ひかりとしずく(虹の伝言)

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Think about PARTNERSHIP

2012-07-30 | 季刊誌なな色メールより
以前にSさん紹介の佐々木正美先生の本『完・子どもへのまなざし』を読みました。シリーズの前作二冊も再読しました。日本社会のあり方に厳しい警告が示唆されています。

★現代の発展した国ほど個人主義が幅を利かせており、お互い相手に対する責任を持ちたくないので、干渉を嫌い深い関係を避け、犯罪においてすら“自由”となっている。

★小さい子どもたちがままごとをするとお母さん役が存在せず、果たして始まったおままごとの登場人物たちは各々好きなことをしている。

★お母さんが中心になって担う子育ても“虐待”という問題が著しく増えています。(高齢者に対しても同じく)

★核家族家庭、同居家庭に関係なくそれぞれにある短所が現れている。それは大人が“自分が愛されたい”という存在であり、そのままの子どもを愛せない状態にあるからだというのです。人を信じる力が弱く、“ひきこもり”、“コミュニケーション能力の低下”が生じているのは家庭内で安心して本音を言えない状況だからと。

著者の佐々木正美先生は児童精神科医です。人間の成長について、エリクソンのライフサイクルモデルを引用しています。シュタイナー教育での発達段階と共通しており、とても納得させられました。

乳幼児期は愛される喜びを与える時期です。その時期にありのままを受け入れられた、愛されたという実感のある、母性性が十分に与えられた子どもにしか次の父性性(社会的規律)が伝わっていかないというのです。私たちはつい子どもの将来のことを心配してあれもこれもできる子になってほしいと望みますが、今幸福でない子どもに将来の夢や希望を明るく描くなどできないと。

子どもは近くにいる大人の影響を受けます。“子供は親の鏡”と言います。我が家の子どもたちを見ていると本当にそう思います。自分の悪いところが見えてハッとする時があります。「子どもが思いやりのある関りを周りの人間と持てているのか?」それは、私たち大人が人の不幸を共に悲しみ、喜びを一緒に喜べているか、相手のことを思いやって生きているのかによります。本当に自律した大人というのは、うんと迷惑をかけることができる人を沢山持っていて、相手からも迷惑をかけられることを受け入れることができるものとのこと。

「人間は人との交わりによって不安はなくなるのです。配偶者から失いたくない存在だと思われていれば自分に十分自信を持てる。自分を信じる事ができれば夫婦という関係だけでなく他の人も信じることができるものである。その結果、友人や知人に恵まれ、さらに自分に対しての自信が育つ。」 「母親が育児に肯定的になれるかなれないかはこのことがとても大切でいくら夫が育児に協力的だとしても、夫婦がお互いに尊敬し合い大切に思い合っていない家庭は育児も上手くいかないのです。」佐々木先生の本より・・・。

それから健康な家庭では父親がイニシアティブを持っているものだと著書にありました。父性が薄いと母親が父性を満たそうと女性らしくない関わり方となってくるともあります。我が家も正にその有様でした。私は家庭内を仕切っているつもりでしたが、私の強い態度は反発を招き家庭内の平和を乱していたようです。夫から家族が求めているのはスーパーウーマンでなく、女性らしさや母性のある母親だと言われました。


<エリック・H・エリクソンのライフサイクルモデル>

発達課題

Ⅰ 乳児期「基本的信頼」 愛情を受けて育つ事で人を信じることができるようになる

Ⅱ 幼児期(2-4歳)「自立性」 体の排泄や清潔への欲求を穏やかにくり返し教えること。自尊感情を傷つけてはいけない。→自己卑下、劣等感、敵意、拒否感情へつながる

Ⅲ 児童期(4-7歳)「自主性」 いたずらは実験。遊びは共感する心。

Ⅳ 学童期(小学校)「勤勉性」 社会のルールを守り、社会的役割、責任を果たし生きる。友だちと教えあう喜び。お互いに育ち合っていく。(健全に経過するには前期3項目の課題をしっかりと根っこに持っていること)

Ⅴ 思春期(13-17歳)「アイデンティティー」 “自分というものはこういうもの”の実感“アイデンティティーの確立”時期。価値観を共有できる友だちを持つ;自分の中に取り込みたくなるような人との出会いで成長する

Ⅵ 成人期 「親密性」(前提に自己の確立が必要)
他者とお互いに対等の関係で交わる人間関係の営みをもつこと
自分を懸けるほどに信頼できる人と出会った時人は生き生きといきることができる(生産性、創造性・・・社会的貢献)


Ⅶ 壮年期 「世代性」
次の世代に先人から受け継いだ文化、技術、思想などを自分が生きてきた証として実践してきた事を加え、教え伝えていく(人間社会の倫理)
(現代の日本社会では家庭、地域社会の崩壊により古いものを伝えていくことがなく、幸福な壮年期が送れないでいる

Ⅷ 老年期 「統合」
健全な壮年期を送った後、自分の老いを受容し、宇宙の秩序の中に生を受けたこの人生を幸福だったと思うことができる

(あなたは今どの時期ですか?)

今は皆自己中心でわがままになっているのではないでしょうか。“クレーマー”が増えているという話も数年前から聞きます。本書でも自分の要望が通らないと文句を言う、他人と一緒にくつろぐ事ができない人間が多くなっているとあります。子どもを地域やスポ少やボランティア活動など色んな場へ連れ出し、自分たち家族以外の家族と一緒にレジャーを楽しむなど、多くの人と関わりを持つのがいいとのこと。学童期は友だちと学び合うことが大事なのです。


“家庭の役割”

1・ ありのままの自分を安心してさらけ出せる場であるということ・・・母性性

2・ 人は何のために生きるのか、どういう価値観をもって生きていくのか、どういう理想を持つべきかなど考えていく(家庭内の主義・ルール・規程)・・・父性性

たとえ片親であろうとも、これがしっかりしていれば大丈夫でしょうし、また、家庭内の二人以上の大人の考えがバラバラでまとまりなく、しかも反目しあっているようでは誰も幸せになれないのです。これから私は家族それぞれのいい所を認めていきたいと思います。自分ばかり頑張ろうとせず他の家族の力も上手に借りて支えあいたいです。特に子どもたちには、彼らの長所を感じ取って本人たちに伝え、気付かせてあげたいです。
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