悪魔の囁き

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と

2016-07-29 14:27:15 | 日記
第一話【小さな目】


ケチの農家が干していたノリを、私と次兄でつまみ食いをした。
20枚ほど食ったところで、婿さんに見つかった。
『こら! 何やってんだ!?』
『ごめんなさい!!』
そして、首根っこを掴まれて、かぁちゃんのところに連れて行かれた。
『お宅のガキどもにノリを食われたよ』
『すいません』と平謝りした。
『つまみ食いをした分、全部弁償してくれ』
『お前たちは、いたずらばかりするから、婿さんに、束になった巻き簀(す)で頭を殴られたんだよ』と晩年かぁちゃんが言った。

東京都のバキュームカーなど来なかった。
そして、長谷川の婿さんが肥桶を天秤棒で担ぎ、定期的に近所の家を周り、便所の汲み取りをしていた。
其れを肥溜め用の直径1m80cm程の、大樽に貯蔵して穴に埋め腐らせていた。
真っ暗だと大人でも酒を飲まなくても勘が働かなくなった。
そして、場所が見えずに、間違がえて肥溜めに落ちる事だった。
集められた肥溜めは長時間太陽に晒してあったで、表面は茶色く固まって居た。
昼間でも、ぼんやりしていると落ちてしまう事もあった。
私の家で放し飼いにしていた白い小犬がいた。
『キミオ鎖で繋いでおけよ』と長兄に注意されていた。
『大丈夫だよ!!』と散歩に行くと、私と駆け出して遊んでいた。
そして、表庭の細い通路を抜けて、田んぼや畑に向かって走り出した。
しかし、先を走るシロの足には、私の二本足では追いかなかった。
畑の中に、姿が消えた?
追いつくと肥溜めに落ちて前足をバタつかせてもがいていた。
しかし、私の力では助け出すことが出来ず、長兄に来てもらい助け出した。
『バカ!!だから繋いで置けと言ったろぅ』とまた、怒られた。
そして、臭い匂いが染み込んだ体を新川掘に放り込んで洗った。
そんなドジなバカ犬だった。
次の日、私が面倒をちゃんと見ないので、遠くの知り合いに貰われて行った。
3年後に会いにいくと、立派な顔立ちの頭の良さそうな犬に成長していた。
尻尾を千切れんばかりに振り回していた。
『ワウ、ワウ、ワウ・ハァ、ハァ、ハァ』
長い舌を出して両前足を挙げて、おいでおいでをして歓迎してくれた。
『こんにちは』
『キン坊!来たか』
『シロ!元気だった!?よしよしよし』と頭を撫でた。
『どうだい!いい犬になったろぅ』と謙作おじさんが自慢した。
『うん』
とても、嬉しかった。
覚えていて私の手を甘噛みして喜んでくれた。
その為に、遠回り成りになるが、怖い思いを覚悟して新川堀伝いの車道を歩く事にしていた。
また、貧乏人の餓鬼同様だったので、着ている服は継ぎだらけでみすぼらしかった。
夜一人で歩いていても、身代金目当てに誘拐される事は、自信を持ってなかった。
つづく


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