野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 2020年8月29日 不動三滝から黒山三滝

2020年09月01日 | 奥武蔵へようこそ
(大滝)

長い梅雨が明けると今年も暑い夏となった。しかしどこか遠くの高山へ涼みに行こうにも新型コロナウイルスの感染が心配である。そこで近場の納涼スポットでも散策してみようと考えた。例年なら比較的標高が高い奥多摩の滝を見に行くことが多いのだが、今年は奥武蔵の滝を見に行くことにした。今回は高山不動近くの不動三滝(大滝・不動ノ滝・白滝)にまず訪れ、関八州見晴台を越えた後、黒山三滝へ下りる計画を立てた。しかし暑さのため、関八州見晴台の登頂は断念することとなった。

西吾野駅から不動三滝へ
朝4時半に目が覚める。この頃暑さが続き、明るくなる前に目が覚めてしまう。どうせ早起きしたのなら朝早い電車で出かけてしまおう。空いた電車を乗り継いで6時半過ぎに西吾野駅に着く。駅舎を出るとボクより少し年上の男性二人組に声を掛けられる。クワガタムシが獲れる所は無いかと聞かれるが、虫はさほど興味がないのでさっぱり思いつかない。一応落葉樹が多い所をいくつか教えたが、今の時期にクワガタが獲れるのだろうか。ちなみにボクは中学生頃まで所沢の雑木林でクワガタを何度も獲ったことがある。雑木林を自由に出入り出来た頃の良い思い出だ。

西吾野駅から不動三滝へは2011年の秋に訪れている。今回も全く同じルートを歩く予定だ。高山不動の登山口がある間野の集落に入り、最初に見えてくる川が高畑川。その高畑川沿いに延びる道路を登っていく。最後の民家を過ぎると川の右岸が大きく伐採され、キャンプ場が出来ていた。9年前の記録には何も書かれていないので、その間に出来たのだろう。キャンプ場から5分ほど歩くと武甲工業のベルトコンベアが見えてくる。HPによると高畑積換所と書かれている。ベルトコンベアを過ぎるとしっとりとした杉林の道となる。日光が遮られ、今日のような暑い日にはありがたい。

(間野集落)


(高畑川を渡る 大木の裏側右へ進む)


(新しいキャンプ場が出来ていた)


(武甲工業のベルトコンベア)


(ベルトコンベアを過ぎると杉林に入る)

道路が九十九折に登っていく最初のヘアピンカーブから山道が延びている。ここが大滝、そして不動ノ滝・白滝・高山不動・関八州見晴台への登山口となっている。以前訪れているはずなのだが、全く景色に記憶がない。ただ9年前の記事のとおりの光景が広がっており、古びたベンチで休憩を取っていく。入口には比較的新しめの道標が立っている。9年前の写真を見ると以前にも立派な道標があったが、現在のほうが詳しくなっている。山道は高畑入の右岸を行く。整備された杉林を行くと朝日が差し込んでくる。雲の切れ間から光線の柱が放射状に延びる現象を薄明光線あるいは光芒と呼ぶが、今日のように奥武蔵では手入れがされた杉林で見かけることが多い。

(登山口にあるベンチ)


(ここが登山口 左に進めば高畑集落に至る)


(杉林の中の光芒)

鉄板の橋で対岸に渡り、尾根に出ると道標が立ち、大滝への分岐も延びている。ここも全く記憶に残っていなかったのだが、9年前の写真と見比べても全く景色が変わっていない。大滝へは白滝川の右岸をトラバースしながら下る。以前歩いた時は危なっかしい道に感じたが、よく整備されていて歩きやすい部類に入る。不動滝・白滝方面への近道を分けると河原へと下りる。まだ滝は見えてこない。河原が見えてからも滝が見えてこないのが大滝だったなとようやく思い出す。渡渉しつつ河原を登ると谷が二手に分かれ、左の谷に大滝がある。不動三滝の中では一番水量が多く、流れも直線的ですっきりとした印象がある。それよりも少々気になったのが右の谷で、水流はないのだが、岩盤が露出した深い谷になっている。大滝の周りには大小の石が転がり、大水が出る度に流されてくるのだろうなと想像する。滝つぼの手前は風が吹き抜けるので沢水で体を洗ってしばし休憩を取る。

(尾根に上がるとこの道標がある)




(大滝)


(滝壺はこんな感じ)


(このように二つの谷が合流している かなり石が多い)


(大滝隣にある谷 切り立った崖になっている)

