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ゴルゴ13の謎 Mystery of G

ちょっと辻褄が合いません、という程度の謎の考察だよ。

ファイヤー・アフター

2014年02月14日 | 1986年~1990年
SPコミックス第67巻、第4話。1986年6月作品。

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ストーリー
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【1】高層ビル大火災
ある日の朝、ブラジルはサンパウロの高層ビルから火災が発生。悪条件が重なって瞬時にビル全体が猛火に包まれた。オフィスの始業時と出火が重なりビル内にいた者全員が死亡する大惨事となった。焼死者144名、飛び降り死者51名、不明3名。

【2】殺人課の出番
ビル火災の焼死体の中から射殺された男女二つの遺体が発見された。男の方は40階にある貿易会社サザーン・イーグルの社長。そのためサンパウロ市警殺人課の主任、セルジオ・武藤の出番となった。

【3】出火時間
武藤たちの捜査が始まる。被害者は二人とも額の中央を拳銃で撃たれいた。プロの仕業だ。殺されたマックス・ベルマン社長は凄腕の武器密輸業者で当局からマークされており、女の遺体はベルグマンの秘書と判明した。この日、ベルグマンは特別な商談客があり、朝一番に出勤した。オフィスで待ち構えていた商談客が社長と秘書を射殺した。そしてその直後、偶然、火災が発生した。犯人はどうなった? 時を同じくして生存者が一人見つかる。不明扱いになっていた若い女性でタイピスト。

【4】奇跡の生還
武藤と部下のジェスは、生存者が収容されている病院に赴く。女性の名はカーメン・モラレス。火傷は意外と軽い。彼女はビルの外壁を上から降りて来た一人の男性に助けられたと話す。その男は日系人のようで、ピストルを持っていたという。

【5】その男の名は!
武藤は業火の中をモラレスを連れて脱出した男が犯人で、男の名はデューク・東郷またの名をゴルゴ13と確信する。しかし、わからないことがある。あの殺人機械がなぜ一人の女を助ける気になったのか!?

【6】不審人物浮上!!
首都ブラジリアへゴルゴの資料を集めに行った武藤がサンパウロに帰ってきた。成果はあまり無いようだ。武藤はジェスと落ち合い不審人物が見つかったホテルに向かう。

【7】全弾撃ち込め!!
不審者は顔を包帯で巻いて隠し背格好もゴルゴとほぼ同じ。間違いない。見張り役のルウと共にホテルに乗り込んだ武藤ら3人は男の部屋へ。女とじゃれていた男は拳銃に手を伸ばすが武藤にありったけの弾をぶち込まれ即死。包帯を解いた顔はゴルゴではなかった。

【8】警察の世間体
署長に呼ばれた武藤は〝やり過ぎるな〟と注意されるが逆に闘争心が燃え上がる。

【9】ミス・モラレスの反応
ゴルゴの写真を持って入院中のモラレスを再度訪れた武藤に、彼女は「よく覚えていない」と言ったが、写真を見た時の反応は救出者がゴルゴに間違いないと思わせるものだった。自信を深めた武藤はゴルゴがミス・モラレスと同程度の火傷を負い、その治療のため、サンパウロに潜んでいると推測する。そんな折、ゴルゴの所在判明の連絡が入る。奴は今夕5時、ゴム園跡の空き地からチャーター機で飛び立つという。急ぎ車を飛ばす武藤とジェス。

【10】武藤の挑発
先回りして見張る武藤らの前にゴルゴが現れた。殺人容疑で逮捕する、と言って拳銃を構える武藤。そして貴様、ゴキブリみたいにコソコソ逃げ出すつもりかとゴルゴを挑発する。しかしゴルゴはポケットから両手を出して静かに答えた「この包帯でぐるぐる巻きの手で拳銃を使わせようとしてもムダだよ」ゴルゴを乗せたチャーター機が雲間に消えていくのを呆然と見送る武藤とジェス。武藤の最後の問い「なぜ女を助けた?」には答えなかったゴルゴ
【END】

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ハイライト
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猛火の中を逃げ遅れた若い女性を連れて脱出するゴルゴ。カーテンで作ったロープでビルの壁を降り、途中からはカーテンを体に巻いて水をかぶり、襲い掛かる炎と煙の中を走る。そして奇跡の脱出口〝ダストシュート〟に体を投げ込んだ。

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登場人物
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■セルジオ・武藤
サンパウロ市警殺人課警部。ゴルゴを殺人犯として追跡。物証が無くても挑発して射殺する奥の手を使おうとする。


