野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成23年1月23日 棒ノ折山から大仁田山

2011年01月25日 | 奥武蔵へようこそ
(ダム堤防の上から名栗湖を眺める)

今回は奥武蔵の縁辺、都県境尾根にある棒ノ折山から大仁田山を歩いてきました。棒ノ折山(棒ノ嶺)というと奥多摩側から山頂を目指すルート、またはさわらびの湯から白谷沢もしくは滝の平尾根を経て権次入峠を経由するルートが一般的です。しかし今回は白谷沢の西にある北東尾根を経て直接山頂を目指すルートを歩いてみました。以前の地形図には山道が載っていて、地図上では歩き易そうな感じです。下山先は以前訪れたことのある黒山を経て、そのまま都県境尾根伝いで大仁田山へと向かい、間野黒指へ下りることにします。

アプローチは白谷沢ルートと同じく飯能駅から国際興業バスでさわらびの湯へ向かいます。好天とここのところの暖かさに惹かれてか、バスは満員の混雑ぶり。諏訪橋バス停で多くの人が降りたのですが、何かイベントでもあったのでしょうか。名栗川橋で若いハイカーが降りた後は私とおじさんグループがさわらびの湯下車で、彼らも棒ノ折山へ向かうようです。車道を上っていくと有間ダムの巨大な堤防が見えてきます。何かと批判の多いダム事業ではありますが、この石積みのダムは構造美を感じさせます。

(有間ダム)

ダムの堤防の上を通って周遊道路を進むと白谷沢登山口に出ます。駐車スペースもあるので、北東尾根を上がって白谷沢を下るという周回コースにも使えそうです。おじさんグループとはここでお別れ。私一人北東尾根へ向かいます。白谷沢登山口を見送ってヘアピンカーヴを曲がると擁壁に階段が設けられています。階段を上がるとかなり傾斜の急な斜面に出ます。少しトラバースしてから登っていくのですが、下りに採った場合は滑落要注意。

(ダムの向こうに楢抜山)

(北東尾根の取り付き)

危険に感じた急傾斜を過ぎると少し斜度が緩んだ山道が一直線に続きます。枝打ちされた林には日差しが差し込み手入れの良さを感じさせます。通常のガイドには載らないルートですが、登る分には一本道で迷う要素はありません。登りに採る場合には地形図は無くても十分に歩けます。下る場合には頻繁に付けられたテープを丹念に追いましょう。道標は全くありません。

(尾根道)

岩が露出した平坦地で右から尾根が合流します。下りに採った場合でもここで右からの尾根に下る危険性は少なそうです。暫く緩やかな尾根が続くので、ここで息を整えます。再び右から尾根が合流する(厳密には左からも尾根が合流している)辺りはこの尾根一番の急な斜面。伐採木がゴロゴロとしており、かなり登りにくいところです。直登できない斜度では無いものの、踏み跡を追ったほうが楽でしょう。この急斜面を登りきると雑木林の緩やかな尾根に出ます。東斜面が大規模な伐採地となっている所が706のピーク付近。yyggさんのHP「四季の山便り」では単なる伐採地でしたが、現在では鹿避けの網が掛けられてしまいました。それでも網越しには楢抜山、登戸から子ノ権現への尾根、大高山・天覚山などが見渡せます。まあ展望はともかく、鹿避け網を固定するロープがかなりの邪魔者です。

(北東尾根一番の急斜面)

(大規模な伐採地)

(伐採地からのパノラマ)

林道によって切断された尾根の向かいには高さ1.5m位の擁壁があり、一本の丸太が置かれています。テープが擁壁上の潅木に付けられているのでここを丸太を使って登れということでしょう。「四季の山便り」では何本か丸太が置かれていたようですが、今回は一本だけでした。尾根の上に出ると相変わらず鹿避け網が続きます。尾根からあまり外れないようにするため網に沿って歩きたいのですが、網の側は落葉が積もり、踝くらいの高さまで足が埋まってしまいます。子供なんかいたら楽しい経験なのかもしれませんが、歩くには一苦労です。意外に急な斜面を登りきると尾根が広がります。周囲は一面の雑木林です。踏み跡は鹿避け網に沿って付いていますが、暗い植林との境で忌々しい網も終わります。地形図にもある広い緩斜面にはヤドリギなんかもあったりして奥多摩の雰囲気に似ています。尾根が痩せてくると山頂まではあと少し。

(丸太を使って登る)

(踝まで埋まる落葉の吹き溜まり)

(広い緩斜面)

薄の藪の脇を抜けると都県境尾根に出ます。棒ノ折山頂(969)はすぐそこです。広い山頂には20人ほどのハイカーがいます。若いグループは大学の山岳部のようです。山頂は期待通りの大展望で大持山・武甲山・蕨山・武川岳・伊豆ヶ岳・丸山・子ノ権現・関八州見晴台・越上山・大高山・天覚山・楢抜山・日和田山などの奥武蔵の主要な山々が一望できます。遠くの山はかすみがちでしたが、それでも榛名山と奥日光の山々だけは見ることができました。運良くベンチが空いていたので、朝食の食べかけの菓子パンを食べてゆっくりと休みます。

