SPコミックス第3巻、第6話。1969年12月作品
スイス銀行へ預金残高確認に赴いたゴルゴ。そこで待っていたのは〝虫〟による抹殺計画だった。一歩手前で危機を脱出したゴルゴは自らの全てを賭けて虫と対決する。
600万ドルの仕掛け
ゴルゴのスイス銀行預金600万ドルとはいかほどのお金か。
1969年当時の為替は1ドル360円時代だから日本円で21億6千万円。日本で起きた三億円事件が1968年12月。当時3億円あれば一生、銀行利子で楽に生きていけると言われた。なにしろ10年定期なら年8%~10%の利子がついた時代だ。
サラリーマンの給料だって現在の10分の1程度。逆に言うと10倍ほどのお金の価値があったということか。その時代の20億円だから600万ドルは桁外れの大金といえよう。
この600万ドルは殺しの報酬だ。1件あたり5~10万ドルの報酬を得ていたゴルゴ。10万ドルとしても60回分。ひと月に2回仕事をするとして3年ないし4年ほどの稼ぎを溜めこんだものだ。もちろん資産は銀行預金だけではなくいろんな方面に投資しているだろうが虫1匹相手に莫大な費用をつぎこんだものだ。
この金で超大作映画なみに第2次世界大戦の舞台をつくりあげたのだ。
虫の正体
虫の正体を暴くためナチスの鉤十字(ハーケンクロイツ)を甦らせたゴルゴ。虫はその術中にはまり正体を現す。
虫はイスラエル諜報組織のかげの実力者
虫の正体を知る者は世界中で4人(米英仏ソのスパイ組織のボス)
その昔(戦時中)は世紀の美貌とまでうたわれた
はたして虫の正体は――その名はマザーヨシュア
マザーヨシュアの謎
(1)ヨシュアの名前の謎
ヨシュアとは旧約聖書によるとユダヤ人の指導者で、モーゼ(映画「十戒」の主人公)の後継者。約束の地カナンを制圧した人物。また現代においてもヨシュアはユダヤ系の男性の名前だという。だからヨーロッパにおいてはヨシュアといえばユダヤ人の男性なのだ。よって〝マザーヨシュア〟と名のる修道女なんてのは非常に奇妙な話。
(2)ゴルゴに裏の仕事を依頼した謎
これは前作『ベイルートVIA』で述べるべきだったかも知れないが、修道女に変身している姿を晒してまでゴルゴに会って仕事の依頼をする必要があったのか。彼女の実体はイスラエルのスパイだが、表の顔はスイスの小さな村マットブルンネンの教会に住む修道女だ。表と裏の両方の顔を知っているのは世界に4人だけ。すなわち米英仏ソのスパイの親玉たち。表の顔で裏稼業の話ができきるのは彼ら4人だけにしているから秘密が守られてきた。なのになぜ、マザーはゴルゴに直接会って裏稼業の仕事の依頼をしたのか。これが謎だ。ゴルゴへの依頼はCIAのフーバーかMI6のヒュームに任せておけばいい。なにも自分が身分を明かしてまでゴルゴに会うことはないんだ。
ゴルゴは依頼者のことは徹底的に調査する。スイスの修道女のマザー(指導者)がアラブゲリラ抹殺の依頼とは普通ではない。そしてゴルゴと会ったマザーはアラブとイスラエルの闘争の根深さをとうとうと語る。私はその筋のものです、と言っているようなものだ。要するにここで正体を現しているのだ。なぜ?