■ミス・モラレス
高層ビル大火災のただ一人の生存者。救出者が犯罪者と知り、警察の問いに曖昧な返答をする。


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???
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■燃えたマクアナビルは絵を見ると出火は5階か6階。それより上の人は助からなかったかもしれないが、1階や2階の人はすぐに逃げ出しただろう。生存者ゼロはちょっと合点がいかない。

■ゴルゴにしては荒っぽい仕事だ。朝っぱらから40階にある貿易会社のオフィスで客を装い社長と秘書の頭に銃弾を撃ち込むとは、これいかに。秘書は当然、現場にいたか、顔を見られたから殺したのだろうが、ヘタすると、他の社員やビル内の人間に目撃される危険性が高い。時間も仕事が始まる9時前だからエレベータや通路にいる人間も多いだろう。うまい具合に大火災が発生して殺人どころの騒ぎでなくなったし、ゴルゴを目撃した人間がいても死んでしまった。ラッキーだったかも。

■顔や体に火傷を負ったゴルゴがどこに忍んでいたか、どうやって治療したのか。はたまた、どうやって所在を突き止めたかの描写も何もなし。安直な感じ。

■武藤警部の行動ばかりが目立つし、あまりにしつこい。ゴルゴに対してなぜそんなに執念を燃やすのか分からない。殺されたのが武器密輸〝死の商人〟とその情婦の秘書。今まで誰も逮捕できなかったプロを俺が仕留めてやる。こんな気負いからかな。

ナイトメア

2014年01月28日 | 1986年~1990年
SPコミックス第70巻、第1話。1986年5月作品。

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俺がクレオに合ったのは南米のパリと呼ばれるアルゼンチンのブエノスアイレスだった。賑やかな夜の街を歩いてると向こうから声を掛けてきた。いわゆる夜の女だが俺のことを「アントニオ」と呼びかけた。何?アントニオ? 俺が探している男の名だよそれは。



そばにいたポンビキの兄さんが何やら言い訳をしていたが俺はこのクレオに決めた。早速、安ホテルに潜り込んで楽しんだ。いい運動のあと一服しながらポンビキが話していたことを思い出していた。クレオの死んだ恋人はアルゼンチン空軍の大尉だって・・・・間違いなさそうだ。この女を連れて行こう。

いい気持ちでいるところを物好きなお客が来たようだ。クレオのひーひー声に騙され二人の男は部屋に飛び込むやいなやベッドに向かって撃ちまくり。バカ、こっちだよ。ドアの陰に隠れていた俺は奴らをこの世からかたずけた。

こいつらは何者か。まあ、俺の仕事を邪魔するやつには違いない。今度の俺の仕事? 英国に情報を流していたアルゼンチン空軍大尉で、フォークランド紛争で名誉の戦死をとげたアントニオという奴の始末だ。死んだ奴の始末だって? いやいや死んだというのは英国の策略だ。実際はこの国のどこかに隠れていて英国の助けを待っている訳だ。イギリス艦船に体当たりして死んだアントニオは替え玉で、本人は敵のスパイで生きていることがわかり頭にきたアルゼンチン軍部が俺に仕事をくれた訳だ。そんなことでアントニオの顔をよく知っているクレオは今度の仕事の必需品なんだ。

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■クレオ
ブエノスアイレスで娼婦をしているが元は良家の娘。恋人のアントニオが死んだので頭がおかしくなっている。ゴルゴを恋人と間違え言い寄る。その後、ゴルゴと行動を共にする。

■ブリガン
英国情報部MI6の部長。ゴルゴが狙う標的〝A〟の護衛とゴルゴ抹殺をケネスに指令。ゆくゆくは〝A〟を英国に亡命させようと画策する。

■ケネス
英国情報部MI6局員主任。ブエノスアイレス⇒メンドーサ⇒ベニートと〝A〟の隠れ家を探索しながらゴルゴ抹殺に動く。

■テッドとアラン
英国情報部MI6局員。ケネスの部下。ブエノスアイレスでゴルゴの寝こみを襲うが逆に反撃を喰い落命。

■イザベラ
メンドーサの売春宿〝白い館〟の女将。訪れたケネスにベニート村のロペスに会え、と伝える。また、ゴルゴがここにロペスの居所を尋ねに来たことも話す。

■ディック
英国情報部MI6局員主任。途中から部下2人と共ににケネスの応援に加わる。

■エドとケリー
メンドーサでゴルゴとクレオの泊り宿を襲うがゴルゴは不在。クレオを責めるが帰ってきたゴルゴにやられる。

■アントニオ
アルゼンチン空軍大尉。フォークランド紛争でイギリス駆逐艦に体当たりして戦死したとされているが、実は英国のスパイ。

■ロペス
ベニート村に住む男。?




