道東を発見する旅 第3の人生

認知症、バリデーション、死者を呼び戻す

認知症

家内が4ヵ月ぶりに家に戻ってきてから1週間が経過した。

家内は自立歩行が困難となり寝てばかりである。

入院している時は十分把握できていなかったが予想していた以上に認知症が進んでいた。時々辻褄の合わないことを言って自分や息子を困らせている。

しかし、介護のプロ(ヘルパーさんや訪問看護師さんたち)は慣れたもので対応が素晴らしくテキパキとやってくれている。

認知症の次に自分達にとって大きな変化は、毎日いろいろな人が家にやってくることだ。

往診の先生、訪問看護の看護師さん、ヘルパーさん、リフォームの人などが来ており、ボケている家内や家でゴロゴロしていた息子には刺激になっているようで良かったと思っている。

バリデーション治療

さて、怒りっぽくなって訳の分からない事を言ったりしている痴呆の進んだ家内にどう対応したらいいのだろう。

ネットで調べてみると、認知症に対してでバリデーション療法というものがあるのを知った。

公認日本バリデーション協会のサイトに治療法の詳細が書いてある。
http://www.clc-japan.com/validation/validation.html

真正面に座って相手の目を見つめるアイコンタクト、相手の言葉を繰り返すリフレージングとか、役に立つことが書いてある。

興味のある方はぜひ参考にして頂きたいのだが、その効果について重要そうな部分を抜粋しておく。

以下引用する

バリデーションを受けた認知症高齢者は自尊心を取り戻し、ストレスや不安が軽減され、言葉または言葉以外の方法でコミュニケーションをとろうとするようになるという。

また、バリデーションを学んだ家族は、認知症になった家族を受け入れ、コミュニケーションをとることができるようになります。認知症の家族の行動には理由があることを理解でき、フラストレーションが少なくなります、と書いてある。

引用終わり

もっと内容を深く知りたいと思いさらに調べたところ、「バリデーション」という本にたどり着いた。

アマゾンで購入してパラパラとめくってみたのだが、その中で凄く心に残った箇所を引用します。

痴呆症の人とのコミュニケーション「バリデーション」ナオミ・フェイル著 筒井書房
280ページより引用

Q(質問) 

幻覚と見当識障害のお年寄りの直感的イメージ(過去に経験したことがあたかも起きているかのように感じること)の違いはなんでしょう。

A(答え)
 
簡単に言うと直感的イメージとは古い記憶の事です。

普通過去の個人の歴史に基づいていて、過去のまだやり終えていない課題に関連があります。(一方)「幻覚」は過去や個人の歴史とは必ずしも関係ありません。

バリデーション理論では、見当識障害のお年寄りがまだやり終えていない課題を解決しようとして、こころの目を使い過去からいろいろな事象を呼び戻すことは、ごく自然なプロセスだと述べています。

身体や脳が衰えてきている見当識障害のお年寄りは、もはや現在の時計時間や、自分がどこにいるかすらも分からなくなってしまいます。

このお年寄りは死を迎える準備をしているのです。安らかに死を迎えるために過去に成し遂げられなかった事をやり直すために「心の目」で過去から人を呼び戻します。

これは死を目前にした自分自身を癒そうとするプロセスなのです。これは精神病や自滅的な行為ではありません。

(一方)認識能力も知覚能力も損なわれていないより若い人が、見えないものが見えたり、聞こえない声が聞こえたりして、現実との違いに苦しんでいる場合が精神病の「幻覚症状」と呼ばれているものです。

引用終わり

死者を呼び戻す

最近、家内は自分と息子に「実はおじいさん(家内の父親)が生きているのよ」とヒソヒソ話をするようになった。実際には数年前に死んでいるのだ。

そして、代わりに○○ちゃんは死んだの!と言う。○○ちゃん(長男)は家を出て自立して元気で仕事しているのに、である。

最初はなぜ、そんな事を言い出し始めたのかサッパリ理解できなかったが、このQ and Aを読んで目からウロコが落ちた。

家内の頭の中でなぜ爺さんが生き返って長男が死んでいるのか。

そのことは長男に話していたので、さらにこの箇所を見せると、大きく頷いて「それはきっとこういう事だろう」と自分なりの解釈を聞かせてくれて自分もそれで納得できた。

死期を悟る

さらに、何か別の資料で読んだのだが、自分の死期が近づくと誰でもそれが分かるようになるという大原則があるという。

病院にいるときは、死に関して何かを話すことは無かったのだが、家に帰ってきてから「このままドーンと天国に行ってしまうのかなあ」とか「怖い」とかを連発している。

自分の死期を悟りボケている頭の中で、死んだおじいさんを心の中で生き返らせて何かをやり直そうとしているのである。

今までは他人に見せなかった「心の闇」をさらけ出すようになったのだ。

そう思うと胸がキューっと苦しくなってしまった。

まとめ

今回のテーマはボケた人にどう対応するかという事で難しいテーマだった。それでまとめるのに時間がかかってしまった。

今、家内は小学生くらいの子供に帰っているような感じである。

それは、初めて知り合った頃よりも、ずっとずっと前なので、毎日それなりに楽しい時間を過ごせている。

いつまでこれが続くのだろう。退院時には余命1ヶ月以内と言われていたが、在宅診療の先生は3ヵ月はいくんじゃないですかと気楽に言ってくれていた。

このところ快調そうなのでもっと長生きするような気もしているが、寝たきり状態が続いているので褥瘡が心配である。

これ以上色々考えるのは神の領域に土足で踏み込むような気がするので、今日も楽しくちょっとした会話を楽しむところでとどめておく。

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