(3)ゴルゴ暗殺指令の謎
マザーヨシュアがゴルゴ暗殺をスイス銀行の頭取に命令したのも謎だ。殺しの指令はゴルゴがベイルートへ立つ前の日に出している、ということはゴルゴが仕事に出かける前だ。ゴルゴにゲリラ抹殺の仕事を頼んでおきながら、同時にスイス銀行にゴルゴ殺しの罠を仕掛ける。自分の正体を知るゴルゴを消すためか? それなら最初からゴルゴに会わなかったらいいだけの話なのだ。
(4)丘の上の教会にひとり住む謎
教会に修道女がひとりで住んでることも奇妙だ。普通は男性の司祭か神父かが教会の主で修道女が主ではない。あるいはここは教会でなく修道院か。マザーなら修道院の院長だ。それなら何人かのシスターがいないとおかしい。
(5)マザーがゴルゴ生存を知らなかった謎
暗殺指示を出せば、その結果を見届けるのは常道。失敗すれば恐るべき敵となるゴルゴが相手だ。ゴルゴの怖さはよくよく承知のマザーなのに全くわれ関せずはなぜだ。スイス銀行資本を動かせるほどの影の実力者だ。ゴルゴ暗殺の成否を知るぐらい朝飯前だろう。ゴルゴ暗殺が失敗なら当然、次の策を講じるはず。むざむざと600万ドルの罠、25年前の戦時中にタイムスリップなんてものに引っ掛かるはずもない。世界中にその情報網がおよぶスパイ中のスパイ、虫(インセクト)がゴルゴの生存や600万ドルの買い物をキャッチできないわけがない。
600万ドルの罠の後始末
突然、まわりが25年前の戦時中にタイムスリップ。連合軍の兵隊が教会に来てドイツ軍が攻めて来たので一緒に逃げろと言う。村に行けばみんな避難したあと。そしてマザーも難民と共にダグラスDC4型機に乗って上空へ。そこえドイツ空軍のメッサーシュミットが襲いかかる。ダダダダ・・・。たまらずマザーは「こちらインセクト(虫)!」とドイツ空軍に無線で呼びかける。

600万ドルで仕掛けたゴルゴの罠にはまったマザー。しかしこの後始末は容易ではない。
正体を現したマザーは当然、即刻抹殺。しかし雇った搭乗員たちにはどう説明するのか。それに難民に扮するエキストラたち。彼らの目前でマザーを殺すわけにもいくまい。
いやそもそも集めた俳優やエキストラにはマザーのことをどう説明していたのかも興味あり。教会に乗り込んだ連合軍の兵隊にはどう説明していたのか。マザーを騙すために。これこれの演技をしてくれ、となっていたはず。マザーを騙すため、マザーの部屋のラジオやカレンダーまで仕掛けをしていたが、そんなことをいつのまにやったのか。
まあフィクションの世界ではあるが、このシナリオ通りことがうまくいくのは無理があると思うなあ。その力は世界におよぶと思われる虫(インセクト)にしてはゴルゴに対する策がなさすぎる。これじゃ普通のおばあさんだ。
そもそも600万ドルという今まで命を懸けて稼いだ全財産(とまではいかないだろうが)をつぎ込んでまで対決する相手ではない。アラブゲリラ抹殺の依頼をうけた時点でマザーが諜報組織の影の人物であることは明白だ。戦時中に世紀の美貌とまでうたわれたスパイならその後の足跡ぐらいゴルゴの情報網なら掴んでいるはずだ。〝虫=マザー〟は600万ドルを懸けるほどの値打ちがあるとはホント思えない。あまりに虫が弱すぎる。
スイス銀行へ預金残高確認に赴いたゴルゴ。そこで待っていたのは〝虫〟による抹殺計画だった。一歩手前で危機を脱出したゴルゴは自らの全てを賭けて虫と対決する。
600万ドルの仕掛け
ゴルゴのスイス銀行預金600万ドルとはいかほどのお金か。
1969年当時の為替は1ドル360円時代だから日本円で21億6千万円。日本で起きた三億円事件が1968年12月。当時3億円あれば一生、銀行利子で楽に生きていけると言われた。なにしろ10年定期なら年8%~10%の利子がついた時代だ。
サラリーマンの給料だって現在の10分の1程度。逆に言うと10倍ほどのお金の価値があったということか。その時代の20億円だから600万ドルは桁外れの大金といえよう。
この600万ドルは殺しの報酬だ。1件あたり5~10万ドルの報酬を得ていたゴルゴ。10万ドルとしても60回分。ひと月に2回仕事をするとして3年ないし4年ほどの稼ぎを溜めこんだものだ。もちろん資産は銀行預金だけではなくいろんな方面に投資しているだろうが虫1匹相手に莫大な費用をつぎこんだものだ。
この金で超大作映画なみに第2次世界大戦の舞台をつくりあげたのだ。
虫の正体
虫の正体を暴くためナチスの鉤十字(ハーケンクロイツ)を甦らせたゴルゴ。虫はその術中にはまり正体を現す。
虫はイスラエル諜報組織のかげの実力者
虫の正体を知る者は世界中で4人(米英仏ソのスパイ組織のボス)
その昔(戦時中)は世紀の美貌とまでうたわれた
はたして虫の正体は――その名はマザーヨシュア
マザーヨシュアの謎
(1)ヨシュアの名前の謎
ヨシュアとは旧約聖書によるとユダヤ人の指導者で、モーゼ(映画「十戒」の主人公)の後継者。約束の地カナンを制圧した人物。また現代においてもヨシュアはユダヤ系の男性の名前だという。だからヨーロッパにおいてはヨシュアといえばユダヤ人の男性なのだ。よって〝マザーヨシュア〟と名のる修道女なんてのは非常に奇妙な話。
(2)ゴルゴに裏の仕事を依頼した謎
これは前作『ベイルートVIA』で述べるべきだったかも知れないが、修道女に変身している姿を晒してまでゴルゴに会って仕事の依頼をする必要があったのか。彼女の実体はイスラエルのスパイだが、表の顔はスイスの小さな村マットブルンネンの教会に住む修道女だ。表と裏の両方の顔を知っているのは世界に4人だけ。すなわち米英仏ソのスパイの親玉たち。表の顔で裏稼業の話ができきるのは彼ら4人だけにしているから秘密が守られてきた。なのになぜ、マザーはゴルゴに直接会って裏稼業の仕事の依頼をしたのか。これが謎だ。ゴルゴへの依頼はCIAのフーバーかMI6のヒュームに任せておけばいい。なにも自分が身分を明かしてまでゴルゴに会うことはないんだ。
ゴルゴは依頼者のことは徹底的に調査する。スイスの修道女のマザー(指導者)がアラブゲリラ抹殺の依頼とは普通ではない。そしてゴルゴと会ったマザーはアラブとイスラエルの闘争の根深さをとうとうと語る。私はその筋のものです、と言っているようなものだ。要するにここで正体を現しているのだ。なぜ?