前回は近道を利用して不動ノ滝へ向かったが、今回は往路を戻る。道標の立つ所から尾根上を進む。空気が冷たい季節ならどうってことのない傾斜の道だが、この暑さではかなりきつい。杉林を出ると民家の敷地に出る。道標が立ち、大滝からの近道が合流してくる。この先木陰の無い道が続き、かなり暑い。敷地の中を進んで建物の前を通るが、9年前と同じくどうにも落ち着かない。山歩きでは私有地を通ることは結構あるが、人が管理する土地は住居侵入罪あるいは建造物侵入罪が成立する可能性があり、道標があるからと言っても気分の良いものでは無い。

(尾根道を行く)


(民家の敷地へ入っていく 右へ下りると大滝に出る)

民家裏にはやや広い道が通っており、高畑集落から上がってきているのだろう。道標に従って進むとまたも道標があり、山道が延びる。斜面をトラバースしながら登り、尾根に出る。すると馬頭観音の石碑が立ち、その先は石垣が積まれた広場がある。地形図と照らし合わせるとおそらく民家の敷地だったのだろう。ヨウシュヤマゴボウらしき植物が繁茂しており、藪っぽいので石垣の脇の道を進む。すると杉林の中に道標が立ち、小道が分かれる。不動ノ滝方面を上がると先ほどの民家の敷地の反対側に出る。奥武蔵登山詳細図(吉備人出版)によるとここが小峠と呼ばれる所だ。不動ノ滝への道が北へと延びている。高畑集落から高山不動への道は古い地形図にも描かれており、間野集落から高山不動を目指す道とともに古道の一つと言ってよい。

(民家裏に出た)


(尾根に出るとこの馬頭観音の石碑がある)


(小峠 正面は民家の敷地跡 右に登るのが不動ノ滝への道)

不動ノ滝へは西向きの斜面をトラバースしながら登っていく。ここもよく整備された道で危険な所は無い。ただ標高差は60mとそれなりに登らされるので精神的にきつい。正面に大きな岩壁が見えてくれば不動ノ滝に着く。道標が立ち、山道と書かれているが、これは不動ノ滝の上へ出るだけで特に意味は無い。滝へは一旦下って高畑入を渡り、右岸を登り返す。二本の杉ノ木の間を通ると滝の真下に出られる。以前訪れた時はチョロチョロと細い流れだったが、夏場ということもあってそれなりに水量がある。切り立った岩壁のため滝壺は無い。滝として見るとやや物足りないが、谷を覆う岩壁は一見の価値がある。

(不動ノ滝が見えてきた かなり大きな岩壁だ)


(二本の杉の間を通る)


(滝の下に出る 意外と水量が多い)


(岩壁には隙間がある)


(崖地なので滝壺はない)


(正面から)


(下から滝を眺める)

往路を戻り、不動三滝最後の白滝へ向かう。白滝川へと下りてくると高山不動への道と白滝への道が分かれる。この辺りの光景には見覚えがある。白滝川の右岸に明瞭な道が延びる。ここも整備はされているが、大滝・不動ノ滝への道に比べるとやや荒れた感じがある。杉林の中の道を登りきると白滝に着く。大滝に比べれば水量は少なめだが、谷を風が吹き抜けて涼しい。数段に分かれた滝が白い筋を作っており、滝の名の由来となっているのではないかと感じさせる。

(白滝・大峠分岐 大峠方面の道は簡易舗装されている)


(白滝への道 上がるにつれて荒れた感じになる)






(白滝)

高山不動から日照水を経て黒山三滝
白滝から下り、白滝川を渡って九十九折の山道を登る。杉林の中の急斜面ではあるものの、道はよく整備されていて歩きやすい。15分ほど登ると分岐に出る。奥武蔵登山詳細図によるとここが大峠だ。大峠の名に相応しく、よく整備された広い道が交差する広場となっている。道標には以前は高山不動と不動三滝しか示していなかったのだが、現在は尾根伝いに延びる奥武蔵グリーンライン・関八州見晴台への近道も示されている。



(九十九折を登る)


(大峠 右は間野からの道 左はグリーンライン 高山不動へは左奥へ進んでいく)


(虫が集っていた)

高山不動への道は南向きの緩斜面をトラバースしながら延びている。古い地形図には尾根道だけが描かれており、高山不動への道は特に描かれていない。不動堂と高山の集落は描かれているので、おそらく細かい道までは描かれなかったのだろう。トラバース道も古道らしくよく整備され、祠などがある。しばらく進むと明瞭な踏み跡が分かれている。高山不動の本堂へ直接出られる道で、以前は無かった道標が現在は完備されている。本堂への近道に入ると本堂の脇にあるトイレと大きな東屋の前に出る。高山不動に到着だ。東屋で休憩を取っているとトレラン姿のカップル、続いてグループがやって来る。以前高山不動の辺りでトレランの大会が行われていたので、トレラン愛好家にとって馴染みのあるルートなのかもしれない。高山不動には普段本堂に人気が無いのだが、今日は扉が開け放たれ、中からは太鼓の音と読経が聞こえてくる。無住の寺かと思っていたが、どうやらそうではなかったようだ。

