WARSのPCR診断の運用は、今までは座頭市流(多数の無症状者・軽症者は無視して、危険度の高い患者だけを検査する)で医療崩壊にならなかった。しかし、この先も同じ検査方針を続けていけば、医療崩壊は進む。座頭市流の落ち度は、多数の無症状の陽性者(ステルス患者:https://blog.goo.ne.jp/tributary/e/221e97d2e1ea6aa1772206d2bf72137f)を放置したことである。当面それで実害はなかった。しかし今や、市中に多数のステルス患者がいる可能性がある(一般人の抗体保有率が数%とされる)。これは、WARSに最も近い現場である病院では由々しい事態である。
目の前の患者が実はステルス患者であるかもしれないとなれば、世界が違ってくる。特に救急患者は経過に不明な点が多く、WARSの可能性について常に警戒が必要である。実際に、自宅で静養中に亡くなり死後にWARSと診断される例も出ている。発熱など少しでもWARSの疑いのある救急患者は、受け入れを拒否され搬入先が見つからず、たらい回しにあう。受け入れた病院は、WARSを前提に感染防御のうえ診療せざるを得ない。それでも、救急患者は数や滞在時間が限定され、水際での対応が可能である。遥かに危険なのは、一般患者に紛れ込むステルス患者、トロイの木馬患者である。
病院は感染が広がりやすい空間である。待合や廊下は人が行き交う。大部屋に入院すれば、他人の近くで起居する。しかも、その人達は健康に問題がある(だから病院にいる)。医療従事者はさらに感染の危険が近い。診療中には患者に接近して会話し、しばしば接触もする。内科・耳鼻科・歯科の診察、内視鏡、全身麻酔、介護・食事介助などでは、患者から飛沫が飛んでくる。患者の排泄物や体液にも曝露する。しかし、あらゆる患者に常に完全な感染防御を行うことは困難である。この環境内に木馬患者が入れば、その感染が発覚するのは、他の患者や医療従事者に伝染した後だろう。院内感染がおこれば、更なる感染者の発生、医療職員の欠落、病棟閉鎖、外来休診などが襲いかかる。
手術や検査の前には、一般に肝炎やHIV(エイズウイルス)などの感染症の検査を行う。これは、医療従事者への伝染を防ぐのが目的である。WARSは飛沫感染・接触感染をするから、一緒にいれば伝染する危険がある(肝炎は血液を介するので一緒にいても安全)。ワクチンが開発されるか、発生頻度が極めて低くなるまでは、疑わしい患者はもちろん入院患者全員を対象として、WARSの検査(PCR法に限らない)を行うべきではないか。職員にも定期的な検査が必要である(偽陰性の問題は棚上げとして)。全体を見ることなくしては院内感染が発生し、医療崩壊を招く。
危険なのは何も病院だけではない。高齢者の介護施設でも、誰かがWARSウイルスを持ち込めば、多くの入居者が危険に晒される。入居者と職員は当然、訪問者も全て、WARSでない証明を提示すべきだろう。ここまで木馬患者を排除しようとするのは、病院や介護施設はいわゆる3密であり、かつ休業できないからである。逆に言えば、休業を要請されている事業者も、その場に集まる人をすべて検査してWARSを否定すれば、かつての通りの営業が可能となる。ワクチンや治療薬が不完全ならば、この方法が安心できる事業再開の解決となる。そのためには、PCR検査を抑制した成功譚は僥倖として据えおき、より正確・簡便・迅速な検査法を開発して、その普及を進めるべきであろう。
但し、実はWARSはそれほど危険でないとすれば、警戒レベルは全体に下げられる。確かにWARSは、SARSなどと比べて危険度は低かった(指定感染症を返上しては:https://blog.goo.ne.jp/tributary/e/d74fa70adac7ac5d0400edd7a7b2e85b)。もしくは、ステルス患者の頻度は極めて低い(<0.01%)のであれば、心配しすぎとなる。しかし、本当に(日本人には)危険度が低いとしても、その科学的な理由は未だ不明である。市中の感染頻度も不明である。これらが明らかになるまでは、検査件数を2桁高めてステルス患者の発見に努めるのが得策であろう。
市の剣で勝てた時は過ぎた。相手は多数であり、心眼で捉えられる代物ではない。