こんにちは。相変わらずバンクーバーに脳内旅行中のおかぴです
28日のフィギュアスケートのエキシビションが終わったら帰国予定です(笑)
さて、今回のフィギュアスケートは、男女ともに全員入賞と、素晴らしい結果となりました。
皆さん、それにふさわしい素晴らしい滑りでした。
本当に、おめでとうございます
心からの拍手を送りたいと思います
そして、外国人選手の皆さんも、男女ともに、いつになくレベルの高い戦いを見せてくださったと思います。
本当に見ごたえのある試合でした
ただ・・・、とてもとても残念ですが、私の中にはわだかまりも残ってしまいました
それについて、ここで書くかどうか、なかなか気持ちの整理がつかなかったので、24日のショートの後も、昨日(2/26)のフリーの後も、感想を書くことができませんでした。
男子の試合の後のブログで、私は子供の頃、フィギュアスケート選手になりたかったと書きましたが、3歳のときに父に初めてアイススケートリンクに連れていってもらって以来、スケートが大好きになり、小学校高学年の頃は、冬になると毎週のようにスケートリンクに通いつめていました。そのため、オリンピックの試合を見るのが毎回本当に楽しみで、たぶん、フィギュアファン暦はウン十年になると思います。それほどフィギュアスケートが好きだからこそ、やっぱり少しだけ、ここでそのわだかまりの理由について触れたいと思います。
が、その前に。
まずは今回、素晴らしい滑りを見せてくれた選手たちについて、日本人選手を中心に触れたいと思います。
■抜群の表現力で観客を魅了した鈴木明子選手
まず、8位に入賞した鈴木明子選手。私は、鈴木選手の表現力は、女子ではダントツだと思います というか、私好みです。ショート、フリーともいくつかミスはありましたが、それで崩れることなく、終始笑顔を浮かべて、躍動感あふれる演技で最後まで自分らしく滑りきった姿は、国境を越えて多くの人に感動を与えたのではないでしょうか。ショートプログラムは浅田真央選手、キム・ヨナ選手という金メダル候補のスター選手が滑った直後、会場が異様な熱気に包まれる中という非常に不利な滑走順でしたが、プレッシャーに屈せず自分の世界を表現した姿に、会場からも大きな拍手が送られていました。普通、あれだけの選手が滑った後だと、直後の選手が色あせて見えてしまい、拍手もおざなりだったりするのですが、鈴木選手は間違いなく観客を惹きつけていましたし、送られた拍手は心からのものだったと思います。
特に、フリーのストレートラインステップでは、オリンピックという大舞台を心から楽しんでいるという気持ちがあふれていて、とても胸を打たれました。
■メンタルの弱さを乗り越えた安藤美姫選手
安藤選手は唯一、2回目のオリンピックでしたが、ずっと言われていたメンタル面の弱さを、今回のオリンピックでは見事に乗り越えていましたね 金メダルを目指してショートプログラムでは3回転の連続ジャンプに果敢に挑戦し、残念ながら2回目のジャンプが乱れて結果的に2回転の認定になってしまいましたが、その後は冷静に他の要素を滑りきりました。安藤選手自身が「苦手」と言っていた表現面については、以前は腕をぶんぶん振り回して、やや雑な印象がありましたが、今回は練習の成果が見事に現れていて、指先まで神経が行き届いていたように思いました。
フリーでは、今季、確か5着目(今季は一度として同じ衣装を着てないですよね、たぶん)の衣装に身を包み、クレオパトラの気高さをよく表現していたと思います。安藤選手の衣装はいつもすごく凝っていて、毎回とても楽しみにしているのですが、今回もとても素敵でした(個人的には3着くらい前の、ベースが青の衣装が一番好きです )。ジャンプなどに少しミスは見られましたが、全体的には、ショート、フリーともに今季一番の滑りだったと思います。それをオリンピックに持ってこられたといのは、やはりすごいことだと思います。
