元はとっていると思っている。
ところで『成功読書術』の土井さんは、年に100万円をビジネス書に投資するすごい人。
この人の薦めてくれる本、本のエッセンスを1500円で得られるのだから、この本は安い。
この1500円という値段、amazonで送料無料になる下限に設定するあたりが、さすがamazon japanの立上げメンバーだな、と言う感じ。

読書の必要性は感じているけど、何を読んでいいかわからないという新入社員や若いビジネスパーソンは、序章の「良い本との出合い方」を知るだけでも参考になります。
土井さん曰く

■執筆すべきテーマの素材を自分の頭脳から取り出す者だけが、読むに値する著作家である。
■一般読者は愚かにも新刊を読みたがり、良書を手にしたがらない。
■われわれは編纂者のあらわすものを読む機会をなるべく少なくすべきである。
■良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。

まったくその通り。
同じことをKの言葉で書くと、

●優れた企業に関する研究本でも、経営者自身が書いたものを読むべきで、ライターの礼賛ものを読んでも得るところは少ない。
●キャッチーなテーマで、著作を量産する人の本は、読むだけ時間のムダ。(エンターテイメントとしては構わないけど。)
●時代のスクリーニングを得て生き残っている本に普遍の真実がある。

など、など。

放浪記-林芙美子

2005-05-27 23:52:08 | 人間・家族・教育
放浪記

新潮社

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昭和の前半を生きた女流作家、林芙美子の生活の日記。
日常風俗の細部にかかる描写、母や義父への愛憎、かつて愛した男へのアンビバレントな愛情、底辺で生きる女達から見た世の不合理、それでも生きて生きたいとする前向きな意欲・・今のblog文体に通じる極私的な風景が、歴史年表でしか知らない戦前の昭和と平成の今を、リアリティを持って繋げてくれます。
カネ、恋愛、ファッション、美味いものを食べたい、充実して生きたい・・神話的に語られる「昭和の女達」が、少なくとも内面において、つましく生きていた訳でない、「今の若いもん」である僕らと何等変わらないという気持ちを起こさせてくれます。


悪女と紳士の経済学

2005-05-24 00:35:05 | 法律・経済・政治
悪女と紳士の経済学

日本経済新聞社

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結構名前の知れてるマーケター兼ライターの女性に、独身男の消費行動について本を書きたいので、めぼしい人がいたら紹介して欲しいといわれ、10人程度に当たってみたが見事に不発。
曰く「僕なんか平凡な生活なので相応しくないですよ。」
みな一様に、普段は仕事に集中して、時々チェーン系居酒屋で大学時代のツレと集まり、休日はゲームしたり、ネットやったり、DVD見たりして過ごすというもの。

思うに、バブル経済華やかなりし頃、車や時計やスーツ、スキーやテニス・・と僕らの世代は広告やマスコミに乗せられた自分らしさを消費で競った。その背景には、「若いうちに、キレイな女の子を掴まえて、ちゃんと結婚しなきゃ」という価値観がありました。
そう、すべて女の子へのアピールという「過剰な自分らしさの演出」があったことは否めません。
その点、下の世代は「結婚なんてしなきゃしないでいい」という人たちなので、その分はまったり気楽に過ごしてるのかも、ですね。

いまでこそ年収300万シリーズで名を馳せる経済アナリスト森永さんも、昔はこんな名著(=一生、恋愛し続けることができる社会こそ、日本人にゆとりある暮らしを作り、誰もが複数の恋人を持つことを可能にする環境が、21世紀の日本経済を救う。)を書いてたんですよね。
曰く、280馬力のエンジンの車なんて日本でその性能を発揮するところはない。なのに売れるのは、そのスペックがいい女を引き寄せるからだ・・・なんてね。

質素を旨とする、今の彼の説と矛盾しそうなんだけど、ラテン的人生観、好きな人と暮らせりゃ楽しいじゃん的価値観をバックボーンに考えると、意外にも論旨一貫してるんですよね。