(棒ノ折山頂を望む)

(山頂パノラマ)

朝食の残りを食べている内に空が少し曇ってきました。まだ行程の半分も済んでいないので出発します。権次入峠への長い土留めの木段を下りていると名栗川橋でバスを降りた若いハイカーに出会いました。白谷沢登山口で別れたおじさんグループには出会わなかったので、白谷沢ルートや滝の平尾根ルートなどと比べると北東尾根はかなり短時間で山頂まで来てしまえるようです。まあ権次入峠を経由するルートもこの木段さえなければもう少し楽に歩けるんでしょうけれどね。木段が終わると緩やかな広い尾根道となります。都県境尾根は本来こういった道が多いのでしょう。名栗湖が見下ろせる権次入峠(893)は鞍部というよりはジャンクションピークと言ってよいでしょう。奥武蔵や奥多摩では時々山頂部を峠と言うようです。

(権次入峠から名栗湖)

権次入峠から黒山へは緩やかな下り坂です。道端に遭難レリーフがあったせいか以前はもっと急に感じたものですが、実際に歩いてみるとそうでもありません。慣れによるものであるとしたら色々な意味でちょっと恐ろしく感じます。植林を抜けて雑木林となると黒山(842.3)に到着です。特に展望に恵まれた山頂ではありませんが、冬枯れの今時は燦燦と明るい日差しが降り注ぎます。木の間越しに見える岩茸石山への縦走路や大岳山も目を楽しませてくれますし、何より棒ノ折山の喧騒から離れた落ち着いた雰囲気はたまらないものがあります。ラジオを五月蝿く鳴らしたオッサン(何故か鈴も持っていたような気がします)が通り過ぎた後は静かな山頂を独り占めです。

(黒山)

(大岳山 左の尖がりは御岳山奥の院)

黒山から先もしばらくは雑木林の気分の良い道が続きます。若干岩場の急降下があるものの、概ね緩やかな下り坂です。雑木林から暗い植林帯へ差し掛かる所で人の声が聞こえてきました。どうやら前方からグループの登山者が下りてくるようです。前方を注視していると動物が飛び出してきました。がっちりとした体躯と隈取をしたような顔は…カモシカです。奥多摩や奥秩父では時たま見掛けますが、奥武蔵周辺では珍しい。でもここも奥多摩と言えなくもありません。鈴を鳴らして歩いていたので野生動物に遇うことは殆ど無いのですが、グループ登山者の声に驚いてこちらの存在に気付かなかったのでしょう。写真を撮ろうと近づいたら逃げていってしまいました。

(雑木林の都県境尾根)

(カモシカの後姿)

グループが下りてくるのを待ってから植林帯を登っていくと傾斜が緩くなり、尾根が広がります。この辺り、エアリアマップでは馬乗馬場(776)というそうで、近くまで林道が延びてきています。確かに広い尾根ですが、乗馬の練習は流石に無理でしょうね。古い紙の地形図では林道が載っていないので、赤い杭のある776のピークから下りてきたときは林道の存在にちょっと驚きました。

(馬乗馬場)

馬乗馬場から先は単調な道。殆どは植林帯で歩きやすいものの、展望はありません。変わらない景色に飽きてくる頃、長久保山(686)に着きます。立派な基準点の上に奥多摩周辺の山でよく見かける達筆標識が置かれていました。なお、地形図だと689と標高が描かれているので、地形図の位置よりやや下ったところなのでしょうか。長久保山の次の小ピークを越すと次のピークは南を巻いていきます。巻き道で若い女性二人組と出会いましたが、小沢峠から歩いてきたのでしょうか。若いのに随分渋い所を歩いてますねぇ。巻き道の終わりにはベンチがあり、以前は展望が得られたのでしょう。641のピークの手前は広い伐採地となっており、転落防止あるいは鹿避けの網の向こうに岩茸石山が見えます。641のピークから急坂を下ると足元まで埋まったベンチのある鞍部に出ます。こんなに頻繁にベンチが必要なのか疑問もありますが、まあ小沢峠~黒山間は一般ルートなので必要なのでしょうね。二度目の伐採地を過ぎると土留めの木段が設けられた下り坂になります。木段を下り切った所が小沢峠で、ハンターのおじさん達が焚き火で暖を取っていました。

(長久保山)

(伐採地から岩茸石山)

(小沢峠への木段)