■大きな成長を遂げた長洲未来選手
実は私、安藤選手の演技と得点を見て、4位は安藤選手だと思っていました。ですが、後で結果を見たら、4位に長洲未来選手が入っていてビックリ 長洲選手の試合は、今季はまだ一度も見ておらず、試合当日はビデオでとりあえず日本選手3人とキム・ヨナ選手、ジョアニー・ロシェット選手しかチェックしていなかったので、長洲選手がどんな滑りだったのか、まったく知らなかったのです(ちなみに、長洲選手はアメリカ育ちの日本人で、日本とアメリカの両方の国籍を持ち、アメリカ代表としてオリンピックに出ています)。
ですが、去年までの長洲選手は、とても将来有望な選手という印象はありましたが、演技がまだまだ荒削りで、シニアの大会ではジャンプにもミスが多く、いまはまだオリンピックのメダル争いに絡んでくるレベルではないと思っていました。むしろ、今回のオリンピックには出られませんでしたが、実力では長洲選手のライバルである、パールスピンでおなじみのキャロライン・ジャン選手の方が上なのではないかと思っていたのです。
しかし、今回の試合を見て、長洲選手の4位という順位にとても納得しました。むしろ、3位でも不思議ではないくらい。これからますます大きくなるであろうプレッシャーに打ち勝って、あのあっけらかんとした明るい性格のままでいられれば、今後は確実に上位争いに絡んでくるでしょうから、ますます試合が面白くなりそうです。
■母の死を乗り越えて滑りきったジョアニー・ロシェット選手
ジョアニー・ロシェット選手は、お母様を試合直前に亡くされ、本当にお気の毒でした。心よりご冥福をお祈りいたします。そして、特にショートプログラムでは、計り知れない苦しみを乗り越え、よくぞノーミスで滑りきったと思います。やっぱり、世界で活躍する選手というのは、なんというか、いろんな意味で強いですね。スケート選手としては、私はまったく好きなタイプではないのですが、人間としては尊敬に値する選手だと思いました。ただ、むしろ試合が終わった後が心配。張りつめていた糸が切れてしまったら、心が折れてしまわないでしょうか? ぜひ、これからも選手として活躍を続けていただきたいと思います。
■3回のトリプルアクセルを決め、歴史的快挙を成し遂げた浅田真央選手
浅田真央選手は、私にとっては、今大会の女子で一番です。誰が何と言おうと、全選手の中で一番素晴らしかったです。確かに、完璧だったショートに対し、フリーではジャンプで2つ、ミスをしてしまいました。後のほうのミスは不運でもありました。ですが、これまで女子では誰も成し得なかった、ショートとフリーでトリプルアクセルを3回決めるという偉業を達成し、何より、その困難に挑戦しようという気持ちこそが、アスリートとして本当に立派です(トリプルアクセルがどれほど難しいかというと、4回転を跳べる男子でも、苦手とする選手が多いしミスも多いジャンプです。伊藤みどりさんがオリンピックで成功させて以来18年間、女子では誰も成功させていなかったジャンプです)。
オリンピック前のインタビューで、浅田選手は「毎年少しでも難しい技に挑戦していかなければ、アスリートとして意味がないと思う」というようなことを話ていました。そして実際に、これまで毎年、必ず前の年よりも難易度の高いプログラムに挑戦し、最終的にはいつもそれを自分のものにしてきました。プログラムの内容が難しい分、ステップやジャンプに荒さが出ることもあり、今季に至っては、シーズン前半はことごとくジャンプが決まらず、グランプリファイナルに出場すらできませんでした。確か、グランプリシリーズのロシア大会だったと思いますが、5位という、考えられない成績に終わり、泣きはらしたうつろな目でインタビューに答えている姿を見たとき、正直言うと私は、オリンピックどころか、真央ちゃんは今シーズンはもうダメかもしれないと思っていたほどです。