サニーサイドアップの仕事術

2005-05-21 06:23:28 | 経営戦略・仕事スキル・キャリア開発
サニーサイドアップの仕事術

日経BP社

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中田英寿氏のイタリア移籍のあたりから名前を目にするようになったSSU、スポーツ選手版の芸能プロみたいなものかと思っていたら、PR会社がそのオリジンなのですね。
今では、マネジメント会社、PR会社という括りより、セルフブランド創造企業というほうがぴったり来そうです。
小さなカイシャが知恵と心配りを尽くして、チャンスをモノにしていく成功譚には爽快感があります。
何より、ナカタやキタジマは、ビッグビジネスであるのはもちろんですが、旬の絶頂期に、稼ぐだけ稼げばよしとするのでなく、個人のブランド価値の最大化、永続化に重きをおく点は、有名人だけでなく市井のわれわれの生き方にも参考になります。

折りしもSSUの仕事の原型を造った前園が引退を表明。
彼らがこのファクトにおいて、どう裏方仕事を進めていくのか、前園の価値を引き出していくのか注目して行きたいと思います。

次世代リーダー養成塾-大成するために今、すべきこと

2005-05-21 06:06:50 | 人間・家族・教育
次世代リーダー養成塾―大成するために今、すべきこと

祥伝社

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10年来の友人と六本木の蕎麦屋で1年ぶりに逢う。
財閥系の大きな企業の経営企画部に勤務する彼は、財界がらみの仕事も色々手伝うことがあるらしい。
去年、一番面白かったのは、榊原元財務官が音頭をとって始まった、高校生のためのリーダー養成プログラムだったという。
2週間の合宿形式で、超一流の頭脳、経験を聞き、考え、表現するという普通の高校生活では出会わない体験に、参加者は感動の嵐だったので、自分も参加できてよかった・・とこの話を教えてくれた。(その講義をまとめたのが上記の本)
何かと円周率の話ばかり出る「ゆとり教育」だが、一方で”何を教えてもよい”というエリート教育も可能であって、こうした試み、動きが出ていることは、もっと知られてよい。
こういうボランティアなら”うちまる”も抵抗なく入っていけるなぁ。
何か出来そうなこと探してみようか。



失敗の本質

2005-05-15 21:27:23 | 経営戦略・仕事スキル・キャリア開発
失敗の本質―日本軍の組織論的研究

ダイヤモンド社

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「起きたことは蒸し返しても仕方がない、二度とこのような事態が起きないように・・・」

この国の真っ当な社会に生きる大人としては満点の答えだ。
しかし、徹底的に事実や原因を調査して、過去に甘い点があれば断罪し、リスク管理にはヒト、カネを投入して万全を来たすと、そういう根本からの意識の改革、組織文化の変革を行わなければ、大事故・人災は、場所や時間を変えて、未来永劫、繰り返される。
60年前にこの国を破滅に導いた組織運営の遺伝子は、いまも連綿と息づいている。

『失敗の本質』は、すべてのビジネスマン、社会人が読んで議論すべきテキストだろう。

罪と罰、だが償いはどこに?

2005-05-15 00:45:32 | 法律・経済・政治
罪と罰、だが償いはどこに?

新潮社

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個別の事件をあげる暇もないほど、凄惨な事件のニュースが飛び込んでくる。
目を引くのは、再犯率の高さ。
”更生”と言うは易いが、人が価値観や人生観、行動を改めるということは、自分に照らしても容易ではない。
作家で弁護士である中島博行さんの本を通じて知るのは、人権重視政策による犯罪者の過剰な保護と、犯罪被害者、家族の無念さ、救われなさ。

犯罪歴がある人の人権は、名画「幸福の黄色いハンカチ」的なヒューマニズムばかりが強調されてきたのだが、少なくとも殺人、性犯罪など重大犯罪については性悪説を前提とした仕組みに変えないとまずいのでないか。



