WARS流行の展望なしではこの先の予定も立てられないので、無理は承知で考えてみたい。
感染症はつとに政治・社会問題である。それが故に感染症法という法律があり、WARSは指定感染症(2類相当)とされた。WARSにより重症者や死者が相当数発生することは確かで、法に基づく施策が必要なのも宜(うべ)なるかなである。法が効力を発揮すると、(ほぼ)強制的なPCR検査や入院・隔離などが実施され、同調圧力で自粛が余儀なくされる。一方、この強制力や圧力の副作用は大きく、感染者は10日以上の休業が要求され、濃厚接触者も同様の処置を受ける。周囲の者は同情する一方で、嫌悪感を抱く。経済活動の低下から不景気(減収・失業)が深刻化し、感染忌避から社会不安(中傷・差別)が渦巻く。
この状況に対して、感染症法の適用を止める、すなわち2類感染症ではなく5類相当、もしくは風邪の一種とすべきという意見もある。確かにWARSの症状は風邪と同じで、ありふれた感染症という意味では風邪の概念に一致する。風邪であれば、今の社会的被害(飲食店などの経営被害、休校による学業の停滞など)は大きすぎる。しかし、現実として死者が2千人近く出ており、行動制限を緩めれば流行が広がるだろう。更に、指定感染症から外されると、各種の補償金や助成金、保健所による感染者の追跡・保護、医療費の公費負担などの法的根拠がなくなる。2類外しの話を切り出してくる政府の本音が吝嗇(金の出し渋り)だとしたら、それは大きな罠である。
流行の展望は誰も分からない。しかし、感染防御方法の理解が進み、多くの社会生活の局面で対応がとられている。重症化の頻度は陽性者の2%未満で中高年者にほぼ限られる。今までの感染の推移からみて、死亡率は人口10万人あたり1人から10人程度で収まるであろう(最大1.5万人くらい)。この死者数は、年間の自殺者2万人と対比されるように、脅威ではあるが深刻ではない。決して個人を軽視しないし、一人ひとりの患者を適切に治療できる診療体制を保つべきである。その一方で、感染症に対する政策は、個人の病状や転帰ではなく社会全体への影響を重視して定める必要がある。
怖いのは経済危機よりも社会不安である。その解消には、行動指針を具体的に明示すべきであろう。未成年者の重症化は極めて稀なので、行動制限は緩めに設定する。休校の基準も、生徒100人当たりの陽性者数などで定める。成人でも、無症状陽性者や濃厚接触者は、厳重な健康観察を前提に、接触を最小限に抑えて活動を認める。60-70歳以上は、予防のための行動制限を厳しめに設定する。何らかの数値指標で数段階の警戒レベルを定め、行動指針を天気予報のように毎日示せば分かりやすい。クラスターに対しても、職種毎に閉鎖の目安を定めておく。こうすれば、行動に迷いがなくなり不安が軽くなる。
治療方法の進歩があれば事態は好転する。期待されるのはワクチンである。しかし、コロナウイルスは免疫誘導が困難で、反復投与や補助薬品の添加が必要となる。その結果、予想外の免疫反応を誘導することが懸念される。その状況の中で、商機にとばかり製薬会社はワクチン開発を急いでいる。いかにも危険の臭いがする。世界的な感染の制御、一日も早い製品化という圧力から、頻度の低い副作用は無視され、短期間で承認される。そして実用に入ってから、予想もつかない事態が起こり、よく調べると開発時にも指摘されていた・・ということが危惧される。
ウイルス側の条件が不変ならば、①防衛力(感染対策、行動制限)と②医療力(治療方法、医療体制)と③抵抗力(自然免疫、獲得免疫)との和が一定に達するまで、流行は継続する。①では、手指衛生やマスク以外に、近接した飲食や飛沫を直接浴びる状況を避けることが特に重要であろう。②も現場の医師の臨床力向上に期待したい。③では、ワクチンができるまでは、感染が広がるのは止めようがない。それでもわが国では、恐らく8月頃の東京が最悪の事態であろう。封じ込められなかったウイルスは広がるので、地方都市ではあの程度を覚悟しておく必要がある。そして最後には、ウイルスは常在化するのであろう。(https://blog.goo.ne.jp/tributary/e/665667e20eaf9100cc9d046ba06df3ae)
この先は、かなり長期間この苦しい状況が続くと覚悟すべきである。慌てず、焦らず、諦めず、科学的に、分析的に、現実的に考えて、その時々で至適と考えた方策を打っていくしかない。臨機応変の修正を厭わず容認することも重要である。