もちろん、これまでの実績はダントツですから、もしあのままスランプだったとしても、オリンピック出場枠3枠のうちのスケート連盟の推薦枠で、オリンピックには当然出場していたはずです。しかし、12月に行われた全日本選手権では、まだ危うい面はあったものの、見事にプログラムを自分のものにして優勝し、自分自身の力でオリンピックへの切符を手に入れました。この芯の強さ、絶対に諦めない気持ち、自分を信じる強い心、どんな言葉で表現したらいいかわかりませんが、超一流のアスリートであることは間違いありません。
だから、ショートプログラムを滑り終えて、嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる姿を見たときは、私も嬉しくて涙が出ましたし、フリーを滑り終えて打ちひしがれた顔や直後のインタビューを見たときは、かわいそうで涙が出ました。できることなら、順位はともかく、ショートのときのような納得と満足の笑顔で終わらせてあげたかった。真央ちゃんにはやっぱり、笑顔が一番似合いますからね。
でも、浅田選手は本当に強いです。“浅田「ソチ五輪目指す」=銀メダルは「すごく嬉しい」”という記事にコメントが出ていますが、すでに気持ちを切り替え、次のオリンピックを目指すと明言しています。浅田選手は、まだまだ発展途上。今回は力を出し切れませんでしたが、いままで重ねてきた努力は、すべて糧になっているはずです。これまで、やると言ったことはすべて成し遂げてきたその強い気持ちで、今度こそ、金メダルをつかみ取ってほしいと思います。
■ショート、フリーともにノーミスで金メダルをつかんだキム・ヨナ選手
今回、上位選手では、ショート、フリーともにノーミスだったのは、キム・ヨナ選手だけかもしれませんね。国を挙げての注目度は日本の比ではないでしょうし、ものすごいプレッシャーだったと思いますが、よくあれだけ精神状態を保てたものだと思います。そして、あの3回転の連続ジャンプの高さと回転スピードは、間違いなくピカイチでしょう。演技構成も、とてもよく練りこまれていたと思います。金メダルというのも納得です。
ですが、本当に残念なことに、心の底から「すごかった 感動した」とは言えないのです。私は別に、日本人選手かどうかに関係なく、好きな選手は好きなのです。例えば、今回出場していませんが、トリノの銀メダリストであるアメリカのサーシャ・コーエン選手の表現力は、いまの全女子選手の中でダントツだと思っていますし、ロシアのスルツカヤ選手も可愛くて大好きだったのです。それだけに、素直に喜べないのは本当に残念なことです。
なぜなら、キム・ヨナ選手にフリーで「150点」という点数が出たから。
150点というのは、男子の上位選手並みの点です。つまり、男子並みのプログラムを組まなければ、出せない点なのです。いくら技や演技の完成度が高いと言っても、キム・ヨナ選手のプログラムや演技内容からいって、ちょっと考えられないほどの高得点なのです。実際、キム・ヨナ選手自身が「(自分の点は)130点か140点だと思った」とコメントしています。これは、謙遜ではなく、恐らく本音でしょう。だって、同じ選手が、数か月前に自己最高のトータル210点を出したばかりなのに、なぜ今回、それを18点近くも上回れたのでしょうか? 自己最高を出したときの試合も見ましたが、そのときと比べて目を見張るほど今回のオリンピックがすごかったわけではないのに。それに、すでにかなり技や演技の完成度の高い選手が、そんなに簡単に自己ベストを18点も上回れるものなのでしょうか? 伸びしろのものすごく大きな下位選手ならともかく。