醸し人九平次

2005-05-08 23:32:51 | 人脈・交遊・ネットワーキング

”かもしびとくへいじ”と読みます。
愛知のこだわりの酒蔵で作っている希少な酒。
ずっと通ってる神田の馴染みのこの店で、10年ほど前に教えてもらったのだけど、段々人気が出て、いまやタイユバンとかアランデュカスの店でもワインリストに載っているのだとか。

嬉しいニュースがありました。
高校ー大学と同級だった、仲間内で独身最後の大物ISが遂に結婚するとの報告を受け、九平次で乾杯。
米から造られたと思えないほど、フルーティーでうまみある酒は、彼とフィアンセの将来を祝するのに最適。

司法のしゃべりすぎ

2005-05-08 16:02:17 | 法律・経済・政治
司法のしゃべりすぎ

新潮社

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現役判事からの、「判決理由には判決主文を導き出すための理論的過程のみ示すべき」という主張。
主文に関係のない憲法判断や事実認定に関する見解は蛇足であり、裁判手続き遅延の原因となる。また、筆者のいう蛇足部分が、新聞報道等で大きく報道されることがあり、裁判の政治化(身分保障される裁判官が政治信条を帯びる)の懸念、法廷の目的化(一定の政治運動がみずからの主張をアピールする場として利用する)の懸念を挙げる。

手続き論からいえば主張のとおりで反対することはない。
しかし、裁判当事者(だいたい勤務する会社が被告)だった経験からすると、個人とか国民の立場で、大企業や国と争うことは情報の非対称性、資金量、組織力の点で凡そ勝ち目はない。
(訴えられたほうは極論すれば、何年かかってもかまわないし、その間、その係争を”仕事とする”担当者は何人も変更可能で、使える金もべらぼうである。)

個人にしてみれば、法手続きに従えば損害賠償などの具体的救済はないけれど、判決理由でいわば「言い分としては理解する」と一定の正当性を与えられる(そしてそれがマスコミ等で広くしらしめられる)ことで、名誉回復や実質的な精神的救済が得られるのも現実にあるのではないか。
その点に、「司法への信頼」も生じるのでないかとも思う。

情緒的と切り捨てられるのは100も承知だが、遠山の金さんや大岡越前のようないわゆる「名裁き」に期待するのが、この国の司法に対する土着意識でないか。
ロジカルに考えると必要のない「饒舌な判決理由」がなかば定着を見せているのも、そうした意識と近代的司法手続きを融合させる裁判所なりの解であったと思うのだ。

社長失格の幸福論

2005-05-04 23:18:10 | 人間・家族・教育
社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由

日経BP社

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社長失格の幸福論

英治出版

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早起きして元ハイパーネット社長の板倉さんの連作を一気読み。
非常に才能溢れる人という印象。どこかでハイパーネットは出てくるのが2年早すぎて、楽天はタイミングがどんぴしゃだったという批評を見た覚えがあるけど、2000年前後のITバブルが来る遥か前から今日の社会を予感していた先見性、ビジネスに結びつけたセンスは、やはり天才の域なんでしょう。
そうした才能とビジネスを大きくしていくことは別物だから、またこの世は面白いというか。

先日、前の会社の同期で、いまは投資銀行の戦略担当をしているYZと、春秋 鳥居坂店で飲んだ。
トップセールスで表彰を受け、本社業務でも機転のきく彼は、同期№1だとの評価も高かった。
前職を辞めて、戦略コンサルをやりつつ、飲食業などいくつかの会社に出資して事業家への道を歩もうとしていたが、紆余曲折あって、今は借金を背負う身らしい。
「やっぱりさ、ハイリスクって一口にいうけど、自分のカネと人生で勝負するのは大変だよ。」
いま彼を癒すのは、一回り年下のキャリア系OLだった奥さんと、二人の間の子供との話。
「フェラーリと六本木の高層マンションをいつまでも夢見ていては、足元の幸せに気づくことはできないね。」