小沢峠から先、大仁田山まではエアリアに道が無いバリエーションルートです。「奥武蔵山歩き一周トレール」でも久方峠から大仁田山までしか紹介がありません。この先どうなっているのでしょうか。道標に書かれた「細田安楽寺」方面は今日一番の急坂です。こちらは土留めの木段がないので自分のペースで歩けますが、転落の危険性もあります。急坂を登りきると青梅市設置の基準点があります。うーん、三角点よりも立派だ。ここから先は細かいアップダウンが連続し、かなり体力を奪われます。踏み跡も薄くなり、潅木の藪にも引っかかれます。如何にもバリエーション然とした雰囲気です。迷いそうな分岐では必ず手製の道標が設けてあります。この道標が無いと地形図を持っていない限り、確実に迷ってしまうでしょうね。地形図を見ると見事なくらいに尾根の分岐に道標が設けてありました。

(手製の道標)

三ヶ所の分岐を過ぎると広い鞍部に出ます。小さな木のプレートがある久方峠(久林峠)です。このプレートは「峠のむこうへ」HPの管理人さんが作ってくれたものです。山にプレート類を付けるのを好まない人もいるかと思いますが、現在地を確認できるという点では手製の道標や標識の類は公共的価値があるものだと思います。あまりベタベタ付けられては確かに目障りですが、バリエーションだから標識を付けるなというのも乱暴な議論のように感じます。

(久方峠のプレート)

久方峠からはこれまでよりも大分道が整備されています。嫌らしいアップダウンがあるのは変わりありませんが、藪が無くなっただけでも有難いものです。道標にしたがい進んでいくと安楽寺と細田に道が分かれます。道標には細田と書かれた下に小さく大仁田山と書かれています。細田方面に入ると道が細く、奥武蔵っぽい雰囲気です。大仁田山の山頂付近は地形図通り緩やかな斜面で形成されています。道はそのまま東に下ってしまうので、適当に尾根に乗り上げると南から明瞭な道が上ってきています。道を登りきると三角点のある大仁田山頂(505.5)です。樹林に囲まれた落ち着いたピークは展望もないためか、誰も訪れる人はいません。

(大仁田山への小道)

(大仁田山頂)

時計を見るともう14時です。
間野黒指発のバスは15時20分に出る予定なので、それに間に合うように下ります。往路を戻り、尾根に上がらずに山道をそのまま進むと大仁田山分岐に出ます。ここから山頂へ行けば良かったんですね…。尾根の北を巻いていくと鞍部を経て小ピークを南に巻いていきます。細田への分岐を見送ると送電鉄塔が見えてきました。竹林があって人里が近くなってきたなと思っていると、開けた集落に出ます。集落内には道標があり、黒指と細田に分かれます。そのまま黒指へ山道を行くのも面倒なので細田へ下ることにします。

(細田集落)

集落内を下る道の脇には「監視カメラ設置中」「私有地立入禁止」など書かれた看板が立てられています。一瞬この道を通ってはいけないのかとも思いましたが、おそらく畑に入るなということなのでしょう。人気のない集落を抜けていくと車道に出ます。西か東かどちらへ下るか迷いますが、一先ず東へ下っていくと民家の前で車道が途切れます。反対だったか…と思いきや、間野黒指と書かれた道標が立ち、山道が更に続いています。下りていくと沢沿いの道に出ます。地形から考えると細田の集落から流れる沢に沿った道に違いありません。道はやがて舗装路となり、車道に合流します。合流点には道標があり、今歩いてきた道は「細田歩道」と書かれていました。ここからは広い車道で時折車が通り過ぎていきます。急な斜面に民家が建つ集落が黒指集落で、細田よりも世帯は多いような感じがします。更に車道を下っていくと大きな待合所のある間野黒指バス停に到着です。地形図だと神社記号のある辺りで、商店はありませんが立派な公衆トイレが設置されています。バスを待っていると中高年の御夫婦ハイカーがやってきました。地味な山域ですが結構歩いている人っているんですね。

(黒指集落)

(バス停待合所)

棒ノ折山北東尾根は登るだけなら初心者の人でも問題なく歩けます。下る場合は棒ノ折山頂から都県境尾根を西へ少し下ると切り分けがあります。道は明瞭ですが、706のピークを過ぎた辺りが分かり難い所です。テープが付けられていますが、地形図とコンパスをお持ち下さい。名栗湖に出る所は滑落要注意。歩く人は少ない(今回についていえば誰にも会わず)ので、相応の準備と覚悟は必要です。都県境尾根を歩かれる場合は小沢峠で行程を分けると楽だと思います。小沢峠から上成木バス停まではそう遠くない距離なので、エスケープとして使えます。

DATA:
飯能駅(国際興業バス45分)9:10さわらびの湯~9:35北東尾根登山口~10:16 706のピーク~11:01棒ノ折山11:12~
11:25権次入峠~11:42黒山~12:02馬乗馬場~12:25大久保山~13:02小沢峠~13:28久方峠~14:02大仁田山~
14:14細田集落~14:36間野黒指バス停(国際興業バス35分)飯能駅

国際興業バス 飯能駅~さわらびの湯 600円  間野黒指~飯能駅 430円         

地形図 原市場
山と高原地図 23 奥多摩

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