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「オペラ座の怪人」勝手に解説
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「オペラ座の怪人」第2幕 第4場

2021-09-21 | 趣味

※当ブログのシステム設定により、行途中でのスペースが意図したとおりに表示されないことがあります。英語の台詞や歌詞及び和訳ではおかしな表示が現れることになりますが、ご容赦ください。

(照明が落とされる中で支配人の事務室のセットが片付けられる。ピアノや椅子が運び込まれ、第4場、リハーサル室の場面に代わる。音楽監督レイエの指揮・指示により怪人が作ったオペラ「ドン・ファンの勝利」の歌唱リハーサルが行われている。)
※もちろん「ドン・ファンの勝利」というオペラは実在しない。ロイド・ウェバーがこのミュージカルの中で使用するために仮想オペラの一部として数曲創作したものである。第1幕の架空のオペラ「ハンニバル」や「イル・ムート」にはそれぞれベルディー、モーツアルト風の趣が感じられたが、「ドン・ファン・・・」は現代音楽風でロイド・ウェバーの優れた創作能力が現れているとされる。
ドン・ファンは17世紀スペインの伝説上の人物で、好色放蕩な美男として多くの文学作品に描写されていて、プレイボーイ、女たらしの代名詞でもある(ウィキペディア)。このミュージカルの中では、怪人がオペラの上演途中にドン・ファン役のピアンジに入れ替わり、アニータ役を演じるクリスティーンを誘拐しようとわざわざそのオペラを書いたことになっている。

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CHORUS:(コーラス)
Hide your sword now, wounded knight!       傷ついた騎士よ、さぁ剣を隠せ!
Your vainglorious gasconade brought you to your final fight -
あらゆる自尊心が最後の戦いへと導いたのだ
for your pride, high price you've paid!      自尊心のために大きな対価を払ったのだ!
※ドン・ファンは女性を争って決闘まがいのことをしたのだろう。そしてこの歌詞は彼が勝利し自尊心が満たされたことを表している。この「ドン・ファンの勝利」では性的な、あるいはそれに関する暗喩が歌詞の中に出て来る。

CHRISTINE:(クリスティーン)
Silken couch and hay-filled barn - both have been his battlefield.
つやつやのカウチと干し草の納屋、それらはずっと彼の戦場
※この歌詞はドン・ファンがあらゆる場所で女性遍歴を重ねてきたことを暗示している。

PIANGI:(ピアンジ、音程を外してしまう)
Those who tangle with Don Juan...      ドン・ファンともつれ合う者は…

REYER:(レイエ)
No, no, no!  Chorus - rest, please.       違う、違う!コーラスは休んでいてください。
Don Juan, Signor Piangi - this is the phrase.
ドン・ファン、ピアンジさん!こういう具合にするのです。
'Those who tangle with Don Juan...'  If you please?
「ドン・ファンともつれ合う者は…」という具合にです。

PIANGI:(ピアンジ、なおも音程を外す)
Those who tangle with Don Juan...       ドン・ファンともつれ合う者は…

(ピアンジが音を外すのをコーラスの一人が笑う。レイエはそれを制して・・・)

REYER:(レイエ)
Nearly - but no.  'Those who tang, tang, tang...'       近いけど、まだ。「もつれ、もつれ、もつれ…」

PIANGI:(ピアンジ、まだ外れている)
Those who tangle with Don Juan...       ドン・ファンともつれ合う者は…
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CARLOTTA: (カルロッタ)
His way is better. At least he makes it sound like music!
彼のやり方の方がいいわ。少なくとも音楽らしく聞こえるもの。

GIRY:(マダム・ジリー)
Signora - would you speak that way in the presence of the composer?
作曲者がいる場でそんな風に言える?

CARLOTTA:(カルロッタ、ゆっくり立ち上がり・・・)
The composer is not here. And if he were here, I would...
作曲者はここにいないわ。もし彼がここにいたとしても…

GIRY:(マダム・ジリー)Can you be certain of that, Signora...?      はっきりそう言えるわけね…?

(カルロッタ、何も言い返せずに椅子に座る。レイエ、場をとりなすように・・・)

REYER:(レイエ)
Once again, if you please, Signor Piangi.      After seven...  Five, six, seven...
もう一度、ピアンジさん!7番から…イチ、ニ、サン…

PIANGI:(ピアンジ、再び音程を外す・・・)
Those who have been tangling with Don Juan.      ドン・ファンともつれ合っている者は…
※関係代名詞 who 以下が今までは現在形だったのに対しここでは現在完了進行形が使われている。現在形は現在の習慣的な動作・状態を表すのに対して現在完了進行形は過去から続く動作が現在も進行中であることを表す表現である。「もつれ合う」と「もつれ合っている」では後者の方が生々しく感じられる。もちろんピアンジは音程を取るのに夢中で現在完了進行形のニュアンスを意識していたわけではないだろう。

CARLOTTA:(カルロッタ、かんしゃくを起こして・・・)
Ah, più non posso!  What does it matter what notes we sing?
あぁ、もうできない!どんな音程で歌うか何か問題なの?
No-one will know if it is right, or if it is wrong.
誰も正しい音程かどうかなんて分からないわ。
No-one will care...       Those who tangle with Don Juan!
誰も気になんかしない… ドン・ファンともつれ合う者!

(ここで突然誰も弾いていないピアノが鳴り出す。皆、静まり返りピアノを聞く。そのうちピアノの演奏に合わせてコーラスが全員操り人形のように正確な音程で歌い出す。クリスティーンだけがそっと皆から離れる。)

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ALL EXCEPT CHRISTINE:(クリスティーン以外全員)
Poor young maiden!  For the thrill on your tongue of stolen sweets
かわいそうな乙女!盗んだお菓子を舌で味わうスリルと引き換えに
You will have to pay the bill - tangled in the winding sheets!
シーツに絡められてつけを払わねばならない
※ドン・ファンは言葉巧みに女性を誘惑し、酒食を堪能させ自分のものにするということを繰り返してきており、怪人のオペラの中でもそのようなシーンが出現する。このコーラスはそういった場面の予告として歌われている。
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※舞台が暗くなり、次の背景が現れるまで若干の間があるので公演上では第4場はここで終了と解釈できる。しかし文字による台本では、その場を離れたクリスティーンが次の歌(第5場で扱う)を歌い終わったところで第4場の終了となっている。

In sleep he sang to me, in dreams he came...
That voice which calls to me and speaks my name...

Little Lotte thought of everything and nothing...
Her father promised her that he would send her the Angel of Music...
Her father promised her... Her father promised her...