演劇「リチャード三世」

『口先のお世辞ばかりのこの世の中で、女にちやほやされる二枚目役が無理だとすれば、思い切って敵役を務めるよりほかない』

…というカッコいいセリフを冒頭に言ってたらしいのですが。
すいません、マイクのスピーカーの調子か二回席だったせいか、いきなりセリフが全然聞き取れずビックリする展開に。

この芝居は膨大な人物関係の情報を冒頭のモノローグで説明するんですが、そこが聞き取れない上に、しかも情報処理の補助をするモニター（これは舞台装置の一部でもあります）が二階席で遠くて見えず…いやー、前半の鑑賞には苦労しましたよ。
もう人物関係を正確に把握するには４５分ぐらいかかりました。
かなりえらいハンデをもらった気分。

そのせいか、前半は冒頭だけでなく聞き取りにくいセリフがやたら多いように感じたんですけど、あれは古田さんの調子が悪かったのだろうか。それとも、二階席のせいなのだろうか。
でも、けっこうセリフ噛んでたしなあ、古田さん（苦笑）

まあ、事前に原典をちゃんと読んでおけば、こんな苦労をしないですんだんですけどね。
しかも、鑑賞後に買ったパンフレットには人物関係図が書いてあったりして。
せめて、これを鑑賞前に読んでおけば！
しかも、私は物語の背景となる薔薇戦争をほとんど知らないのだ！

…とまあ、愚痴を書いちゃいましたが、久しぶりの演劇、久しぶりのいのうえ演出、久しぶりの生古田さんで楽しかったです。

あと、古田さん演じるリチャードを見てるとどうしても、最近スカパーでの再放送を見てる「DEATH NOTE 」の夜神君を思い出してしょうがありませんでした…つーか、夜神君のキャラクターの元ネタって彼では。
とくに私が今回の芝居で一番好きなシーンである、「娘さんを、貴女の息子を殺した私にください！」でのセリフの応酬を聞いてるとどうしてもねえ…
ホント、リチャードは全然感情移入できないキャラクターなんですよ。
なんだか凶悪事件の三面記事に書かれている犯人像だけで組み立てた感じで。

舞台の上でタバコをスパスパ吹かすリチャード。しかもポイ捨て。
マクドナルドの紙袋を漁ってポテトを食べるリチャード。
ハンバーガーを頬張るリチャード。
牛乳パックを飲むリチャード。
アン王女が毒の入ったワインを飲んで死んでしまうシーンで、アン王女の向かいに座ってレディーボーデン(バニラ味だったらしい…)を食べるリチャード
舞台でエロ本を捨てるリチャード

こう書くと細かいギャグのようですが（実際、その効果もあるけど）、これらはリチャードという人間の醜悪さを描く表現になってたような気がします。
私はそんな、皮肉より醜悪さが優先したギャグのほうが好きです、いのうえさん。

でも、即位した直後に豪華な王の衣装ででてきた時は…ホントにプリチーでしたぜ、古田さん。

前半は鑑賞に苦労しましたが後半は密度の濃い展開がテンポよく進むので、とても楽しかったです。

久しぶりに演劇を堪能しました。
でも、この芝居は特に演じるほうが見てるほうより楽しそうだなあ。


 追記：しかし、この曲（The Who 「 Love Reign O'er Me」）が実質的に主題歌とは…やっぱりいのうえ＆古田なブリティッシュ演劇だわ。