もちろん、私は、キム・ヨナ選手が悪いと言っているわけではないのです。でも、ここ最近のフィギュアの採点方式にどうしても納得がいかないため、素直に“おめでとう”という気持ちになれないのです。
■高難度な技が評価されない現行の採点方式
私があれこれ言っても、所詮素人ですから説得力はないと思います。ですから、なぜ納得できないのか、それについて、かつて男子でミスター4回転と言われた元フィギュア選手のエルヴィス・ストイコ氏が、男子フィギュアの結果についてコメントしたものを日本語に翻訳されて掲載されている方のブログがありますので、そのストイコ氏のコメントをお読みいただくのが一番かと思います(女子にもまったく同じことがあてはまるので)。なんと言っても、一番フィギュアを分かっている方ですから。
それから、「大技決めても完敗・・・吉岡監督、採点に苦言」、「高難度な技を決めても勝てない採点システム」という記事もあります。
また、確か、今日(もうとっくに昨日か・・・)の朝日新聞に、プロスケーターの八木沼純子さんが「浅田選手があんまり簡単にトリプルアクセルを跳ぶから、どれだけすごいことかみんな気づいていないのかもしれませんね」というようなコメントをしていました。
このほか、Nereide Design Blogという、タイムリーな話題について考えることをテーマとした一般の方のブログもご紹介します(この問題に関する記事へのアクセス数がすごいらしく、つながりにくいので、もしつながらない場合は画面の更新をしてみてください)。今回の女子SPの結果に対する多くの元選手たちのコメントが載せられています(ニュースソースも示されています)。写真や点数などを詳細に提示されており、なぜ、私が150点という点数に納得できないかということが、明確に示されています。
さらに、ちょっと前の話になりますが、一般のフィギュアファンの方が、キム・ヨナ選手が昨年、210点という世界最高得点を出したときに、その得点について考察している「キムヨナ選手の世界最高得点の意味を考える」というブログがあります。こちらには、現在の採点方式への疑問が非常に分かりやすく書かれています。
ところで、フリースケーティングで150点というのがどれほどすごい点かというと、
・男子で8位に入賞した小塚選手とほぼ同じ点数
*男子は女子よりも、フリーの時間が30秒長く、ジャンプ要素が1つ多い。そして、小塚選手は4回転ジャンプを成功させている。にもかかわらず、ジャンプの要素が1つ少なく、4回転もトリプルアクセルも決めていないキム・ヨナ選手に150点が出た。ちなみに、銅メダルの高橋大輔選手のフリーの得点は156点台。4回転-3回転の連続ジャンプとトリプルアクセルを2回決めた銀メダルのプルシエンコ選手が確か165点台。キム・ヨナ選手のフリーとの点差はわずか15点程度。自己最高記録を18点も上回れるというのがいかにすごいことか、この点差を見ても分かる。
・キム・ヨナ選手の一番の大技3回転の連続ジャンプは跳ばなくても優勝できる
*キム・ヨナ選手の一番の大技である3回転の連続ジャンプは、基礎点10点、加点2点がついても合計12点。浅田選手との点差は約23点。ショートの点差5点を差し引いても点差は18点。3回転の連続ジャンプのほかに、もう1つ何かの要素を抜いても優勝できたということ。最も大技を跳ばなくても勝てるなんてことがありうるのか? 逆に、もし浅田選手が完璧に滑っても、恐らくキム・ヨナ選手が3~4回くらい転ばないと勝てなかったと思われる。果たして、それほどの差が二人の間にあったのか?