(3)ゴルゴ暗殺指令の謎
マザーヨシュアがゴルゴ暗殺をスイス銀行の頭取に命令したのも謎だ。殺しの指令はゴルゴがベイルートへ立つ前の日に出している、ということはゴルゴが仕事に出かける前だ。ゴルゴにゲリラ抹殺の仕事を頼んでおきながら、同時にスイス銀行にゴルゴ殺しの罠を仕掛ける。自分の正体を知るゴルゴを消すためか? それなら最初からゴルゴに会わなかったらいいだけの話なのだ。
(4)丘の上の教会にひとり住む謎
教会に修道女がひとりで住んでることも奇妙だ。普通は男性の司祭か神父かが教会の主で修道女が主ではない。あるいはここは教会でなく修道院か。マザーなら修道院の院長だ。それなら何人かのシスターがいないとおかしい。
(5)マザーがゴルゴ生存を知らなかった謎
暗殺指示を出せば、その結果を見届けるのは常道。失敗すれば恐るべき敵となるゴルゴが相手だ。ゴルゴの怖さはよくよく承知のマザーなのに全くわれ関せずはなぜだ。スイス銀行資本を動かせるほどの影の実力者だ。ゴルゴ暗殺の成否を知るぐらい朝飯前だろう。ゴルゴ暗殺が失敗なら当然、次の策を講じるはず。むざむざと600万ドルの罠、25年前の戦時中にタイムスリップなんてものに引っ掛かるはずもない。世界中にその情報網がおよぶスパイ中のスパイ、虫(インセクト)がゴルゴの生存や600万ドルの買い物をキャッチできないわけがない。
600万ドルの罠の後始末
突然、まわりが25年前の戦時中にタイムスリップ。連合軍の兵隊が教会に来てドイツ軍が攻めて来たので一緒に逃げろと言う。村に行けばみんな避難したあと。そしてマザーも難民と共にダグラスDC4型機に乗って上空へ。そこえドイツ空軍のメッサーシュミットが襲いかかる。ダダダダ・・・。たまらずマザーは「こちらインセクト(虫)!」とドイツ空軍に無線で呼びかける。

600万ドルで仕掛けたゴルゴの罠にはまったマザー。しかしこの後始末は容易ではない。
正体を現したマザーは当然、即刻抹殺。しかし雇った搭乗員たちにはどう説明するのか。それに難民に扮するエキストラたち。彼らの目前でマザーを殺すわけにもいくまい。
いやそもそも集めた俳優やエキストラにはマザーのことをどう説明していたのかも興味あり。教会に乗り込んだ連合軍の兵隊にはどう説明していたのか。マザーを騙すために。これこれの演技をしてくれ、となっていたはず。マザーを騙すため、マザーの部屋のラジオやカレンダーまで仕掛けをしていたが、そんなことをいつのまにやったのか。
まあフィクションの世界ではあるが、このシナリオ通りことがうまくいくのは無理があると思うなあ。その力は世界におよぶと思われる虫(インセクト)にしてはゴルゴに対する策がなさすぎる。これじゃ普通のおばあさんだ。
そもそも600万ドルという今まで命を懸けて稼いだ全財産(とまではいかないだろうが)をつぎ込んでまで対決する相手ではない。アラブゲリラ抹殺の依頼をうけた時点でマザーが諜報組織の影の人物であることは明白だ。戦時中に世紀の美貌とまでうたわれたスパイならその後の足跡ぐらいゴルゴの情報網なら掴んでいるはずだ。〝虫=マザー〟は600万ドルを懸けるほどの値打ちがあるとはホント思えない。あまりに虫が弱すぎる。