悪魔の島影

2014年01月06日 | 1986年~1990年
SPコミックス第81巻、第2話。1988年5月作品。

俺がこのロベン島に来たのはこれが2度目だ。南アフリカ共和国のヨハネスバーグでアンチ・アパルトヘイトデモに参加し、取締り中の白人警官をぶん殴った。即、ここに送られた。ここはケープタウンの沖合10キロにある監獄島で黒人解放運動の指導者がたくさんぶち込まれている。永い苦役に耐え、生きてこの島を出られる者は極僅かだ。

俺はひき受けた仕事をしに来ただけなので、終われば出ていく。

仕事の依頼者は南アフリカ共和国政府に反抗する黒人開放武力組織(PAC)だ。標的は組織の裏切り者ロニ・オバンコ。ロニは自分が狙われていることを知ってロベン島に逃げ込んだ。もちろん政府の後ろ盾があってのことで、この監獄島より安全なところはない。

なぜ、こんな仕事をひきうけたかって? この仕事は困難すぎて俺しかできないと頼まれたから。そうだな。難しい仕事ほど俺はやる気を起こす。それに依頼人のひとり、シーラという黒人女性が俺ごのみだったから? そうだな。〝ロベン島に女はいない。餞別と思って私の体をうけとって〟だと。俺は断るのも大人げないので、何も言わずに受け取った。


こういう餞別もありか

俺の収容先はCブロックだった。ここでは受刑者はAからDまでの4つのグループに分けられ、それぞれ獄棟も4つに分かれている。Aが一番待遇がいい。俺はロニがAブロックにいることを探り出した。

俺は大人しく服役生活を過ごしていた。ただし、看守長のクルーガーには目をつけられている。俺の体の無数の傷跡や、俺が物事に動揺しないことを不審に思っているのだ。まあ、わざと関心を持たせているのだが。

俺はフィリピン人の漁船員ロドリゲスという名前で捕まってやった。パスポートも偽物だ。調べればわかるだろう。俺の正体を吐かすためクルーガーがそのうち行動を起こすはずだ。

いよいよ、実行の夜が来た。その日の昼に、受刑者が野外作業中に暴れて看守に殺される事件があった。そばにいた俺は何事もなかったように作業を続けたが、それをクルーガーは奇異な目で見つめていた。そろそろ潮時だ。

俺は体の中に隠し持っていた発熱薬を飲んだ。一時的に原因不明の高熱を発生する。普通の人間ならそのままあの世いきにもなりかねない劇薬だ。効果はてきめん。俺はすぐに医務室へ移りベッドに寝かされた。医者とクルーガーが見守る中で、俺はうわ言のようにロニ・オバコンの名前を唸ってやった。俺の正体を明かしたいクルーガーは早速、ロニを呼ぶ。所長も駆けつけてきて役者は揃った。俺の異常な高熱に医者は伝染病の懸念を現す。本土の隔離病棟に連絡が取られ、救急ヘリが手配された。しめしめ。

刑務所のような閉鎖社会で一番の緊急事態といえば脱走もあるだろうが、もっと危機的なのは伝染病だろう。俺はそこを利用した。まあ、一昔前なら、患者はすぐに始末されて闇に葬られただろうが、法事国家だ。規則に乗っ取り対処いただいたわけだ。

ロニは俺のことを知る由もなくクルーガーの取り調べも、ヘリが到着しておあずけを喰らうことに。

俺は担架で運ばれ、ヘリに乗る寸前、看守の拳銃を捕りあげ正体を現した。クルーガーを血祭りにあげ、俺はロニをヘリに乗せると飛び立った。救急ヘリのパイロットは味方であるPACの一員だ。

俺はヘリのドアを開けロニに降りろと言った。ロニは悲鳴をあげたが、シートに居座ったままなので仕方なく拳銃の引き金を引いた。ロニは額に穴をあけて闇夜の中を落ちて行った。


インディアン・サマー

2013年12月23日 | 1986年~1990年
SPコミックス第85巻、第3話。1989年5月作品。

ネバダ、ユタの州境。ルート80、別名リンカーンハイウエイ沿いのモーテルに男が立ち寄った。秋から冬にかけてのある暖かい好天の日。男は夜通しクルマを走らせて来たのか、軽い食事のあとしばらく部屋を借りて休んだ。

