誰だって、漢字を思い出せないことはある（よね？）。

　家電店でCD-RとMDを購入した。で、領収書をお願いします、と告げた。店員さんは頷き、領収書に宛名と金額を書き込む。続いて、顔を上げて言った。

「但し書きは何にしましょう？」
「えっと、CD-R等、で」

　店員さんは再び頷き、「CD-R」と書く。しかし、そこで手が止まった。ボールペンを握ったまま、しばらく時間が止まったかのように動かない。何が起きたのだ？　もしかしたら、この店員さんはものすごく人間そっくりに作られたロボットなのかも。急に回路がショートしたりして故障したのだろうか。あ、そういえば、今は夜の8時ちょっと前だ。この店の営業は8時までだから、その時間に自動的に停止するようプログラミングされているのかも。時間の設定が少し間違っていて、閉店時間より早くストップしてしまったのだろうか。
　などと思っていたら、店員さんの手が動き始めた。ボールペンの芯が紙の上を滑り、文字が書かれていく。しかし、そこに僕が見たのは「等」ではなく、「他」だった。「CD-R等」ではなく、「CD-R他」。

　まあ、簡単な漢字だって、いざ書こうとすると思い出せないことがあるもんね。僕も人のことは言えません。