ひかりとしずく(虹の伝言)

勉強会や講演会、上映会のレポートなど主に載せています。

ブータン  ④  仏教の教え

2012-05-22 | ポルカさんのちゃぶ台だよりから
経済力より幸福力という高い夢をブータンは実現していってほしいと切に願うものです。ただ、人間性の悲しい面があります。「笛吹けども踊らず」ということばのように上の方からの思いが下にそのまま伝わらないという現実です。私の弟のいる会社は社員150人の中規模会社です。経営能力、人徳共に優れたトップに恵まれています。M専務の就任時の挨拶はブータン国王のことばに似て感動的でした。
「私は皆さんがこの会社に勤めて本当に幸せだったと思える会社にすると誓います。」
今の不況で営業成績は伸び悩みながら、150人の社員とその家族を路頭に迷わすことは出来ないと必死の努力をしている。しかし管理職にある弟から見て、社員の就業意識は低い。“わが会社を自分の手で盛りたてる”という気概に乏しいと嘆きます。

先代(4代)国王の戴冠式での演説の一部を引用します。国民一人ひとりへの切なる訴えに心打たれます。この国王の手でブータンは民主体制に移行していきます。
「現在、われわれの前にある最も重要な課題は、将来にわたるわが国の継続的発展を確実なものとするために経済的自立を達成する事である。ブータンの人口は小規模であるが、豊富な土地と豊かな自然資源、健全な計画を以って近い将来にわれわれの目標である経済的自立の達成を実現することができるのである。
あなた方国民においては自身の快適な生活の構築が政府によってすべて行われるべきであるという態度を身につけてはいけない。あなた方のささやかな努力は政府の多大なる努力よりはるかに功を奏すのである。」      1974年

今の5代国王も国民一人ひとりの意識を涵養してやまない。国内の大学で自ら学生たちに語りかける機会を定期的に設けている。そこで発せられる言葉には、国の未来を若者たちとともにつくり上げていこうという姿勢が示されている。
「この国の歴史にとって今は非常に特別な時期と言えます。民主化成功に向けての尽力いかんによって、これからのブータンに安定した未来が訪れるかどうかが決まるのだと思います。そしてそれを担っているのがあなた方なのです。」
「私はあなた方の望みを自分のものとして受け入れ、その達成のために働きかけていきましょう。ですから、あなた方は大きな野望を抱いてください。大きな希望を抱いてください。あなたと、そして私たちの国のために。」

若い国ブータン、小さい国ブータン、これからの人類に希望の灯をかかげてほしいものです。「山紫水明 偉人を生む」という諺がありますが、ブータン王国は名君を生んでいます。王政から民主的な立憲君主制に変えたのも国王自らのリードによります。これは歴史上珍しい変革でした。
「ブータンは小さいが強い国です。」(4代国王)

(二) 政教一致だからできる
ブータンはチベット仏教の一つドック派を国教とする仏教国です。国王とジェ・ケンポ(大僧正)の地位は同格。GNHという理念、価値観にはこの宗教的背景があるといわれます。
田中敏恵氏のことば・・・
「ブータンではかつて家族からひとり僧侶として出家させるのが不文律のようになっていたという。今ではそこまでの割合で割合ではないにせよ、親戚まで含めた一族には僧侶になった者が必ずいるそうだ。寺院以外でも僧侶の姿はあちこちで見かけるし、彼らと一般大衆の距離も非常に近い。僧侶たちの生活がブータンの人々の生活のお手本であり、価値観に大きく影響を与えているのだ。」

今枝氏・・・
「ここが日本と一番大きく異なるところだと思うのですが、ブータンの僧侶は皆無所有で独身なのです。誰ひとり自分が所有する家屋を持っていません。持ち物といったら、腕時計とラジオ、懐中電灯に携帯電話、その程度でしょうか。他は着替えを2・3着、そんなものです。しかし、人々に尊重され同時に人々を感化する存在でもある。ブータンの人々は、たとえ豪華なものを所有していなくても、人は尊敬される存在になれるし、心の充足を得ることもできるのだということを実感しているのでしょう。身近な存在である僧侶たちを一つの手本として実質社会において生きる哲学や幸福について理解しているのだと思います。自分の一族に僧侶というお手本となる人がいる。そのことが精神的に大きな支えとなるのだと思います。

田中敏恵氏著書より
「仏教の教えがリアルであるということ。それは人々の暮らしを律し、人生観に影響を与えるのも確かであろう。ブータンでは、国王や首相の演説にも仏教の教えや用語が出てくることが非常に多い。身近な存在の僧侶、そして国を牽引する存在の王や首相もまた、信仰心の篤い仏教徒である。輪廻転生を信じる民は、来世での幸せを願い、現世で努めて善い行いをしようとし、進んで人を助け、徳を積む。そのような人生観は若者たちの心境にも大きく影響するだろう。」

西田先生の講演のあと、個人的に二、三お伺いしました。
① 総人口における僧侶・尼僧の割合(資料がなく残念ながら不明とのこと)
② 僧侶と民衆の距離が近いということですが?
「はい、ブータンではしょっちゅう何かあるとお坊さんを呼んで集まりをしています。子供が生まれた、誰々が結婚した・・・色んな出来事があるとお坊さんに法会を営んでもらい村人みんなで会食をするんです。」
③ 一般の人も読経とかするのですか?
「はい、皆さんまじめです。仏壇を飾ることにお金をたくさんかけています。」
④ 小学校とか学校で仏教のことを教えているのですか?
「はい、宗教の時間が設けられています。」
⑤ ブータン語(ゾンガ語)で「ありがとう」とはどう言われますか?
 「“カディンチェ(ラ)”といいます。」
 (私は合掌しながら西田先生にお礼を申し上げました。
先生、今日はとてもよい勉強をしました。カディンチェラ!)

ポルカ

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