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「オペラ座の怪人」勝手に解説
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「オペラ座の怪人」はじめに

2021-03-27 | 趣味
2011年10月にロンドンのロイヤル・アルバートホールで行われたミュージカル「『オペラ座の怪人』25周年記念公演」のDVDをベースに個人的な解釈や解説をアップしたいと思う。投稿は気まぐれになりそうなので、いつ最後まで到達することやら・・・

原作はフランスの作家ガストン・ルルーによって書かれた同名の推理小説で1909年9月下旬から翌年の1月上旬まで新聞に掲載された。この小説はこれまでに何度か映画化され、ミュージカルにもなっている。ミュージカルで知られているのはケン・ヒル版(1976年初演)とアンドリュー・ロイド・ウェバー版(1986年初演)であり、ケン・ヒル版の方が原作に近いあらすじになっている。しかし、今ではロイド・ウェバー版が代表作のようになっていて、ロンドンでの初演以来、ミュージカルとしては「レ・ミゼラブル」についで2位のロングラン記録を更新中(コロナ・ウィルス感染症の影響で約1年強の中断あり。2021年3月末現在では同年6月下旬に再開の見込み。)で、ニュー・ヨークのブロードウェイでは1位のギネス記録を更新中である。このことからもロイド・ウェバー版がいかに人気があるかがわかる。

ガストン・ルルーは原作を、怪人に指導を受けて頭角を現す歌手クリスティーンと、彼女が怪人に傾倒していく様子を見て悩み苦しむクリスティーンの幼なじみのシャニュイ子爵(ラウル)、そして怪人のクリスティーンやラウル等を巻き込む異常な行動を軸にした怪奇ロマンとして描いた。それをアンドリュー・ロイド・ウェバーはラブ・ストーリーのミュージカルに仕立て直し、1986年、ロンドンの劇場「ハー・マジェスティーズ・シアター」で初演。彼のミュージカルでは原作の内容が大幅にカットされているが、同時に原作にない設定も組み入れられており、原作よりも単純化されているとはいえ、ストーリーや背景の複雑さの点で他のミュージカルよりも内容を深く楽しむには難しさがあるように感じられる。しかしストーリーの背景に関するある程度の予備知識を持ち、あるいは回数を重ねて劇場に足を運べばミュージカルとしての素晴らしさをより堪能できるだろう。

米英ではトップに位置付けられている「オペラ座の怪人」ではあるが、日本では残念ながら公演回数から見る限りトップではない。日本では厳密な意味での連続公演記録は存在しないが、公演回数のランク及び人気では「ライオン・キング」や「キャッツ」の後塵を拝している。これは、「オペラ座の怪人」のストーリーが登場人物の相関関係及び背景の複雑さ、彼らの(劇中劇になっている)舞台での役割、そして劇中劇がストーリーの中で果たす登場人物とのオーバーラップが要因として挙げられるだろう。これらが舞台で日本語訳の歌詞や台詞を用いて提供されても、日本人にとっては深く理解し味わうことを難しくさせているからだと思われる。

本稿では、「『オペラ座の怪人』25周年記念公演」の台詞や歌詞とともに、ストーリーにまつわる一見蛇足とも思える事柄を気の向くままに記していこうと思う。