「で、お話っていうのは・・・・」
「それがですねぇ。実は、お願いしたいことがありまして・・・・」
のんびりのんびり話し出したアガタさん(青年の名である)の話によれば、彼のおじいさんの持っている宝玉をグルタさんという人に貸したのだが、返すと言う期日が来ても返してくれない。幾度か返すよう催促してみたのだが、聞こうとしない。それどころか、居留守は使う、犬をけしかける、仕舞には人を使って嫌がらせをするようにまでなってしまったのだと言う。
そこで、どうにかして宝玉を取り返して欲しい。ということであった。
「だったら、あたしなんかに頼まなくても、裁判でも何でもおこしたらよろしいでしょう。借りたものを返さない相手が悪いんだし」
わざわざ見ず知らずの他人なんかに頼まなくても、この状況なら正攻法で裁判やっても充分、勝てると思うけど・・・。
というのがレムの考えなのだが。
「はぁ、それが、出来る事であれば、お互いの立場上、裁判沙汰にしたくないんですよ。グルタさんもはじめのうちは“家宝と交換しよう”とか“金を出すから売ってくれ”とか言っていたくらいですから、悪気があってのことではないと思うんです。わたしとしては、あの宝玉が自分のものであれば差し上げても構わないのですが、生憎、わたしの所有物ではないものですから・・・・。それに、周りがねうるさいんです。で、出来るだけ、あまり表沙汰にしないように取り戻して欲しいんです、後々の事を考えれば、グルタさんにとってもその方が良いと思うんです。
勿論、これは、仕事としてお願いするのですから、報酬は、お支払いします。どうか、お願いします」
「うわ っぷ」
カルの上げた声に、レムが湯船で我に返る。
洗い場でお湯をかぶっていた人が、勢い余ってカルにまでお湯をかけてしまったのだ。しかも、その人は、カルがいる事に全く気付かないまま、浴室を出て行ってしまった。
「カル、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
ぬれた顔を拭いながら、カルが湯船に入ってくる。
ちゃぽん。
レムの隣に腰を落ち着けた後、ふぅ~と、長い息を吐いて体を伸ばした。
お湯に濡れない様にと頭の上でまとめた髪がびしょびしょだ。
「濡れたついでだから、髪も洗っちゃおうかな」
ため息をつきながら、濡れた髪をつまむ。
「そうね、洗える時に洗っておいた方が良いかもね。今だったらあったかいから、すぐ乾くわよ」
そう、ここは温泉地だから、こうしてのんびりお風呂に浸かっていられるけど、お風呂のない宿なんてのも結構あるのだ。たらいに湯を張って体を洗えるならまだ良い方で、中にはお風呂に入る習慣すらない土地もあったりする・・・。
もっとも、目的地まではあと三日もあれば余裕で到着予定なので、風呂に入るのを我慢しようとすれば、出来なくはない。
何だったら、濡らしたタオルで体を拭くだけでもすっきりはするし、川があればそこで水浴びで済ませてもこの季節、風邪をひくことはない。
それでも、この暑さの中ではどうしても汗をかくし、風が吹いたら砂まみれだし、やはり風呂はあったほうが良い。
「ねぇ、レムちゃん。ちょっと、露天風呂へ行って来るね」
レムと変わらないくらにの小さな胸をタオルで隠し、カルが湯船を出た。
「行ってらっしゃい。コケてお湯に落ちないようにね」
そう注意するレムに
「レムちゃんこそ、のぼせて倒れないでね」
などという会話を交わしていたのだが・・・・。
「それがですねぇ。実は、お願いしたいことがありまして・・・・」
のんびりのんびり話し出したアガタさん(青年の名である)の話によれば、彼のおじいさんの持っている宝玉をグルタさんという人に貸したのだが、返すと言う期日が来ても返してくれない。幾度か返すよう催促してみたのだが、聞こうとしない。それどころか、居留守は使う、犬をけしかける、仕舞には人を使って嫌がらせをするようにまでなってしまったのだと言う。
そこで、どうにかして宝玉を取り返して欲しい。ということであった。
「だったら、あたしなんかに頼まなくても、裁判でも何でもおこしたらよろしいでしょう。借りたものを返さない相手が悪いんだし」
わざわざ見ず知らずの他人なんかに頼まなくても、この状況なら正攻法で裁判やっても充分、勝てると思うけど・・・。
というのがレムの考えなのだが。
「はぁ、それが、出来る事であれば、お互いの立場上、裁判沙汰にしたくないんですよ。グルタさんもはじめのうちは“家宝と交換しよう”とか“金を出すから売ってくれ”とか言っていたくらいですから、悪気があってのことではないと思うんです。わたしとしては、あの宝玉が自分のものであれば差し上げても構わないのですが、生憎、わたしの所有物ではないものですから・・・・。それに、周りがねうるさいんです。で、出来るだけ、あまり表沙汰にしないように取り戻して欲しいんです、後々の事を考えれば、グルタさんにとってもその方が良いと思うんです。
勿論、これは、仕事としてお願いするのですから、報酬は、お支払いします。どうか、お願いします」
「うわ っぷ」
カルの上げた声に、レムが湯船で我に返る。
洗い場でお湯をかぶっていた人が、勢い余ってカルにまでお湯をかけてしまったのだ。しかも、その人は、カルがいる事に全く気付かないまま、浴室を出て行ってしまった。
「カル、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
ぬれた顔を拭いながら、カルが湯船に入ってくる。
ちゃぽん。
レムの隣に腰を落ち着けた後、ふぅ~と、長い息を吐いて体を伸ばした。
お湯に濡れない様にと頭の上でまとめた髪がびしょびしょだ。
「濡れたついでだから、髪も洗っちゃおうかな」
ため息をつきながら、濡れた髪をつまむ。
「そうね、洗える時に洗っておいた方が良いかもね。今だったらあったかいから、すぐ乾くわよ」
そう、ここは温泉地だから、こうしてのんびりお風呂に浸かっていられるけど、お風呂のない宿なんてのも結構あるのだ。たらいに湯を張って体を洗えるならまだ良い方で、中にはお風呂に入る習慣すらない土地もあったりする・・・。
もっとも、目的地まではあと三日もあれば余裕で到着予定なので、風呂に入るのを我慢しようとすれば、出来なくはない。
何だったら、濡らしたタオルで体を拭くだけでもすっきりはするし、川があればそこで水浴びで済ませてもこの季節、風邪をひくことはない。
それでも、この暑さの中ではどうしても汗をかくし、風が吹いたら砂まみれだし、やはり風呂はあったほうが良い。
「ねぇ、レムちゃん。ちょっと、露天風呂へ行って来るね」
レムと変わらないくらにの小さな胸をタオルで隠し、カルが湯船を出た。
「行ってらっしゃい。コケてお湯に落ちないようにね」
そう注意するレムに
「レムちゃんこそ、のぼせて倒れないでね」
などという会話を交わしていたのだが・・・・。