板倉さんの本を読んで、ちょうど彼の話がシンクロした。

いまさら聞けないコーポレートガバナンス入門

2005-05-02 23:45:34 | 法律・経済・政治
会社の社歴が若い社員から「あの~いわゆる執行役員制度と、商法に書いてある委員会等設置会社の執行役って別物なんですよね。今は移行措置期間なんですか?」と小声で聞かれました。
偉い!!
昔の人は言ったものだ。聞くは一時の恥、菊治で興奮するのはオトナの恥(=日経・愛の流刑地

何冊か良い本をリストアップしたので、こちらでも紹介させてもらいます。

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まず商法で並列規定される従来型の「取締役-株主総会を中心とした企業統治」と「委員会等設置会社」について商法、英米法の大家、神田秀樹先生と小林秀之先生の新著から。
コーポレート・ガバナンスにおける商法の役割

中央経済社

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委員会等設置会社VS.監査役強化会社―14年商法改正後のコーポレート・ガバナンスのあり方

中央経済社

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次に法律論議ばかり見ていてもワークする企業統治なんて実現しないから、経営学の立場で、こちらも大家・伊丹先生の近著。
日本型コーポレートガバナンス―従業員主権企業の論理と改革

日本経済新聞社

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最後に実務家(大手会計事務所)の著作。
この本は、米国企業改革法やCOSOモデル、企業統治の評価手法としてバランスト・スコア・カードに触れてる点で「機能する」態勢構築の示唆に富む。
内部統制マネジメント―コーポレートガバナンスを支える仕組みと運用

生産性出版

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このレベルの基本書を押さえて行けば、仕事でも必ず役に立つし、またいわゆる「自分のキャリア」的ものの礎にもなると思う。
高いけど、まず買って手元に置いて眺めてみること。


ブランドと百円ショップ-知恵働きの時代-

2005-05-01 01:15:22 | 法律・経済・政治
ブランドと百円ショップ 知恵働きの時代

朝日新聞社

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堺屋太一さんほど、幅広い歴史観、世界観から日本の現在を位置づけて考えられるプランナーも少ないと思う。
氏は、通産省の官僚から、野に下り、著作や言論を通じてこの国の進路に影響を与えてきたわけだが、はたして彼に政治の中枢に進もうとする野心というか意欲、彼が唱えた「知価革命」を自ら推進する意図はなかったのだろうか。
氏が、経済企画庁長官を降りて以降、改革らしい改革がないと歯軋りする様子が、この著書を通じてうかがえる。



考えあう技術

2005-05-01 00:50:01 | 人間・家族・教育
考えあう技術

筑摩書房

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教育社会学の第一人者刈谷剛彦さんと、哲学をとてもわかり易く伝える技能のある西研さんの対話集。
この二人にかかれば、「教育」は単に制度としての学校教育の問題を飛び越え、自由や公正といった国家、社会観、認知や理解といった人間の思考の本質のまさに「考えあう」議論となる。
そう、単に教科書が厚くなったとか、円周率が復活したという問題でないのだ。

究極の自己実現と、まったく実現出来ていない私という二分法はまちがいですね。集団の活動はうまくいかないこともあったり苦しいこともあったりするけれど、それでも何らかのゲームのプレイヤーとして何かのパートを担いながら、それをどのようにやっていくか試行錯誤する、そうした活動の中にこそその人らしさが出てきて、まわりもそれを認めるようになる。そういう自分の捉え方というのがないと、ビデオを見たりレジャーをしたりする消費の自由にしか自分らしさがないことということになってしまいます。-

自分が一人で生きているわけでなく社会や周りの人から生かされているのだと、腑に落ちるようにわからせることが教育の再生につながると言うことですね。
小学生になる前から、一人前の消費ターゲットとして扱われている自分や周囲の子供の状況を見ると、とても難しいことではありますが自覚しておきます。