野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

今日の一曲 Integral by Pet Shop Boys

2014年01月03日 | 今日の一曲
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
さて今年は今日の一曲から始めてみたいと思います。


http://www.youtube.com/watch?v=5wXMnjLU63I Album ver.


http://www.youtube.com/watch?v=4kx05kU5gZg PV Colour ver.


http://www.youtube.com/watch?v=VckCoZkCEu8 PV モノクロver.


http://www.youtube.com/watch?v=QQcvDkmnx_A Live

2006年に発表されたPSBのアルバム"Fundamental"の最後に収録されたこの"Integral"は、単純に言ってしまえば管理社会を批判した曲である。
ただ恐ろしいのはこれが現実のイギリス社会を批判していたということだ。
2005年ロンドンの地下鉄で爆弾テロ事件が起きた。50人以上が亡くなり、イギリス社会はテロの摘発に躍起になった。
元々IRAのテロ事件を経験していたイギリスでは日本とは比べ物にならないほどの監視カメラが設置されていたのだが、
それだけでは足りないということで、国民の個人情報を管理する国民IDカード法が2006年に成立した。
このカードには指紋や虹彩などの生体認証情報を登録して、テロなどの犯罪捜査に利用しようとしていた。
けれど一般市民から指紋や虹彩を採取すること自体の人権侵害もさることながら、
イギリス市民の間にある移民や他宗教(多くはイスラム教)に対する潜在的な恐怖や無理解を丸出しにしているという点も問題だった。
結局2013年に同法は廃止されたが、テロや国家の安全を名目に市民を管理しようという試みは各国で続けられていると言っていいだろう。

日本では昨年特定秘密保護法が大きな話題となったが、マイナンバー制度に関する法案が成立したことを忘れるべきではないだろう。
メリットだけでなく、デメリットもそれなりに報道はされたが、実際のメリットは今のままなら行政の効率化くらいしかない。
それ以上のことがやりたかったら、国民IDカード法のようにカードに様々な情報を登録する必要がある。
そして成立したマイナンバー制度にはそれが出来る可能性が十分に残されている。
まあ結局運用次第という点では特定秘密保護法と同じなのだが、怖いのは日本人の民度の低さにある。
アメリカにも社会保障番号制度や愛国者法などがあるが、他方で移民を受け入れる関係上宗教や民族の違いに自覚的である。
また基本的には行政を信用せず、「自分の身は自分で守る」ということが市民の共通認識となっている。

それに比べると日本人は恐ろしいほどにお人よしである。確かに日本の公務員は優秀だけれども、人間だから間違いを犯す。
でも日本人はお上は間違いを犯さないと思い込むか、あるいは間違いと分かっていても我慢してしまう。
我慢は日本人の美徳とか、理不尽さに耐えるのも大事とかよく言われるけれども、奴隷根性そのものだよなとボクは思う。
アメリカのやり方が常に正しいとは思わないけれども、理不尽なことは最終的には解決されなければならないと考えるのは良いことだ。
少なくとも日本人のように時が過ぎれば解決するという考えよりはずっと健全である。
スポーツにおける暴力問題なんてのはその最たるものでしょ?
加えて日本人は他者も自分と同じような考えを持っていると思いがちである
(この同質性はイスラム原理主義者や北朝鮮の高官からしたらさぞ羨ましがるに違いないとボクは思っているのだが)。
だから自分とは異なる宗教や民族を持つ者に対する蔑視や恐怖は潜在的に強い。表に出しているアメリカ人やイギリス人とは違う。
意識の深い所にあるから他者が迫害を受けても驚くほどに鈍感なのだ。

"Integral"を訳すと名詞では「完全」、形容詞では「不可欠な」という意味である。
歌詞の中ではどちらの意味にも使われていて、システムに逆らう者は排除され("You're not integral")、そしてテロリストと看做される("You're a threat")。
ボクがこの曲を面白いと思うのは権力者の視点で作られているということだ。
通常は市民が権力者に虐げられるというような物語になりそうなところだ。だがそれだと如何にも市民が被害者という感じがして正直ダサい。
そうではなく、権力者の視点から描くことで、ボクら一般市民も自由を抑圧する側にいるんだよ、と自覚させるのだ。
何よりボクが関心するのは曲がノリノリで格好良いこと。この曲と歌詞の組み合わせが如何にも全体主義的だと感じさせる。
しかも"Integral"はある意味でとても日本的だ。異常なまでの綺麗好き。同調圧力。そしてオリンピック。
最高だ。最高に悪いね。でもそうやって2013年は終わって、こうして2014年は始まったわけだ。


上のPVはアルバム"Disco 4"のプロモーションとして作られたもので、市民がエキストラとして参加している。
国民IDカード法は過去のものとなったけれども、QRコードで市民を管理しようって発想は今でも健在だ。
曲も"Fundamental"のヴァージョンとは違って、よりノリノリで尖がってもいる。正直こっちのほうが好きだ。


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