道東を発見する旅 第3の人生

最期の一息、家族葬、夢枕、引っ越し

最期の一息

2週間前の木曜日、いつものように仕事を終えて家に帰った。

リビングに入ると家内がゴホゴホと痰のからんだ咳をしている。

息子は、「午後から調子が悪いみたいだ」と言っていた。いつもよりちょっと調子が悪いくらいの雰囲気だった。

息子が痰を吸引しているのだが、スッキリ取れないようなので自分がやることにした。

なかなかスッキリと取れなかったが、それでも続けているとズルズルと痰がとれて呼吸音がスースーとなり楽そうに息をしていた。

そこでちょっと一休みと思い自分はソファに座ってテレビを見始めた。息子も自分が家に帰ってきて痰がうまくとれたので安心したのかゲームに夢中になっている。

それから、たぶん、1、2分もたっていなかったのだが、フッと気になり家内の顔を見ると息が止まっている。

あわてて、息子に「息が止まってる」と叫ぶと、息子が駆け寄り「エーー!これで最後なの、そんな・・・そんなバカな」と泣き崩れて、心臓マッサージを始めた。

そんな息子を諫めて「もういい、やめよう」と言ったら、息子も半泣き状態で手を止めた。

そして自分が在宅の先生に電話をかけて先生が死亡確認にやって来た。

死亡時間が午後10時15分で、予想していたよりもはるかに穏やかであっさりと死んでしまった。

最期の一息を見ることが出来なかったが、そんな姿を見せるのを嫌がる人なので、いつの間にか穏やかに逝ってしまったことに本人は満足しているのではないかと思っている。そんな訳で死に顔は実に美しく本当に寝ているようであり、永遠の眠りについたという言葉がぴったり当てはまるようだった。

お通夜のまえにで湯かんをしてくれたおくりびとの人も息子に実に穏やかなお顔をされていますと言ってくれたそうだ。

我々の看取りは、このようにすんなりと行うことが出来たが、在宅の看取りがなかなか広がらないそうだ。

その理由は「痛みのコントロール」が問題になるそうで、家内はひどい褥瘡があるにもかかわらず「全く痛み」を訴えなかったのが勝因のようだ。普通は患者が痛がるそうで、それで入院して看取りという流れになるそうだ。自分達の場合は、ラッキーだったのだろうが、息子の献身的な介護が本人の精神状態にいい意味で影響したように思う。

いずれにせよ、亡くなって先生に来てもらったところまではハッキリと覚えているのだが、それから葬式が終わるまでの数日間は、本当に一瞬で過ぎ去ってしまったような気がする。

家族葬+若干の友人

お葬式は有名な全国チェーンの花屋さんが経営する式場で家族葬で行った。

家族葬と言ったが、一部、家内の仲の良かった人に来てもらった。

式はキリスト教式で、いつも日曜礼拝に通っていた教会の牧師先生とオルガン奏者に牧師さんのお孫さんが来てくれた。

その時は、なぜか火葬場が混んでいたようで、予約が取れず、一日遅れて、日曜の夜にお通夜、月曜のお昼に告別式となった。

お通夜が日曜の夜だったので、小さな会場が、家内の中高時代、大学時代、研究室時代のそれぞれの友人たちでいっぱいになった。賛美歌では、歌のうまい牧師さんの朗々たる歌声が式場いっぱいに響いて、お孫さんのオルガンが花を添えた。

自分は恥も外聞もなく嗚咽しながら挨拶をさせてもらった。

いい雰囲気でお通夜が出来た。古い友人たちにも会うことが出来てうれしかった。翌日は平日だったので友人はぐっと減って家族と親族と若干の友人だけになりしんみりと告別式を行うことが出来た。

夢枕

家内が死んでから2週間ちょっと過ぎた。ずっと介護していた次男は2回ほど家内が夢の中に出てきたと話している。

一回目は、家内が夢に出てきて「○○君(息子の名前)、枕取って」と言ったそうだ。それで「ハイヨ」と渡したら消えてしまったという。2回目はあまり覚えていないと言うが、「キリスト教でいうイエスキリストの復活のように、家内が生き返った」夢をみたらしい。

オカルトチックになるので、自分は話を聞いて茶化して終わったが、息子も別に何も思っていないようだ。

引っ越し

家内が亡くなった日の夜、家内の亡骸の横で、息子と3人で酒盛りをした。

遺体を囲んで、しんみりと故人の話をしながら夜通し弔う、これが本当のお通夜だそうだが、息子とあれこれ昔話をしながら最期に今後の事を話し合った。その後、2人の息子は家内のベッドの下で2人並んで寝た。

翌朝、横で一緒に寝ることが出来て本当に良かったと満足した様子だった。これも在宅で看取ったので余裕をもって出来たのだと思っている。

話が戻って、今後のことである。

家内が亡くなって2人になったらこの家は広すぎるので、どこかに引っ越ししよう、そしてこのマンションは売ろうと提案したところ、2人とも同意してくれた。

死んだ日の翌日に葬式の式場に遺体を搬送したので、その夜は暇になり、17年前、ここに引っ越してきた時に媒介契約した不動産屋に電話した。

そこから引っ越しの段取りが決まっていって、2月の後半には新しいところに引っ越すことになっている。

このマンションを売るためにフローリング、壁紙、介護のためにしたリフォームの見直しなど誰かに買ってもらうための全面的なリフォームを実施することも決めた。

職場では

まわりの人は、みな、「どう声をかけたらいいのか分かりませんが、気を落とさないで」と優しく言ってくれる。

主治医の先生は忙しい人なので、電話で挨拶したところ「奥様、頑張られましたね、先生もです。お二人ともよく頑張られたと思います」という返事が返ってきて、思わず絶句して涙がポロポロ流れてしまった。

それ以外はどうやらこうやら落ち着いて対応することが出来ている。

手続き

今は相続問題で不動産の名義の書き換えや銀行口座の凍結など、色々面倒な手続きで忙しくしています。落ち着いたら続きを書きます。

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