(祠がある 古道の趣)


(本堂へ直接上がれる道が分かれる 以前は道標が無かった記憶がある)


(高山不動本堂)

本堂から関八州見晴台へは斜面を直線的に登っていく。気温が上がってきたせいか、体力の消耗が激しい。尾根に上がると大峠からの道が合わさる。そこから東に少し上がれば不動茶屋の建物があった地点だが、綺麗に更地となっていた。かつて不動茶屋のテラスからは大きな展望が広がっていて、それは現在も変わっていない。ただ今日は気温が高く、遠望は全く利かない。これでは関八州見晴台に行ったところで何も見えないだろう。思い切って関八州見晴台は省略し、グリーンラインを使って直接花立松ノ峠へ向かうことにする。

(不動茶屋跡)

古い地形図を見ると高山不動から黒山三滝へは不動茶屋跡から現在のグリーンラインを通って七曲り峠に至り、峠からは四寸道を使って黒山へと下りていたらしい。現在でも七曲り峠から四寸道へ至ることはできるが、グリーンラインは花立松ノ峠まで延びており、黒山三滝へは三滝川(越辺川の上流部分)の谷に付けられた高山新道を下るのが一番早い。不動茶屋跡の東にあるもう一つの茶屋らしき建物を回り込むと舗装された観光林道であるグリーンラインは杉林に入る。花立松ノ峠まで延々と杉林が続くので、真夏に歩くには良いルートだ。途中褶曲した岩盤が露出しており、こうした地層を眺めて歩くのもなかなか楽しい。茶屋の建物から花立松ノ峠までの間には一軒の廃屋があるが、かつてはこの辺りから七曲り峠への道が続いていたようだ。

(不動茶屋跡近くにある西武鉄道が寄贈した石灯篭)


(茶屋らしき建物裏にも関八州見晴台への入口がある)


(関八州見晴台の巻き道であるグリーンラインは終始杉林の中)




(褶曲した岩盤が露出している)


(この廃屋の辺りからかつては七曲り峠への道が延びていたようだ)

廃屋を過ぎると左手に見える尾根が低くなっていき、花立松ノ峠に出る。舗装された猿岩林道が分かれており、これを使っても黒山三滝へ下ることができる。猿岩林道を下り始めると下からロードレーサーに乗ったグループがやって来る。グリーンライン上といい、自転車乗りが結構多い。昨年の台風の影響でクルマの乗り入れが規制されている所も多いため、余計に都合が良いのだろう。北東に開けた谷からは展望が広がるが、今日の空気では遠望は無理だ。峠からさほど下ることもない内に高山新道の入口に着く。

(花立松ノ峠)


(猿岩林道からの展望)


(高山新道入口)

高山新道は三滝川の本流・支流に当たるいくつかの谷を横断しながら日照水へと下るルートで、上部は急斜面を九十九折に下っていく。花立松ノ峠にとっての峠道のような関係にあると言っていいだろう。道はよく整備されていて、草が被る所はほとんどない。ただ伐採地を除くと人の手があまり入っていない雑木林であるらしく、低い木のトンネルが断続的に続く。低木のトンネルを抜けると広い伐採地に出る。東側に展望が開けるが、もちろん遠望は利かない。むしろ直射日光を浴びて干物になりそうなほどに暑い。雑木林から杉林へと変わる辺りで三滝川沿いの道となる。左岸に付けられた道はだいぶ傾斜が緩くなり、足への負担は軽い。ここで若いカップルとすれ違う。登山中に出会った普通の登山者は彼らだけだった。



(下り始めは低木のトンネルを抜けていく)


(伐採地 超~暑い)


(伐採地からの眺め)


(三滝川沿いを下る この辺りから傾斜が緩む)

下るにつれて谷が狭まり、両岸に高い岩壁がそそり立つ。木の橋が架けられ、右岸に渡る辺りに水を引くためのホースが岩壁に流れる沢に取り付けられている。黒山の集落で利用されているのだろうか。少し下ると舗装道路が見えてくる。花立松ノ峠へと延びる猿岩林道だ。この辺りに日照水があるはずだがどれだろう。すると林道からすぐ入った所に先ほど見かけたホースの先が掛けられ、水が勢いよく流れ出していた。これが日照水か。てっきり自然の湧水かと思っていた。でもありがたく腕や顔を洗い、水筒に水を汲ませてもらう。35℃を超えようかという気温に比べるとキンキンに冷えた水で、手が痛くなってしまうほどだ。

