週末のランチ

近所にある小さなパン屋さん。おじちゃんとおばちゃんの夫婦2人で営んでいるお店です。おじちゃんがパンを焼いて、おばちゃんが小さなショーケースの後ろで売る。このお店は昔からのファンが多く、私もそのうちのひとりです。
最近のこじゃれたパンは、甘くてフワフワした生地ばかりだけど、ここは生地がしっかりしていて、小麦の味がわかる、噛み応えのあるパンを提供してくれます。それでありながら決して硬くない。実に「塩梅の良い」食感です。私は、コッペパンにソースのかかったじゃがいものコロッケだけが入った、シンプルなコロッケパンが好きです。

このパン屋さんが、春、長くお休みしていました。「どうしたのかなぁ？」と気になっていました。そしてある日の夜、店の前を通ると、シャッターに貼紙がしてあるのを見つけました。
「暫く休業しておりましたが、○日より営業いたします」
それを読んで「おじちゃんの体の具合が悪かったのかな？でも良かった～」と考えていました。しかし翌日、またお店の前を通りかかったとき、別の紙がその下にあり、紐にくくられたペンも一緒についていました。紙に書かれた一文を目にしたとき、一瞬、息を吸うのも吐くのも忘れてしまいました。
「お父ちゃんがんばれ！天国のお母ちゃんも応援しているよ！」
このお店のファンが貼った紙とペンでした。おじちゃんへの応援メッセージは、日に日に増えていきました。

おばちゃんは、愛想があるのかないのか、ときどきわからなくなるキャラでした。
いつだったか、おばちゃんがTVをキャッキャ笑いながら見ている時に買いに行った私。注文を受けているときも、パンを袋に入れるときも、おばちゃんの目はTVに釘付けのまま「はい250円です」。心の中で『え～っ?!』と思いつつ笑ってしまいました。

おじちゃんひとりで営業再開したのは３週間前。パンを焼くのも接客するのもおじちゃんひとり。もう年金をもらっていそうな年齢のおじちゃんひとりで切り盛りするのは大変そうですが、お客さんはたくさん来ています。私も週末には必ず買いに行っています。土曜日にコロッケパンを買ったので、日曜日はサラダパンとカレーパン。クリームパンはお夜食用です。
おじちゃんのパンは「パンを食べている」と実感できる、ずっと変わらない味。いつまでも元気で頑張ってほしいと願います。おばちゃん、ありがとう。やすらかに。