道東を発見する旅 第3の人生

チェスの名人、悪循環を断ち切る

チェスの名人

半年くらい前だったか、新聞の書評欄で興味を持った本がある。すぐアマゾンで注文したのだが、そのまま積んであった。先日、ページを開いたのだが、読んだ箇所がすごく印象に残ったので、それを紹介します。

著者は幼いころからチェスを嗜み世界チャンピオンになった人なのだが、その後、なぜか太極拳の世界チャンピオンになった人だ。

引用元

「習得への情熱ーチェスから武術へ」ジョッシュ・ウェイキン、みすず書房

悪循環

第6章77ページから78ページまでの一部分を引用

18歳からの4年間、僕はニューヨーク公立116小学校で才能ある少年少女チェスプレーヤーたちをコーチしていた。

僕はあの子たちが大好きだった。

彼らとともに最高な時間を過ごし、彼らの成長を見つめ、このチームが市のチャンピオンとなり州のチャンピオンとなり、その中の2人がそれぞれ個人戦で全米選手権タイトルを取る姿を目の前で見ることができた。

僕が彼らに教えたことの一つは、重大なミスをした後でも澄んだ精神状態をすぐに取り戻して、しっかりと今という瞬間に気持ちを据え続けることの大切さだ。

これにはあらゆるタイプの競技選手やパフォーマーが苦労している事だろう。

実は最初に犯したミスがいきなり大惨事を招くことはほとんどない。

そうではなく、そのミスが悪循環となって第2、第3、第4のミスを呼び込み、壊滅的な連鎖反応を生んでしまうものなのだ。

引用終わり

ここまでの感想

ここまで読んで、自分もそうだろうと共感した。

たとえば、投資もそうである。

大損して自己破産した人の話をネットで見かけるのだが、損した後に、それを挽回しようとして一気に勝負を賭けて大損して破滅するものなのだそうだ。

なぜ、そうなるのだろうか。それには人間の心理が関係しているという。

人間は10万もうけても、それほど心を動かされることはないけれど、同じ10万円でも損したとなれば、精神的に大きく動揺してしまうものだ。

損してしまうと、損する前にくらべて損することへの閾値(損することへの心の許容レベル)が大きく下がってしまう。

それで、一気に損した分を取り返そうとして大勝負に出て取り返しがつかなくなってしまうのだそうだ。

だから大事なのは、損したとしても冷静になって損切りをすることであり、前後の見境がつかないままに決断しないことだという。

さて、この後、話がどう展開していくのだろうか。

ある出来事

80ページから84ページまでの一部分を引用

まだ18歳だった当時は、方法論も粗削りだったものの、ミスがミスを呼ぶ連鎖反応を回避することの大切さは広くさまざまな分野にあてはまるものだとすでに理解していた。

そのころ毎週、水曜日は小学校までの3.2キロを歩いて通うのが日課だった。

マンハッタンで育った人なら誰でも、道路を横断する前に左右を確認することがいかに大切かを知っている。

大渦巻きのようなニューヨークの中心部で僕は信号を待っていた。

ほんの数フィート離れたところに、若くて可憐な女性がヘッドホンの音楽に身体を揺らしながら、やはり信号待ちをしていた。

グレイのひざ丈のスカートに黒いセーター、そして白いスニーカーといういでたちは、歩いてマンハッタンに通勤するオフィスワーカーのそれだ。

この女性が不意に車のビュンビュン行き交う車道に足を踏み出した。

おそらく漠然としたこの町の一方通行のシステムで勘違いしたのだろう、彼女はブロードウェイの反対方向に目を向けていた。

右だけを確認しながら車道に出た彼女の左側から自転車が突っ込んできた。

この自転車は間一髪のところで咄嗟に自転車を傾けた。

彼女に当たりはしたものの、軽い接触だけで無傷のまま事なきを得た。

そこから先の出来事を、僕はまるで時間が止まったかのように記憶している。

それは彼女の生命にかかわる重大な出来事だ。

もしもあの時、彼女が素早く歩道に跳び戻っていたら、いつものようにあの交差点を通り過ぎるだけですんだはずなのに、彼女は歩道に戻りもせず、スピードを落とすこともなく走り去っていくあの自転車の後ろ姿に向かって罵った。

引用終わり

感想

結局、この女性は猛スピードで角を曲がってきたタクシーに背後から衝突され、空中に3メーターほど放り出されて街灯に衝突し気を失い大量の血を流したそうだ。

著者は、このエピソードを通して、ミスした後に慌ててミスを重ねる事の悪循環を防ぐことの大切さを、子供たちと共有した。

その結果、ある子がチェスのゲームでミスをするが、このエピソードを思い出してリカバーすることが出来て勝利につながったことを書いている。

ブログで自分はこんなに長々と本文を引用することは無かった。

この著者の巧みな心理描写でどんどん引き込まれてしまい引用せざるを得なかったのだが、それでもかなりの部分を端折っている。興味のある方はぜひ読んでいただきたい。

きっと、著者はまるでゲームの重要な局面を記憶しているかのように、その場面をすべて記憶しているのだろう。

まだ、本を読み始めたばかりなので太極拳のチャンピオンになる過程はこれから読んでいくことになるけど、どう展開していくのか楽しみである。

さて、このエピソードのように我々も同じような過ちを日常生活のいろんな場面で繰り返しているのだろう。

自分は小さな事を気にしてくよくよする癖がある。

たとえば、本を片付けようと思ったが、本棚にスペースが無いので積み重ねて床に置くとする。

すると、それ以後、それを見かける度に、「片付けなきゃ」、と思う。そこで、ミスを認めてちょっとでいいから片付ければ気分は楽になるはずだ。

しかし、これだから自分はダメなんだとネガティブになり、何もせず先送りする。

それが毎日続いて、自分の心の中で「自分はダメだという思いの種」が芽生えて成長していくのだ。

そしてホコリが積み重なるように、心にも「自分はダメだ」意識が高く積もっていくのだ。

それが自己評価を下げてしまうのだ。

そんな訳で悪循環を断ち切るには、自分はダメだという思いの種が出る前に、見かけた瞬間にミスを認めて、ちょっとでいいから何か対応して自分の心の思いの種を摘み取っていくのが、大事なポイントなのかな、と思う。

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