悪魔の囁き

少年時代の友達と楽しかった遊び。青春時代の苦い思い出。社会人になっての挫折。現代のどん底からはいあがる波乱万丈物語です。

若葉と青葉と紅葉と・・・

2017-10-31 10:29:49 | 日記
第一話[左馬](一)


「今晩は」
と入ると4坪ほどの細長いスナックパブで長いカンターの後ろに畳が敷いてあり4人座りのテーブルが2つ置いてあった。
「いらしゃいませ」
「もう終わりなの」
「あと、30分ありますよ」
「じや、飲んでいくか」
「水割りでいいですか」
「いいよ」
「お客さん。東京から来たんですか」
「そう」
「善光寺参りですか」
「いや、仕事ですよ」
「長野は初めてですか」
「大峰商事の仕事ですよ」
「あぁ。リンゴですね」
「違います。ホームセンター事業部ですよ」
「そんなのあったんですか」
「新しく出来たんだよ」
「それで、ホテルに泊まっているんですか」
「そこの、シティーホテルだよ」
「そうですか」
「オープンしたら来てくださいよ」
「何処ですか」
「若槻ですね」
「そこなら近いから行きますよ」
「よろしくお願いします」
「何処かで飲んで来たのですか」
「権堂ですよ」
「あそこは景気がよかったでしょ」
「何処の店も入っていましたね」
「うちは権堂から外れているから、客が流れてこないのよ」
「何、暇なの」
「バブルの頃は毎晩満員だったんだけど、弾けたら毎日まばらよ」
「そうなんだ」
「オープンしたら、また来られるのですか」
「搬入の時は来るけど長野の担当者は別なんだよ」
「だと、今回1回きりですね」
「ホテルに泊まるから、その代わり、担当の者にこさせるよ」
「そうしていただくと、有難いですね」
「そのうちの得意先の連中も連れてくると思うよ」
「そうしてくれると、助かるわ」
「それで、ママ1人なの」
「今日は早めに帰ったけど、女の子が1人いるのよ」
「いくつぐらいの娘」
「27歳だったかしら」
「あいつは女好きだから喜んでくるよ」
「可愛い子だから手を出されては困るけど、来てもらわないと店を閉めなければならなくなるしね」
「俺もたまに来るから潰さないでよ」
「わかりました」
・・・
「じゃぁ~帰るかなぁ」
「ありがとうございました」
「ママも帰るの」
「片付けてからよ」
「どう。行かない」
「いいわよ」
******


「昨日、中と別れてから、飲み足らなくて外に出たんだよ」
「何処かいい所あった」
「それで【よっこらしょ】と言うパブに入ったんだよ」
「変わった名前だなぁ」
「ローカルらしくていいじゃない」
「この辺にそんなところあった」
「お前は、酔っていたから気がつかなかったけど、ホテルの裏にあるんだよ」
「それで、車で来た時に分からなかったのか」
「そう。大通りの横道に入る形になるからな」
「面白かった」
「11時過ぎていて店仕舞いする所だったんだけど、1杯だけと言う事で飲ませて貰ったんだよ」
「何処に泊まっているんですか」
「そこの、シティーホテルだよ」
「近いのねぇ」
「店を閉めたら寄っていかない」
「いいわよ」
「それなら、早く閉めよう」
「チョット待ってねぇ~」

「それで部屋に来たんだよ」
「へぇ~ 気がつかなかったなぁ」
「それで泊まっていったの」
「いいゃ、一時間ぐらいで帰ったんだよ」
「でも、ダブルベッドで良かってねぇ」
「もしかしたら、こうなるからダブルベッドの部屋しか空いてなかったんだなぁ」
「それだけいい思いをしたんだから、俺に感謝してよ」
「お前も今度行ってこいよ」
「ママはいくつなのよ」
「俺と同じぐらいに見えたから40代だろうなぁ」
「一番美味しい年齢じゃない」
「良かったよ」
「へぇ、へぇ、へぇ、へぇ・・・
うまくやったねぇ~」
「たまたま運が良かっただけだけど、俺ぐらいの年になると40代以上の女は結構モノに出来るんだよ」
「そんなもんかねぇ~」
「50代60代でもOKだからなぁ」
「ママ一人なの」
「若い子も1人雇っているみたいだよ」
「カラオケはあるの」
「そう。カラオケバーみたいなもんだよ」
「なら、今度行ってみるわぁ。それでボトルは入れてあるの」
「時間がなかったから入れなかたよ」
「そうかよぉ。入れておいてくれれば良かったのに」
「失敗してなぁ。どのみち、搬入の時は来るから入れておいても良かったなぁ」
「そうだよ。そうすればお客さんも連れて行けるよ」
「接待に使えるか」
「話のタネにもなるしね」
「話が決まったら、早めにホテルの予約しておいてなぁ」
「シングルにする。ダブルにする」
「そうなに上手くは行かないからシングルでいいよ」
「ほんじゃ、俺はダブルにするかなぁ」
「無欲だから出来たんで、下心丸出しでは見破られて誰も付いて来ないよ」
「それもそうだねぇ」
「それに、チェックアウトする時に、連れ込み代金2千円追加で取られたよ」
「へぇ~ ホテル側もしっかりしているねぇ」
「泊まりだと、もっと取られたかもしれないなぁ」
「それでも、ママ代はタダでしょう」
「そうだよ」
「2千円で“やれた”と思えば大儲けだよ」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \

5月20日9時半にHCジョイマートの親会社大嶺商事の本社に行った。
本社の玄関入口に説前会会場の案内が出ていた。
「お早うございます」
「ご苦労様です」と本部の事務員さんが受付の前に2人立っていた。
名札を見ると左が向井加奈子。
右側が勝田知子と書いてあった。
「シンワ㈱です」
「お世話になります。お名前をお書きください」と名簿長を示した。
「専務。俺は字が汚いから代表で書いてよ」
「だめだよ。自分の名前ぐらい書けよ」
「いゃぁ~ 俺が書くとミミズが這った字になるんだよなぁ~」
先に専務が小さい丸みのあった名前を書いた。
「専務。字が上手いね」
「当たり前だよ。自分の名前ぐらい、まともに書けなければ恥ずかいいだろぅ」
「俺なんかボールペンで書いても、ツイストを踊っているような字になるんだよ」
「確かにお前が伝票にサインするとフラダンスになるものなぁ」
「そうなんだよねぇ。まして、筆ペンで書いたら、フラメンコを踊りだすよ」
「こう言った企業同士の会合に出る機会が多くなるから、綺麗に書く練習をしておけよ」
「分かってはるんだけどねぇ~」
「分かっているんだったら、明日からでもやれよ」
「なんか家に帰ると、何もしたくなくなるんだよなぁ」
「晩酌をやめればいいんだよ」
「それだけは、絶対無理だよ」
「それなら、飲む1時間前に30分でいいから練習してみな」
「恐らく、手が震えて書けないと思うよ」
「それじゃぁ~ アル中だよ」
「オレは、気狂い水なんだよなぁ~」
「たしかに癖が悪いし、普段から落ち着きがないからだよ」
「そうかなぁ~」
「精神統一して、1文字ずつゆっくり書いてみなぁ」
「なんか、面倒臭くなるんだよなぁ」
「30歳過ぎて、まともな字も書けないんじゃみっともないぞ」
「そうだなぁ~」
「今からでも遅くないから練習してみな」
「家に帰ったらやるよ」
「今日は汚い字でも構わないから、書けよ」
「うん。 どうですかぁ」
「本当に、汚いや」
「中さん面白い――」
・・・オホホホ・・・
「別にウケを狙った訳ではないいんだけどねぇ」
ハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「ありがとうございます」
「会場は何階ですか」
「6階の会議室になります」
「このまま入っていっていいのですか」
「どうぞ左のエレベーターでお上がりください」
「中。左の娘。色が白くて可愛い子じゃない」
「左の娘。宮野さんのコレかなぁ」と小指を立てた。
「違うだろう」
「判んないよ」
「いくつかな」
「二人共22歳ぐらいかなぁ」
「そんなもんかしれないな」
「お前。絶対手を出すんじゃねぇぞう」
「俺は誠実が売りだから、お得意さんにそんな事はしないよ」
「それならいいけど。狭い街だから直ぐに噂になるよ」
「でも、面白くなりそうな気がしますよ」
「そうだな。第二課の時も長野に得意先はなかったからな」