こういう不審を招く最大の原因は、「加点」にあると思います。明確な加点基準というものはなく(減点には基準がある)、審判の裁量ひとつで決まってしまうことが、疑問だらけの採点につながってしまう理由だと思います。しかも、採点基準はしょっちゅう変わるし、そもそも現行の採点基準には以前から疑問の声が多かったのも事実です。もちろん、現行の採点基準で戦わなければならないわけですから、負けは負けで仕方ありません。ライサチェク選手やキム・ヨナ選手のように、高難度な技を避けるというのも、それはそれで一つの選択肢だと思います。ですが、審判が匿名だったり、難しいリスクのある技に挑戦することがばかばかしくなってしまうような今の採点基準に問題があるのは明らかで、選手のためにも、誰かが声を上げていかなければならないと思いました。
・・・ということで、思わず気合が入ってしまい、気づけばもうすぐ午前4時。これまでにない長さになってしまいました。最後までお付き合いいただいた方がもしいらしたら、ありがとうございます
28日のフィギュアスケートのエキシビションが終わったら帰国予定です(笑)
さて、今回のフィギュアスケートは、男女ともに全員入賞と、素晴らしい結果となりました。
皆さん、それにふさわしい素晴らしい滑りでした。
本当に、おめでとうございます
心からの拍手を送りたいと思います
そして、外国人選手の皆さんも、男女ともに、いつになくレベルの高い戦いを見せてくださったと思います。
本当に見ごたえのある試合でした
ただ・・・、とてもとても残念ですが、私の中にはわだかまりも残ってしまいました
それについて、ここで書くかどうか、なかなか気持ちの整理がつかなかったので、24日のショートの後も、昨日(2/26)のフリーの後も、感想を書くことができませんでした。
男子の試合の後のブログで、私は子供の頃、フィギュアスケート選手になりたかったと書きましたが、3歳のときに父に初めてアイススケートリンクに連れていってもらって以来、スケートが大好きになり、小学校高学年の頃は、冬になると毎週のようにスケートリンクに通いつめていました。そのため、オリンピックの試合を見るのが毎回本当に楽しみで、たぶん、フィギュアファン暦はウン十年になると思います。それほどフィギュアスケートが好きだからこそ、やっぱり少しだけ、ここでそのわだかまりの理由について触れたいと思います。
が、その前に。
まずは今回、素晴らしい滑りを見せてくれた選手たちについて、日本人選手を中心に触れたいと思います。
■抜群の表現力で観客を魅了した鈴木明子選手
まず、8位に入賞した鈴木明子選手。私は、鈴木選手の表現力は、女子ではダントツだと思います というか、私好みです。ショート、フリーともいくつかミスはありましたが、それで崩れることなく、終始笑顔を浮かべて、躍動感あふれる演技で最後まで自分らしく滑りきった姿は、国境を越えて多くの人に感動を与えたのではないでしょうか。ショートプログラムは浅田真央選手、キム・ヨナ選手という金メダル候補のスター選手が滑った直後、会場が異様な熱気に包まれる中という非常に不利な滑走順でしたが、プレッシャーに屈せず自分の世界を表現した姿に、会場からも大きな拍手が送られていました。普通、あれだけの選手が滑った後だと、直後の選手が色あせて見えてしまい、拍手もおざなりだったりするのですが、鈴木選手は間違いなく観客を惹きつけていましたし、送られた拍手は心からのものだったと思います。
特に、フリーのストレートラインステップでは、オリンピックという大舞台を心から楽しんでいるという気持ちがあふれていて、とても胸を打たれました。
■メンタルの弱さを乗り越えた安藤美姫選手
安藤選手は唯一、2回目のオリンピックでしたが、ずっと言われていたメンタル面の弱さを、今回のオリンピックでは見事に乗り越えていましたね 金メダルを目指してショートプログラムでは3回転の連続ジャンプに果敢に挑戦し、残念ながら2回目のジャンプが乱れて結果的に2回転の認定になってしまいましたが、その後は冷静に他の要素を滑りきりました。安藤選手自身が「苦手」と言っていた表現面については、以前は腕をぶんぶん振り回して、やや雑な印象がありましたが、今回は練習の成果が見事に現れていて、指先まで神経が行き届いていたように思いました。
