もう一人の主人公は、チュートリアルの徳井義実が演じるワケあり青年。亡くなった親から継いだ民宿に住んで自活している。その暮らしっぷりは実にストイック。一人で野菜を育て、家畜を飼い、魚を穫り、料理する、という完璧に自給自足の生活を送っているのだ。ある意味、スーパーマン。ちょっとカッコよすぎるんじゃないかとも思えるけど、それも嫌味にはなっていない。
加藤ローサは田舎での暮らしの中で徐々に明るさを取り戻していく。というか、目覚めた当初から、めちゃめちゃ元気で、なおかつ積極的である。通りすがりに出会った人に話しかけ、そば打ちに挑戦し、よく食べ、よく眠る。その天真爛漫さは周囲の者にも影響を与え、ある熟年夫婦の冷えきった仲を修復させてしまう。この辺りの展開はベタであるが、やはり微笑ましい。
ツッコミどころは多々ある。「死のうと思っていた割には能天気すぎ」とか「運転手さん、そんなに心配だったのなら、自殺を思い留めるように車中で何か言えばいいじゃん」とか。でもまあ、そうした欠点を補って余りある幸福感に満ちた映画なのである。絵に描いたようなハッピーエンドではなかったからこそ、しみじみと満ち足りた気分にさせてもらえた。オススメ。
お気に入り度 ★★★★★★★★☆☆
※『天国はまだ遠く』公式サイト→http://www.tenmada.com/
※名古屋では伏見ミリオン座で公開中です。
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