6階に着き、扉が開くと会議室のドァーが開いていて宮野課長と20代の男性が立っていた。
「お早うございます」
「ご苦労様です」
「昨日は、お泊りですか」
「はい」
「権堂はどぅでした」
「ホント。面白かったですよ」
「スタンドバーに入ったら大嶺商事の事は知っていましたよ」
「うちは長野では信濃工業と二分する大手だからね」
「そうなんですか」
「するとホームセンターシナノの親会社ですか」
「そう。これから、HC事業部でも商売敵になるんですよ」
「それでは気合を入れて後押しないといけないですね」
「そうですよ。東京のノウハウを存分に使っていい店づくりをしてください」
「任せてください。私。プロですから――」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「そうだ。時田くんです」
「時田義明です」と名刺を出した。
「大村です」
「中です」と交換した。
「今度。本部のバイヤー見習いになるので宜しくお願いします」と宮野課長が紹介した。
「カー用品部門ですので、よろしくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします」とお互い頭を下げた。

「それでは、中に入って空いている椅子に座ってください」
「有難うございます」
「可也来ていますね」
「見た事のない顔は地元の業者だなぁ」
「そんな感じですね」
「この文だと、部門に寄っては可也混乱するだろうな」
「日用品雑貨部門なんかは何処でも扱っていますからね」
「おそらく地元の業者との話し合いになるだろうな」
「取り敢えず、カー用品は2社だからやりやすいよ」
「日商グループの問屋は全社来ているんだよ」
――なるほどぉ. ――

「あぁ。東京商事も来ていますね」
「大村専務。こっち」と今年から課長になった坂田久喜48歳さんが呼んだ。
「早かったですね」
「朝4時起きで出てきましたよ」
「泊りじゃなかったんですか」
「忙しくて、とんぼ返りですよ」
「責任者になると大変ですね」
「今までがいい加減だったから、立て直しが大変ですよ」
「それで、前任者の工藤課長は何処に行ったんですか」
「HC事業から外れて業務課長をしていますよ」
「そうですか。HC業界では顔でしたのにね」
「偉そうなこと言っていても、利益を出せなければ格下げですよ」
「会社が大きいだけに、そうかもしれませんね」
「長野は中ちゃんが担当するの」
「はい<」
「うちは山下くんが担当するよ」
「山下です」
「中です」と初対面の挨拶をした。
******

「宮野課長が出てきたから始まるな」
平沢社長、相沢先生、森本部長、が舞台横に並んで座った。
1番手前にりんご事業部から抜擢された元係長の持田久店長が座った。
本部勤務のアシスタントの三人がオープン資料を配った。
「時間ですのでそろそろ始めたいと思います」と各問屋の顔を見回した。
「ご苦労様です」
「お手元にお配りした予定でオープンをさせたいと思います」
「その前に、1号店店長を紹介します」
「持田くん。挨拶して」
「お早うございます」
「おはようございます<<<<」
「今度、若槻店店長を仰せ付け賜りました持田です。素人ですのでご指導のほど宜しくお願い致します」
拍手!! ――喝采!!
「先月まで西新井店で研修して来ましたが、経験不足ですのでお手柔らかにお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

「何かご質問はありますか」と再度問屋の顔を見回した。
「はい」と大村専務が手を挙げた。
「どぅぞ」
「棚割りと見積を提出すると本決まりになる訳ですね」
「はい。これで資金繰りを計算します」
「では、訂正はない訳ですね」
「今回は、日商グループをメイン問屋としますので相見積もりは致しません」
「分かりました」
「他にありますか・・・」
「はい< 」と文進社の池田課長が手を挙げた。
「どうぞ」
「送りの荷物の件なのですが」
「はい」
「搬入当日ですと運送屋が混乱すると思うんですが」
「そうですねぇ」
「それで、荷物は搬入の前日に着けていいですか」
「スタフがいますからいいですよ」
「駐車場は何台ほど止めることが出来ますか」
「50台です。当日荷物を降ろしたら車は路上駐車にしてください」
「駐車違反になりませんか」
「都会と違ってド田舎ですから、ミニパトは廻って来ないと思いますよ」
ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \
「分かりました」
「他には」と見回した。
「なし<<<<――」
「それと、オープンが終わったら商談日には毎週やりますので、必ず来るようにしてください」
「いいですか」と私が手を挙げた。
「どぅぞ」
「商談は何処でやるのですか」
「この本社3階のHC事業部でやります」
「日にちは決めていますか」
「9時から始めますので、午前午後、ご都合の良い時間で宜しいですよ」
「カー用品のバイヤーは誰が担当しますか」
「まだ、一店舗なので仕入れは私一人でやります」
「じゃ、来る時はアポを取れば、いつでもいいと言う事ですね」
「そうしていただくと有難いですね」
「分かりました」
「後は、宜しいでしょうか」
「結構です」
「では、搬入日にお願いします」
「宜しくお願いします」と満場一致で1時間で終わった。
***◆◆◆***


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