フリーでは、今季、確か5着目(今季は一度として同じ衣装を着てないですよね、たぶん)の衣装に身を包み、クレオパトラの気高さをよく表現していたと思います。安藤選手の衣装はいつもすごく凝っていて、毎回とても楽しみにしているのですが、今回もとても素敵でした(個人的には3着くらい前の、ベースが青の衣装が一番好きです )。ジャンプなどに少しミスは見られましたが、全体的には、ショート、フリーともに今季一番の滑りだったと思います。それをオリンピックに持ってこられたといのは、やはりすごいことだと思います。
■大きな成長を遂げた長洲未来選手
実は私、安藤選手の演技と得点を見て、4位は安藤選手だと思っていました。ですが、後で結果を見たら、4位に長洲未来選手が入っていてビックリ 長洲選手の試合は、今季はまだ一度も見ておらず、試合当日はビデオでとりあえず日本選手3人とキム・ヨナ選手、ジョアニー・ロシェット選手しかチェックしていなかったので、長洲選手がどんな滑りだったのか、まったく知らなかったのです(ちなみに、長洲選手はアメリカ育ちの日本人で、日本とアメリカの両方の国籍を持ち、アメリカ代表としてオリンピックに出ています)。
ですが、去年までの長洲選手は、とても将来有望な選手という印象はありましたが、演技がまだまだ荒削りで、シニアの大会ではジャンプにもミスが多く、いまはまだオリンピックのメダル争いに絡んでくるレベルではないと思っていました。むしろ、今回のオリンピックには出られませんでしたが、実力では長洲選手のライバルである、パールスピンでおなじみのキャロライン・ジャン選手の方が上なのではないかと思っていたのです。
しかし、今回の試合を見て、長洲選手の4位という順位にとても納得しました。むしろ、3位でも不思議ではないくらい。これからますます大きくなるであろうプレッシャーに打ち勝って、あのあっけらかんとした明るい性格のままでいられれば、今後は確実に上位争いに絡んでくるでしょうから、ますます試合が面白くなりそうです。
■母の死を乗り越えて滑りきったジョアニー・ロシェット選手
ジョアニー・ロシェット選手は、お母様を試合直前に亡くされ、本当にお気の毒でした。心よりご冥福をお祈りいたします。そして、特にショートプログラムでは、計り知れない苦しみを乗り越え、よくぞノーミスで滑りきったと思います。やっぱり、世界で活躍する選手というのは、なんというか、いろんな意味で強いですね。スケート選手としては、私はまったく好きなタイプではないのですが、人間としては尊敬に値する選手だと思いました。ただ、むしろ試合が終わった後が心配。張りつめていた糸が切れてしまったら、心が折れてしまわないでしょうか? ぜひ、これからも選手として活躍を続けていただきたいと思います。
■3回のトリプルアクセルを決め、歴史的快挙を成し遂げた浅田真央選手
浅田真央選手は、私にとっては、今大会の女子で一番です。誰が何と言おうと、全選手の中で一番素晴らしかったです。確かに、完璧だったショートに対し、フリーではジャンプで2つ、ミスをしてしまいました。後のほうのミスは不運でもありました。ですが、これまで女子では誰も成し得なかった、ショートとフリーでトリプルアクセルを3回決めるという偉業を達成し、何より、その困難に挑戦しようという気持ちこそが、アスリートとして本当に立派です(トリプルアクセルがどれほど難しいかというと、4回転を跳べる男子でも、苦手とする選手が多いしミスも多いジャンプです。伊藤みどりさんがオリンピックで成功させて以来18年間、女子では誰も成功させていなかったジャンプです)。
オリンピック前のインタビューで、浅田選手は「毎年少しでも難しい技に挑戦していかなければ、アスリートとして意味がないと思う」というようなことを話ていました。そして実際に、これまで毎年、必ず前の年よりも難易度の高いプログラムに挑戦し、最終的にはいつもそれを自分のものにしてきました。プログラムの内容が難しい分、ステップやジャンプに荒さが出ることもあり、今季に至っては、シーズン前半はことごとくジャンプが決まらず、グランプリファイナルに出場すらできませんでした。確か、グランプリシリーズのロシア大会だったと思いますが、5位という、考えられない成績に終わり、泣きはらしたうつろな目でインタビューに答えている姿を見たとき、正直言うと私は、オリンピックどころか、真央ちゃんは今シーズンはもうダメかもしれないと思っていたほどです。
