あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

何かとやられた!

2013-11-09 | 本(文庫本)
荻原浩さんの『コールドゲーム』を読みました。
何となくクスクスっと笑えて読後は幸せな気持ちになりたかったので、荻原さんの作品を選びました。が、タイトルからも何となくお分かりかもしれませんが、頭の中が完全にプロ野球の日本シリーズモードになっていたため、この作品を手にしたのだと思います。
そして読んで、やられちゃいました。当初の「何となくクスクスっと笑えて読後は幸せな気持ちになる」という風にはなりませんでした。

高校生活最後の夏休み。中学2年のときのクラスメートが次々と襲われていた。どうやら犯人はトロ吉と呼ばれていた、クラス中からのいじめの対象だった生徒。何故4年後の今になって、トロ吉は復讐を始めたのか? 次に狙われるのは誰なのか? 野球部での「最後の夏」が終わったばかりの光也は、有志を募って「北中防衛隊」を結成し、転校していったトロ吉の行方を捜しはじめるが……。

いじめの問題――。このテーマって難しいですよね。「終わり」を書かなきゃいけない小説だと、何となく綺麗事で終わったりすることもあるけど、でも現実問題としては、決して綺麗事では済まない。気持ちの持っていきようが迷子になってしまうだろうし。
そこをあえて、荻原さんは書いたのでした。それの報復はただの「仕返し」とか「悪戯」にとどまらず、犯罪にまでなってしまっています。そしてやはり後味は「爽快!」とはいかないものでした。
光也たちは、この先長い人生を送らなければいけない中で、トロ吉とどう向き合うのだろう。それがとても気になりました。彼らの人生が、中2のあのときで決まってしまったとしたら、後悔してもしきれないだろうし、高3の夏休みですべてが採算できたわけではないことを、どう自分の中で処理するのか。――話の続きが気になります。読みたいような、読みたくないような……。
光也の同級生たちのキャラクターはそれぞれに魅力的で、彼らの会話にクスッとさせられる部分もありました。ここは救いだったかな。そして少年課のやさぐれた刑事もいい味出していたし、ヒマな喫茶店のマスターの存在感ったら!

本作を読んだ感想としては、作品自体のことではなく、荻原浩という作家さんの凄さを見せられたような気がします。「この人、何でもかけるんだな~」って。
ほのぼのとした雰囲気があって、とにかく面白いユーモア小説を読ませてくれたかと思えば、シリアスな作品もじっくりと読ませてくれるし、本作に至っては「サイコホラー」なテイストでブルッとさせる……。「やられた~!」と唸るしかありませんでした。
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