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支流からの眺め

究極の危険物

 危険物の最終回
 前回は支配者の危険性とその手段(暴力、法律、洗脳)について述べた。それでは、自制の利いた支配者を元首とし、国民が処世術をわきまえれば、その国は安泰なのか。確かに国内はそうかもしれない。しかし、国同士では別だ。更には、それらの国々を跨いで世界を支配する者についても、話は別となる。

 国同士の関係(国際関係)では、上位の確立した権力や権威がなく、現代にあっても前近代的な暴力による恐怖が支配的だ。しかも、兵器の破壊力とあわせて交通・通信手段がこの数十年で格段に進歩し、過去とは比較にならない。即ちこれまでの歴史が参考にならない事態となっている。

 暴力では、核兵器と原子力潜水艦だ。地球上のどこであっても、数分以内に核弾頭が飛んでくる。この終末的な恐怖に怯え、核保有国同士の戦いの主戦場は法律と洗脳となった。それでも法律は明示的であり、実効性も禁輸、関税処置、資産凍結などに限られる。そこで、洗脳がもっとも重要になる。

 洗脳とは要は認知戦だ。情報の操作(修飾・隠蔽・捏造など)により、暗示的に人々の心理状態や思考様式を変えることだ。軍事や法律が行動を強要するのと異なり、洗脳は人々を「自発的に」行動変容させることができる。しかも、技術の発展により情報の提供手段は多様かつ迅速となった。

 現代の国際世界は米露中の三国の覇権争いの場だ。その各国の元首が危険物であることは言うまでもない。これに加えて第四の危険物がある。覇権三国のどれとも敵対しないようにし、国境や民族を越えた価値を唱え、平穏な人心を攪乱し、人々の憎悪を煽って分断し、死闘で流される血を途切れさせない連中だ。

 この強き四者が行う洗脳に対しては、全ての情報を疑い、情報の入手経路を多数持つのが正攻法だ。そして、彼らの世界観を醒めたる眼で理解し、あわよくば勝ち組に入りこむのが現実的な対処法だろう。それでも希望的には、彼らの世界観に働きかけることはできるはずだ。(了)

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