もちろん、これまでの実績はダントツですから、もしあのままスランプだったとしても、オリンピック出場枠3枠のうちのスケート連盟の推薦枠で、オリンピックには当然出場していたはずです。しかし、12月に行われた全日本選手権では、まだ危うい面はあったものの、見事にプログラムを自分のものにして優勝し、自分自身の力でオリンピックへの切符を手に入れました。この芯の強さ、絶対に諦めない気持ち、自分を信じる強い心、どんな言葉で表現したらいいかわかりませんが、超一流のアスリートであることは間違いありません。
だから、ショートプログラムを滑り終えて、嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる姿を見たときは、私も嬉しくて涙が出ましたし、フリーを滑り終えて打ちひしがれた顔や直後のインタビューを見たときは、かわいそうで涙が出ました。できることなら、順位はともかく、ショートのときのような納得と満足の笑顔で終わらせてあげたかった。真央ちゃんにはやっぱり、笑顔が一番似合いますからね。
でも、浅田選手は本当に強いです。“浅田「ソチ五輪目指す」=銀メダルは「すごく嬉しい」”という記事にコメントが出ていますが、すでに気持ちを切り替え、次のオリンピックを目指すと明言しています。浅田選手は、まだまだ発展途上。今回は力を出し切れませんでしたが、いままで重ねてきた努力は、すべて糧になっているはずです。これまで、やると言ったことはすべて成し遂げてきたその強い気持ちで、今度こそ、金メダルをつかみ取ってほしいと思います。
■ショート、フリーともにノーミスで金メダルをつかんだキム・ヨナ選手
今回、上位選手では、ショート、フリーともにノーミスだったのは、キム・ヨナ選手だけかもしれませんね。国を挙げての注目度は日本の比ではないでしょうし、ものすごいプレッシャーだったと思いますが、よくあれだけ精神状態を保てたものだと思います。そして、あの3回転の連続ジャンプの高さと回転スピードは、間違いなくピカイチでしょう。演技構成も、とてもよく練りこまれていたと思います。金メダルというのも納得です。
ですが、本当に残念なことに、心の底から「すごかった 感動した」とは言えないのです。私は別に、日本人選手かどうかに関係なく、好きな選手は好きなのです。例えば、今回出場していませんが、トリノの銀メダリストであるアメリカのサーシャ・コーエン選手の表現力は、いまの全女子選手の中でダントツだと思っていますし、ロシアのスルツカヤ選手も可愛くて大好きだったのです。それだけに、素直に喜べないのは本当に残念なことです。
なぜなら、キム・ヨナ選手にフリーで「150点」という点数が出たから。
150点というのは、男子の上位選手並みの点です。つまり、男子並みのプログラムを組まなければ、出せない点なのです。いくら技や演技の完成度が高いと言っても、キム・ヨナ選手のプログラムや演技内容からいって、ちょっと考えられないほどの高得点なのです。実際、キム・ヨナ選手自身が「(自分の点は)130点か140点だと思った」とコメントしています。これは、謙遜ではなく、恐らく本音でしょう。だって、同じ選手が、数か月前に自己最高のトータル210点を出したばかりなのに、なぜ今回、それを18点近くも上回れたのでしょうか? 自己最高を出したときの試合も見ましたが、そのときと比べて目を見張るほど今回のオリンピックがすごかったわけではないのに。それに、すでにかなり技や演技の完成度の高い選手が、そんなに簡単に自己ベストを18点も上回れるものなのでしょうか? 伸びしろのものすごく大きな下位選手ならともかく。
もちろん、私は、キム・ヨナ選手が悪いと言っているわけではないのです。でも、ここ最近のフィギュアの採点方式にどうしても納得がいかないため、素直に“おめでとう”という気持ちになれないのです。
■高難度な技が評価されない現行の採点方式