(右岸にそそり立つ岩壁が見える 谷が狭まってきた)


(層が明瞭な岩)


(木の橋で右岸へ渡る 左上に見えるホースで日照水の水場まで引いている)


(日照水近くの大岩)


(日照水 夏場はかなり冷たく感じる)

三滝川沿いに付けられた舗装路は終始杉林の中にあって涼しい。順調に下っていくと上流へ折り返すように川へ下る道がある。これは右岸に渡って山の中に入る道だ。地理院地図には載っているが、登山詳細図には道形が描かれていない。更に舗装路を下ると山側に道標が立つ。猿岩林道をそのまま下ると火の見下バス停へ出られるという。つまり四寸道に繋がる横吹峠の入口にも通じているのだ。このまま下ってしまいたい気持ちにも駆られたが、今日は滝見が目的だ。黒山三滝を示す方向を見ると細い山道が下っている。

(ここから黒山三滝へ下る)

最初は歩きやすい緩やかな道だが、川を見下ろす辺りから滑りやすい急坂となる。疲れた身体にはここが一番怖かった。一旦川のほとりに出るが、ここは男滝の真上らしい。観光客がいるのか子供たちの笑い声も聞こえてくる。川から離れて滑りやすい岩場の道を下っていくと売店の真下に出る。約6年ぶりの黒山三滝だ。売店の石段を上っていくと下に女滝、上に男滝がある。まずは女滝へ。男滝の下流に当たり、男滝の滝壺から流れ出す水流は白い筋となっている。やや小さな滝だが優美で、広い滝壺を形成している。子供たちが滝壺の水に浸かって歓声を上げている。今度は男滝。こちらは落差が大きく、また三滝川の水が直接落ちてくるので、流れが速く豪快だ。やはり滝壺があり、親子連れが遊んでいるが、川底はかなり滑りやすい。

(黒山三滝の売店)


(女滝)




(男滝)

売店下まで戻り、最後の天狗滝へ向かう。傘杉峠への道は台風の影響で通行止めとなっており、山道を使って天狗滝へは出られない。舗装路を下っていくと藤原入との合流地点に橋が架けられ、天狗滝への道が延びる。深い谷間から沢が流れ出し、入口付近の岩壁だけでも美しい。鎖の手すりが付けられた遊歩道を進み、終点にあるのが天狗滝だ。一番落差の大きな滝だが、落石の危険があり、近くに寄ることはできない。道は更に傘杉峠・役行者像方面に通ずるが、今日はここで終了。

(藤原入との合流地点 ここから天狗滝へと向かう)


(藤原入沿いの道)




(天狗滝)

黒山バス停へと向かう道には釣り堀や食堂が健在で、観光客は多い。黒山三滝と合わせて夏場訪れるには良い観光地なのだろう。問題は黒山鉱泉が廃業したことで冬場の来客が少ないことだろうか。その黒山鉱泉の建物には現在カフェが営業している。ここも結構賑わっているようで何よりだ。黒山バス停に着くと日陰が無く、直射日光に炙られる。次のバスまでは…あと20分少々か。バス停の周辺には店が開いておらず、このままでは本当に暑さで死んでしまう。そこで越辺川に架けられた廃業した東上閣へ渡る橋の上に座り込む。手入れがされなくなった桜の木がちょうど木陰をつくり、何とか暑さを凌ぐことができた。もう8月も終わり。でもまだまだ暑い日は続きそうである。

(三滝川沿いにある食堂)


(かつての黒山鉱泉館はお洒落なカフェとなっていた)

DATA:
西吾野駅6:37→6:54高畑川→7:18大滝入口→7:31大滝7:37→8:00小峠→8:08不動ノ滝8:14→8:29白滝8:31→8:52大峠→8:58高山不動9:05→9:30花立松ノ峠→9:59日照水→10:25黒山三滝10:41→10:55黒山バス停(川越観光バス)越生駅

地形図 正丸峠 越生

トイレ 高山不動

交通機関 
西武池袋・秩父線 小手指~西吾野 377円 飯能~小手指 242円
川越観光バス 黒山~越生駅 359円
JR八高線 越生~東飯能 242円

関連記事:
 平成23年11月12日 鎌北湖と滝巡り
 平成23年11月26日 前編 高山不動の滝巡りと八徳・風影の山上集落を訪ねて
 平成26年11月3日 前編 高山不動から黒山三滝

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