50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「アダナのハチは・・・

2015-04-14 19:56:15 | 小説
「アダナのハチは気に入っているんです」
「クモよりましかね」
とクモは苦笑まじりの声でいった。
「チクリ刺されっぱなしなのはぼくの方ですが。ぼくがよくおしゃべりするからでしょう」
「象とでもしておく方が効果があがるかも知れない」
とクモは陽気に努めてそういった。

(つづく)

「彼女に、想像のチャンネルを・・・

2015-04-13 19:48:51 | 小説
「彼女に、想像のチャンネルを多くしてほしい。そういうことじゃないでしょうか。おじさまは」
クモは彼の勝手な解釈を喜びたかった。
「たとえばここ、劇場は想像を育てると思うんですよ。時々誘ってください。ぼくも、ここに初めてやってきてわかりました。ところで、お会いしたことを彼女には内緒にしておいてください」
その語尾が消え入りそうなのに、クモは幾分安堵した。

(つづく)

「ぼくには彼女の気持ちが・・・

2015-04-11 18:14:18 | 小説
「ぼくには彼女の気持ちがわかりません。おじさまの話は何となくわかります。でもぼくらはいつでも対等なんです」
アイデンティティが大事とか、クモはクモでそういわれても理解し難かった。
「だって、互いに意識しあって、そこに愛が生まれるもんでしょう。彼女の気持ちがわからない」
「それは、それはだな。そのこにはないものねだりのとこがあって、きっと寂しがり屋なんだろう」

(つづく)

男が女に翻弄・・・

2015-04-10 20:24:14 | 小説
男が女に翻弄されていたという彼の話からクモは、再び暇になった劇場のロビーをみまわしながらいった。
「観客は、私は君の観客じゃむろんないがね、徳兵衛に初の方が翻弄されていくその姿には同情。腹の底では徳兵衛に同情していない。そういうもんだろう。九平次は別としても」
クモはわれながらにうまくいえたはずだった。

(つづく)

その直後にどやどやっと・・・

2015-04-09 19:31:39 | 小説
その直後にどやどやっと、幕間の客が入ってきていて、クモの背筋を温かくしなおしてくれて、
「姪の本当のところを訊きだすべきだろうな。それからの話だろう」
「はい。勇気をだしてアタックしてみます」

(つづく)