「敦盛の最期」の授業
TOSSいなほ 永野やす子
やんちゃくんがたくさんいるクラスでも3つの工夫で授業が成立しました。
1 全体に指示し、個別にあたる
指示 先生が現代語訳を読みます。 難しい漢字にはふりがなをふりなさい。 |
大部分の生徒は現代語訳の範読を聞く。しかし、出すようにジェスチャーした。
指示 現代語訳をみんなで読みます。 さんはい。 |
全体に読ませながら、机間巡視をした。
ちゃんと教科書を読んでいる生徒がいる。彼らの横では「よし」と言ってほめた。教科書を開いていない生徒や交換ノートを書いている生徒には軽く注意した。
2 あっさり変える
現代語訳を読ませた後、古文の音読練習を行った。その後、こう指示する。
指示 音読テストをします。今読んだ 古文を、二十秒で読めたらAです。 全員起立。読み終わったら座ります。 用意、始め。 |
前年度は二人一組の音読テストを行っていた。一人が読み、もう一人がそれを聞き、相手がすらすらと読んでいるか、制限時間内に読んでいるかを評価した。
しかし、この学年では二人一組での音読でさえ、ペアによっては一人で勝手に読んだり、二人で私語を始めたりしてしまう。
だからあっさりやり方を変えて、自己評価にした。全員が正しく読んでいるか、時間内に読んでいるか、完全に把握はできなかったが、それでよしとした。生徒が多少の緊張感を持って読んでいたからだ。
3 一目で分かる工夫をする
指示 敦盛のせりふはどれですか。 古文に線を引きなさい。 |
指示 (周りと確認させて)みんなで 読みます、さんはい。 |
「ただ、とくとく首を取れ」
指示 現代語ではどんな意味ですか。 Aさん。 |
「とにかく、さっさと首を取れ」
次の絵を板書した。一目で分かるように、大きく、ABや矢印は色チョークで書いた。
A B
発問 「首を取れ」の「首」とは、Aですか、Bですか。 |
これは山田高広氏から学んだ発問である。言った瞬間、交換ノートを書いていたこギャルちゃんが顔を上げた。やんちゃ君も「Aじゃん、決まってる」と言った。 AかBか挙手させた。Aが大多数、Bはゼロだった。
発問 取ったAの首をどうするのです か 。 |
目が合った女子に答えさせる。「殿様に見せて、手柄にする」
「残酷!」「血がいっぱい出る」「グロい」というつぶやきが出た。
説明 自分の首を切られる寸前に、 敦盛は「ただ、とくとく首を取れ」と 言ったのですね。 |
板書 敦盛「とにかく、さっさと首を 取れ。( )」 |
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ノートを持ってきた生徒に板書させた。
・大将軍の首を取れば、そちらの殿もとくと喜ぶだろう。
・私の首で手柄を立てろ。
・戦に負けた者は死ぬしかないのだ。
・おまえはすべての敵に情けをかけるのか。
・おまえは武士であろう。
・もうこの世に悔いはないよ。でも痛そうだ。
・本当はもっと生きたかった。