私があれこれ言っても、所詮素人ですから説得力はないと思います。ですから、なぜ納得できないのか、それについて、かつて男子でミスター4回転と言われた元フィギュア選手のエルヴィス・ストイコ氏が、男子フィギュアの結果についてコメントしたものを日本語に翻訳されて掲載されている方のブログがありますので、そのストイコ氏のコメントをお読みいただくのが一番かと思います(女子にもまったく同じことがあてはまるので)。なんと言っても、一番フィギュアを分かっている方ですから。
それから、「大技決めても完敗・・・吉岡監督、採点に苦言」、「高難度な技を決めても勝てない採点システム」という記事もあります。
また、確か、今日(もうとっくに昨日か・・・)の朝日新聞に、プロスケーターの八木沼純子さんが「浅田選手があんまり簡単にトリプルアクセルを跳ぶから、どれだけすごいことかみんな気づいていないのかもしれませんね」というようなコメントをしていました。
このほか、Nereide Design Blogという、タイムリーな話題について考えることをテーマとした一般の方のブログもご紹介します(この問題に関する記事へのアクセス数がすごいらしく、つながりにくいので、もしつながらない場合は画面の更新をしてみてください)。今回の女子SPの結果に対する多くの元選手たちのコメントが載せられています(ニュースソースも示されています)。写真や点数などを詳細に提示されており、なぜ、私が150点という点数に納得できないかということが、明確に示されています。
さらに、ちょっと前の話になりますが、一般のフィギュアファンの方が、キム・ヨナ選手が昨年、210点という世界最高得点を出したときに、その得点について考察している「キムヨナ選手の世界最高得点の意味を考える」というブログがあります。こちらには、現在の採点方式への疑問が非常に分かりやすく書かれています。
ところで、フリースケーティングで150点というのがどれほどすごい点かというと、
・男子で8位に入賞した小塚選手とほぼ同じ点数
*男子は女子よりも、フリーの時間が30秒長く、ジャンプ要素が1つ多い。そして、小塚選手は4回転ジャンプを成功させている。にもかかわらず、ジャンプの要素が1つ少なく、4回転もトリプルアクセルも決めていないキム・ヨナ選手に150点が出た。ちなみに、銅メダルの高橋大輔選手のフリーの得点は156点台。4回転-3回転の連続ジャンプとトリプルアクセルを2回決めた銀メダルのプルシエンコ選手が確か165点台。キム・ヨナ選手のフリーとの点差はわずか15点程度。自己最高記録を18点も上回れるというのがいかにすごいことか、この点差を見ても分かる。
・キム・ヨナ選手の一番の大技3回転の連続ジャンプは跳ばなくても優勝できる
*キム・ヨナ選手の一番の大技である3回転の連続ジャンプは、基礎点10点、加点2点がついても合計12点。浅田選手との点差は約23点。ショートの点差5点を差し引いても点差は18点。3回転の連続ジャンプのほかに、もう1つ何かの要素を抜いても優勝できたということ。最も大技を跳ばなくても勝てるなんてことがありうるのか? 逆に、もし浅田選手が完璧に滑っても、恐らくキム・ヨナ選手が3~4回くらい転ばないと勝てなかったと思われる。果たして、それほどの差が二人の間にあったのか?
こういう不審を招く最大の原因は、「加点」にあると思います。明確な加点基準というものはなく(減点には基準がある)、審判の裁量ひとつで決まってしまうことが、疑問だらけの採点につながってしまう理由だと思います。しかも、採点基準はしょっちゅう変わるし、そもそも現行の採点基準には以前から疑問の声が多かったのも事実です。もちろん、現行の採点基準で戦わなければならないわけですから、負けは負けで仕方ありません。ライサチェク選手やキム・ヨナ選手のように、高難度な技を避けるというのも、それはそれで一つの選択肢だと思います。ですが、審判が匿名だったり、難しいリスクのある技に挑戦することがばかばかしくなってしまうような今の採点基準に問題があるのは明らかで、選手のためにも、誰かが声を上げていかなければならないと思いました。
・・・ということで、思わず気合が入ってしまい、気づけばもうすぐ午前4時。これまでにない長さになってしまいました。最後までお付き合いいただいた方がもしいらしたら、ありがとうございます