ずっと向こうの山まで見通せる気持ちのいい朝。というか陽が照りだしポカポカしてくる時間帯だ。朝の9時ごろだろうか。こういう日のことをインディアン・サマーって言うんだ。日本なら〝小春日和〟。

あまり繁盛していないモーテルをやりくりしてるのは目の不自由な母親マーサと若く明るい娘シンディの二人。家族はもう一人、カリフォルニアの農園へ出稼ぎにいっている兄のハンクがいる。季節労働も終わり、今日帰ってくるとゆうべリノからシンディに電話があった。

「やあ、おはよう。マーサ」
「保安官。今日はまた早いんだね・・・・」
「リノのホテルで二人組の強盗があり、カジノの売上を奪ったうえにガードマンを殺して逃亡さ。それで夜っぴいて走り回っていたんだよ」

保安官が去ったあと、強盗を働いた息子が仲間を連れて帰って来る。そして息子が強盗犯と感づいた母親マーサは拳銃を持ち出し連れの男を「大事な息子を悪の道に引き入れた憎い男は撃ち殺す」と言って引き金を引く。だが銃弾は連れの男をかばった息子にあたる。現場にかけつけた娘シンディは撃たれて死んだのは連れの男で、ハンクは出て行った、とウソを言う。

逃げた男は首謀者のところに金を持っていくが、そこで殺される。金を独り占めにした男はなんと保安官。しかし、保安官の行くてを塞いだのはモーテルにいた男・・・・ゴルゴ。


仕事を終えてルート80を帰るゴルゴ

登場人物
マーサ ・・・・ モーテルを経営する盲目の母さん
シンディ ・・・・ マーサの娘
ハンク ・・・・ カジノ強盗。マーサの息子
テッド ・・・・ ハンクの仲間
保安官 ・・・・ カジノ強盗の黒幕
デカーロ ・・・・ カジノを縄張りにするマフィアのボス
ゴルゴ ・・・・ デカーロの依頼で強盗団を始末

この話にはベースとなった小説があるように思う。それはコーネル・ウールリッチの短編で『セントルイス・ブルース』。原題は The Humming-bird comes home (ハミングバード帰る)。ポケット・ディテクティブというパルプ雑誌の1937年3月号に掲載された作品だ。

これはアダムス母さんと息子のベンの、そしてベンがどんなふうにして遠くへいってしまったかの物語なのである。

大きな郊外住宅に住む盲目のアダムス母さんと話相手のメアリ(娘ではないようだ)がラジオに耳を傾ける。500マイルも離れた大都会キャピトル・シティから流れてくるラジオの声。

銀行ギャングが警備員と出納係を撃ち殺して逃亡。ギャングの一人は鼻歌をうたいながら冷血無比な強盗殺人を行った、という。鼻歌のメロディは<セントルイス・ブルース>

ラジオを聴いたアダムス母さんは「そんなもの消しておしまい」とメアリに厳しい調子でいう。

キャピトル・シティというと、5年前に家を出た息子のベンから便りがあった町だ。

そしてその夜、ベンが帰ってきた。2人の仲間を連れて。一人は銀行から逃げるとき警官に撃たれ傷を負っており、邪魔となったのか、彼らが2階の部屋に入ったあと仲間に始末される。

母さんはベンが強盗犯と気づいており、夜中に男たちの部屋に忍び込み彼らの拳銃を抜き取りドアに外から鍵をかけて閉じ込める。そしてメアリを警察に走らせる。メアリが駆るクルマの爆音で強盗たちは目をさまし、ドアを壊して階下に降りようとすると階段の下で母さんが銃を構えて待ち受けていた。

このあと、母さんを撃とうとする仲間と息子がもみあいとなり、銃声がして1人が階段の下に転げ落ちる。

母さんが撃ったのではない。仲間内のもみあいでどちらかが撃たれたのだ。残った男の足音が階段を降りてくる。それが誰なのか母さんはたずねなかった。たずねる必要がなかったからだ。低いハミングが聞こえてきた。

どうだろう。盲目の母さん。強盗をやらかして帰ってきた息子。その息子と仲間を拳銃で撃とうとする母さん。良く似た内容だ。

劇画の方は母さんが簡単に銃を撃つ。そして息子を死なせてしまう。いくら死んだのは仲間の男だ、と娘が言っても、母親なら分かるはずだ。死んだのが息子だと。盲目だからこそ顔に触れるだけで息子と分かる。ウールリッチはそう言っている。

母と息子の物語としてはウールリッチのほうがいい。